中国当局は、受験会場におけるウェアラブル情報端末の悪用への懸念から、セキュリティ対策の強化を進めている。
AI技術を搭載したスマートグラスは急速に進化しており、カメラや検索などの機能が注目される一方で、カンニングに使われるという新たな問題も浮上している。
当局は国内最大規模の全国大学統一入試「高考」に向けた注意喚起を発表。試験会場のセキュリティ強化などの対策を実施している。
だが、最先端のテクノロジーを悪用するケースは後を絶たず、教育現場とAI技術のいたちごっこは激しさを増しているようだ。
期末試験会場での不正行為が複数発覚
2026年7月1日、中国・広東省広州市にある華南農業大学の期末試験で、AI搭載のスマートグラスを使った不正行為が発覚した。
この日、午前中に行われた期末試験の会場で、試験監督官が1人の男子学生の前に立ち、2~3分様子を見た後こう言った。
君のメガネに問題があるようです。メガネを渡し、答案用紙を提出して、ここから退出してください
当時、試験会場にいた学生によると、これは開始から約10分後の出来事で、男子学生は黒縁のメガネをかけていたという。
監督官は、メガネのレンズ部分に緑色の表示が見えたことを不審に思ったとされ、学生がAI搭載スマートグラスを着用していた疑いが浮上した。
最近の試験期間中、本学では、受験者がスマートグラスなどの電子機器を試験会場へ持ち込み、不正行為に利用しようとした複数の事案を発見し、処分を行いました。
関係する学生については、「華南農業大学本科学生試験違反処理弁法」に基づき厳正に処分しています。
同大学は、この不正行為発覚を受けて、「試験規律の徹底と試験室へのスマートデバイス持ち込み禁止に関する注意喚起」を発表した。
その主な内容は以下の通りである。
- スマート機器の試験会場への持ち込みは厳禁
- 入室前に自主的な確認と検査を受けること
- 違反行為は厳正に処分する
- 誠実に受験し、互いに監督すること
この注意喚起によると、今回の試験の最中に、スマートグラスなどを使った同様の不正行為が複数発生していたらしい。
背景には中国でのAIスマートグラスの急速な普及が
今回、カンニングに使われたのは、中国企業Rokid(楽奇)[https://jp.rokid.com/]社が販売するAIスマートグラスだとされている。
スマートグラスを一言で説明すると、パソコンやスマホを開かなくても、翻訳や検索、ナビなどを利用できるメガネ型のウェアラブル端末だと言えるだろう。
見た目は一般的な黒縁メガネとあまり変わらないが、フレーム内部にカメラやマイク、通信機能を搭載しているのが特徴だ。
機種によってはレンズの内側に字情報を表示することも可能で、撮影した画像をAIに送信し、回答や解説を表示させる機能も備えているとのこと。
不正行為をした学生たちは、このメガネで撮影した問題をAIに送信し、その回答をレンズ内に表示させることでカンニングを行っていたようだ。
こうした機能が問題視されるようになった背景には、中国でのAIスマートグラスの急速な普及がある。
2025年の国内出荷台数は約250万台に達したとされ、その広がりとともに今回のような不正行為に使われるケースも増えている。
2026年3月には、中国国内でAIスマートグラスのレンタルサービスが広がった結果、一部の学生が試験で悪用している実態が報じられた。
一見すると普通のメガネとほとんど見分けがつかず、スマートフォンのように手に持って操作する必要もない。
そこで中国の教育現場では、スマートグラスが試験場などでの新たな不正行為につながるとして、警戒されるようになっている。
中国教育部も注意喚起を発表
こうした状況を受け、中国教育部(日本の文科省にあたる)は2026年6月2日、全国大学統一入試「高考」を前に、受験生に向けた注意喚起を行った。
高考とは、全国一斉に行われる中国の大学進学者向け統一試験で、2026年には約1290万人が受験したそうだ。
その成績は大学や専攻の選択に大きく影響する。
教育部はこの注意喚起の中で、携帯電話やスマートウォッチ、スマートグラスなど、情報を送受信できる機器を試験会場へ持ち込んだ場合、実際の使用の有無に関係なく不正行為として扱うと警告した。
さらに各地の試験会場では、入り口の保安ゲートの性能アップも進められた。特にスマートグラスなどのウェアラブル機器を発見する機能が強化されたという。
また、広東省や上海市ではメガネをかけている受験生に、個別検査への協力を要請。内モンゴル自治区では、日常的にスマートグラスを使用している受験生に対し、通常の度付き眼鏡に変更するよう求めたそうだ。
今回の華南農業大学の事案では、学生たちの行為がカンニングと認定された場合、その科目は0点となり、大学の記録に残る懲戒処分を受ける。悪質な場合は、停学や退学など重い処分となることもあるとのこと。
さらに「高考」での処分はもっと重い。スマートグラスを試験会場へ持ち込んだだけでも不正行為と見なされ、試験成績が無効となる。
悪質なケースでは大学進学の機会を失うだけでなく、法律に基づく処罰の対象となることもあるという。
教育部は受験生たちに、次のように警告している。
出来心でリスクを冒さないように。たった一度の不正行為が、あなたの未来を台無しにすることになります
さて、Rokid社は日本にも進出していて、2026年7月10日に日本でも正式にAIスマートグラスを発売した。
お値段は税込109,890円。公式ショップのほかAmazonでも購入可能となっている。
Amazon : Rokid スマートグラス AI
References: “你的眼镜有问题,交卷走吧!”[https://news.qq.com/rain/a/20260708A058XJ00?id=20260708A058XJ00&path=a&app=news&suid=&redirect_pc=1]











