宇宙服の下はPRADA製。56年ぶりに月に降り立つ宇宙飛行士のインナーがおしゃれイズム
アクシオム・スペースとPRADA、次世代月面宇宙服のインナーを発表/image credit:<a href="https://www.axiomspace.com/release/axiom-space-prada-unveil-inner-layer-of-next-gen-lunar-spacesuit" target="_blank" rel="noopener">axiomspace</a>

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 宇宙服のインナーがPRADA製になる。

 イタリアの高級ファッションブランド「PRADA」と宇宙開発企業アクシオム・スペース(Axiom Space)が共同開発した宇宙服用インナーウェアが、2026年6月7日に正式発表された。

 1972年のアポロ17号以来、およそ56年ぶりとなる有人月面探査計画「アルテミス計画」で実際に着用されるもので、宇宙飛行士の肌に直接触れるウェアとして機能する。

 見た目はランウェイに出しても違和感がないほどスタイリッシュで、内側には極限環境に対応できるよう精密な技術が凝縮されている。

PRADAが選ばれた理由

 NASAは2022年、アメリカ・テキサス州ヒューストンを拠点とする民間宇宙開発企業アクシオム・スペースに、アルテミス計画用の月面歩行宇宙服の開発を正式に委託した。

 翌2023年、アクシオム・スペースはPRADA(プラダ)との協業を発表した。

 1913年創業のPRADAにとって、宇宙服の分野への参入は初めてのことだ。ただ今回PRADAが選ばれた理由は、ブランドの知名度ではなかった。

 アクシオム・スペースが評価したのは、PRADAの先進素材への深い知識、機能性を追求した精密な編み技術、縫製設計の正確さ、そして革新的なデザインを形にする開発力だ。

 高級ファッションの世界で長年培われた素材と構造への理解が、宇宙という極限環境の要求と一致した形だ。

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 アクシオム・スペースCEOのジョナサン・サーテイン博士は「宇宙探査の未来はいかなる単独の組織によっても実現できるものではない」と述べ、こう説明する。

航空宇宙工学と高級素材の製造技術という異なる分野の最高水準を融合させることで、どちらの企業も単独では生み出せなかった宇宙服のインナーウェアが完成しました

 2024年には宇宙服本体がすでに公開されており、今回発表されたインナーウェアはその内側に着用する最後のピースにあたる。

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体温を管理する冷却・換気システムの構造

 今回公開されたインナーウェアの正式名称は「冷却下着(LCVG:Liquid Cooling and Ventilation Garment)」という。

 宇宙服全体のシステム「AxEMU(アクシオム船外活動ユニット)」の最も内側の層として、肌に直接触れる状態で着用される。

 月面を移動する宇宙飛行士の身体は、大量の熱を発生させる。その熱を放置してると、ごく普通の作業でさえ継続が難しくなる。

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 LCVG内部には、冷水を循環させるチューブが全身に張り巡らされており、体の熱を吸収し、宇宙服の背面に搭載された生命維持装置へと送り、最終的に宇宙空間へ排出する。

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 別系統のチューブは換気を担い、顔まわりに新鮮な酸素を届けながら呼気中の二酸化炭素を取り除き続ける。排出された二酸化炭素は、専用の除去装置で処理され、再び酸素として循環される。

 冷却システムには、主回路が故障した際に備え、独立したバックアップ回路も組み込まれている。すぐに助けを呼べない月面では、こうした二重構造の安全設計が宇宙飛行士の命を守る。

 宇宙船開発担当上級副社長のラッセル・ラルストン氏によると、LCVGは、船外活動中の宇宙飛行士の熱環境の管理と呼吸のサポートを絶えず続けるが、PRADAとの協業により、その性能がアクシオム単独では達成できなかったレベルに引き上げられたという。

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PRADAが宇宙服に持ち込んだ美意識

 PRADAは、機能が最優先される宇宙服開発の現場でも、見た目を犠牲にしなかった。

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 LCVGは高度な3Dモデリング技術で設計されており、冷却と換気の性能を保ちながら、快適性と動きやすさを最大限に高めている。

 体にフィットした洗練されたシルエットと、機能チューブをデザインに取り込んだ外観は、ランウェイに登場しても不思議ではない完成度だ。

 素材の選定にもPRADAらしさが光る。最長8時間に及ぶ月面歩行を想定し、長時間の着用に耐える特殊繊維が採用されている。

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 デザイン・パターンメイキング(型紙製作)・先進素材という3つの専門領域におけるPRADAの知見と航空宇宙工学を掛け合わせることで、耐久性と柔軟性を同時に実現した。

 PRADA・グループの最高マーケティング責任者、ロレンツォ・ベルテッリ氏は「アクシオム・スペースのパイオニア精神とPRADAのノウハウが融合した成果を誇りに思う」と述べ、人類の月面帰還に向け、ともに限界に挑み続けることへの意欲を示した。

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2027年に飛行テスト、2028年に月面へ

 このインナーウェアを含むアクシオムの宇宙服は、2027年のアルテミス3ミッションでの初飛行テストを受ける予定だ。

 このミッションでは月面着陸は行わず、低軌道上での各種ドッキング操作の検証が中心となる。

 宇宙服のテストは国際宇宙ステーションでの実施も選択肢に入っており、NASAとアクシオムが現在も調整を続けている。

 2028年のアルテミス4ミッションでは、宇宙飛行士がこの宇宙服を着て、実際に月面に降り立つ計画だ。目的地は月の南極域で、極端な温度差と険しい地形が広がる過酷な環境が待ち受ける。

 人類が月面を歩くのは、有人探査としては1972年のアポロ17号以来となる。そのとき宇宙飛行士の肌を守るのは、PRADAのインナーだ。

References: NASA's Prada-designed lunar spacesuit debuts inner garment to protect future moonwalkers[https://community.designtaxi.com/topic/30397-nasas-prada-designed-lunar-spacesuit-debuts-inner-garment-to-protect-future-moonwalkers/] / Axiom Space, Prada Unveil Inner Layer of Next-Gen Lunar Spacesuit[https://www.axiomspace.com/release/axiom-space-prada-unveil-inner-layer-of-next-gen-lunar-spacesuit]

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