【その他の写真:イメージ】
ダバオがこれほど多くの電波を惹きつける最大の理由は、ミンダナオ島における圧倒的な経済・商業の中心地であることだ。人口規模が大きく、購買意欲の高い市民が集まるダバオは、企業にとって格好の広告市場となる。マニラを拠点とする大手メディアはこの巨大市場を見逃さず、次々とリレー局を開設してきた。さらにラジオの社会的地位の高さも見逃せない。1950年代の普及以来、ラジオは人々の生活に深く根付いてきた。特に「マサ」と呼ばれる大衆向け番組フォーマットは絶大な人気を誇る。DJの軽妙でコミカルなトークと、OPMと呼ばれるフィリピンポップスを組み合わせたもので、街の食堂やタクシーのBGMとして愛され続けている。
言語の壁も局乱立を後押ししている。ダバオを含む南部ではビサヤ語が日常会話の主流である。
これほど多くの局が混信せずクリアな音声を届けられる背景には、独自の送信インフラがある。ダバオのFM局の多くは市内マティナ地区の高台「シュライン・ヒルズ」に送信アンテナを集中させている。そして小規模局を除く主要局のほぼすべてが出力10キロワットという強力な電波を放つ。アンテナ性能を加味した実効輻射電力に換算すると20キロワットから32キロワットに達する。日本のコミュニティFMが原則20ワット以下、県域FM局でも1キロワットから10キロワット程度であることと比べれば、その強大さが際立つ。ダバオ周辺は山や丘陵地帯が多く電波が遮られやすいため、高台から大出力で放射することで半径50キロから70キロ圏内の周辺地域までクリアな音声を届けているのだ。
ダバオの空を飛び交う13の主要局の個性を周波数順に見ていこう。まず87.5メガヘルツの「ダバオ・シティ・ディザスター・ラジオ」は市が直接運営する行政・防災専門局で、近年出力を10キロワットに増強し市民の安全を守る。続く87.9メガヘルツの「レプリカFM1ダバオ」は政府系で最新ポップスを届ける。88.3メガヘルツの「エナジーFMダバオ」は地元ヒット曲を連発する大衆向けエンタメ局だ。
圧倒的なリスナー層を掴むのが、コメディトークとポップスを流す90.7メガヘルツの「ラヴ・ラジオダバオ」だ。92.3メガヘルツの「ワイルドFM」はダンスミュージック主体で若者を魅了する。報道に強いのが93.1メガヘルツの「ブリガダ・ニュースFMダバオ」で、鋭いローカルジャーナリズムを展開する。95.5メガヘルツの「レトロダバオ」は70年代から90年代の洋楽クラシック専門。96.3メガヘルツの「スターFMダバオ」はポップスの合間に短いニュースを頻繁に挟む。若者に支持される99.5メガヘルツの「モンスターBT99.5ダバオ」は最新洋楽ヒットを連発。さらに102.7メガヘルツの「マンゴー・ラジオ」はキリスト教系放送局であり、105.1メガヘルツの「イージー・ロックダバオ」はソフトロックでオフィスやドライバーを癒やしている。
こうした13局の足元で地域に根を下ろしているのがコミュニティFM局だ。例えば105.9メガヘルツの「アンカー・ラジオ」のように2キロワット程度の出力で運用される局や、さらに小出力で特定コミュニティを対象にする局が点在する。大手商業放送が拾いきれない超ローカルなニュースや農業専門情報、特定宗教の講話を放送し、市民生活をきめ細かく支えている。
日本のラジオ環境に慣れた身からすると、ダイヤルを回すたびに異なる個性を持ったトークや音楽が飛び込むダバオのラジオ風景は驚きに満ちている。各局は市民の笑顔と安全を守るために知恵を絞り、今日も熱い電波を送り続けている。ダバオのFMラジオの多さは、この街に生きる人々のエネルギーと多様性の象徴である。
【編集:Eula】








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