アメリカで、次世代の核兵器輸送トレーラーをロケットで加速し、巨大な壁に正面から激突させるという度肝を抜く衝突テストが行われた。
サンディア国立研究所が実施した過酷な実験の目的は、万が一の大事故が起きても、核物質が確実に保護されることを実証することだ。
模擬核兵器を積んだトレーラーは凄まじい衝撃に耐え、設定された試験目標をすべて達成した。
得られたデータは、一般市民に危険が及ばない設計であることを確認し、量産に向けた最終評価を進めるために使われる。
機密に包まれたアメリカ第3世代の核兵器輸送車
核兵器の製造には高度な技術が必要だが、完成した核兵器や核物質を安全に運ぶことも、失敗の許されない任務である。
サンディア国立研究所は、アメリカ・エネルギー省の国家核安全保障局のもとで、核兵器の安全性や国家安全保障に関わる技術を研究・開発している国立研究機関である。
1970年代初めには、核兵器を安全に運び、国家安全保障に関わる貨物への侵入や不正な持ち出しを防ぐため、初代の専用トレーラー「セーフ・セキュア・トランスポート」を開発した。
初代車両は1990年代に、第2世代の「セーフガーズ・トランスポーター」へと引き継がれた。
機密情報公開請求で明らかになった資料によると、第2世代の車両は18輪の大型トラックで、貨物を不正に持ち出せないよう複数の防御機能を備えている。
トレーラー全体が炎に包まれても、内部の貨物を損傷から守れるよう設計されているという。
現在開発中の「モバイル・ガーディアン・トランスポーター」は、その後継となる第3世代の核兵器輸送車である。
核兵器を扱う車両だけに機密扱いとなっており、詳しい防御機能は公表されていないが、量産を始めるには、重大事故に遭っても危険な貨物を守れることを確認しなければならない。
強力なロケット加速で巨大な壁に正面衝突
モバイル・ガーディアン・トランスポーターの最初の衝突テストは2020年に行われ、試作車が側面から強い衝撃を受けた場合の性能が調べられた。
2025年秋に行われた2回目のテストでは、正面衝突という、さらに過酷な状況が再現された。
今回が量産前に行われる最後の大規模な衝突テストとなる。
試験に使われたのは、実際の輸送車と同じ大きさに作られた2台目の試作トレーラーである。
内部には本物の核兵器ではなく、核兵器を模した試験用の機材が積み込まれた。
試作トレーラーを加速させたのは、強力なロケットモーターである。
ロケットを取り付けた押し台車でトレーラーを試験軌道上に送り出し、その先に設置された巨大な壁へ正面から激突させたのだ。
模擬核兵器には、ロスアラモス国立研究所とローレンス・リバモア国立研究所などが用意した機材が使われた。
種類の異なる核兵器を輸送する状況を想定し、トレーラー本体だけでなく、貨物を固定する装置や輸送容器が衝撃に耐えられるかも調べられた。
壁に激突するまでにかかった時間は、わずか数秒だった。
しかし、一度しかできない試験を成功させるため、準備には約1年半もの歳月が費やされた。
膨大な計測装置と36台のカメラで衝撃を記録
模擬核兵器を積んだ輸送車をロケットで壁に激突させる実験は、簡単にやり直せるものではない。失敗すれば、同じ条件のデータを二度と取れない可能性もある。
トレーラーには、衝突時の加速度やひずみ、加わった力、温度などを測るセンサーが数多く取り付けられ、約500項目に及ぶデータが記録された。
さらに、激突の瞬間をさまざまな角度から捉えるため、約36台のカメラが用意された。
一部のセンサーが故障しても重要なデータを失わないよう、予備の計測装置も準備された。
テストディレクターを務めたジェームズ・ダイクス氏によると、100項目のデータと数台のカメラを使うだけでも複雑な試験になるという。
約500項目のデータを同時に集めた今回は、サンディア国立研究所のロケットスレッド試験場で行われたものとしては、過去最大規模のデータ収集となった。
凄まじい衝撃に耐え、すべての試験目標を達成
ロケットの力で加速した試作トレーラーは巨大な壁に正面から激突したが、凄まじい衝撃に耐え抜き、設定されていた試験目標をすべて達成した。
ただし、衝突テストが成功しただけで、輸送車の安全評価がすべて終わったわけではない。
研究チームは現在、試験で得られたデータを衝突前の予測と照らし合わせ、トレーラーや内部の貨物がどのような影響を受けたのかを詳しく分析している。
衝突テスト責任者のジェイソン・バーガー氏は、収集したデータを基に、現実の道路で起こり得るさまざまな事故をコンピューター上で再現するシミュレーションを作成すると説明している。
完成したシミュレーションは、トレーラーの強度だけでなく、輸送中の核兵器や核物質が事故の衝撃から守られ、一般市民に危険が及ばないかを評価するために使われる。
ほんの数秒で終わった衝突テストから得られた膨大なデータが、量産前の最終的な設計判断と、将来公道を走る核兵器輸送車の安全性を支えることになる。
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References: Sandia conducts next-level test for secure transportation vehicle – News Releases[https://newsreleases.sandia.gov/secure-transportation/]











