白黒の模様を回すと存在しない色が見える「ベンハムのコマ」は、約200年前から知られるこの錯視だが、人間だけでなくAIにも色が見えることが判明した。
日本の基礎生物学研究所などの研究チームが、過去の映像から未来を予測するよう学習させたAIにこのコマを見せたところ、人間と同じ淡い色を知覚したのだ。
錯視は単に目の錯覚ではなく、過去の経験から次に来るものを脳が予測することで見える可能性があるかもしれない。
この研究成果は学術誌『Scientific Reports[https://www.nature.com/articles/s41598-026-57953-w]』(2026年6月16日付)に掲載された。
白黒なのに色が見える「ベンハムのコマ」
白黒で描かれた模様を回転させると、そこにはないはずの淡い色が見えることがある。この現象は「主観色[https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%BB%E8%A6%B3%E8%89%B2]」と呼ばれる錯視だ。
代表例として知られるのが、19世紀末にイギリスのチャールズ・ベンハムが玩具として広めた「ベンハムのコマ[https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%99%E3%83%B3%E3%83%8F%E3%83%A0%E3%81%AE%E7%8B%AC%E6%A5%BD]」である。白地に黒い弧を描いた円盤を回すと、弧の部分に色が見えることがある。
実際の円盤には、もちろん黒と白しか使われていない。
色がどのように生まれるのかは約200年にわたり研究されてきたが、仕組みは完全には解明されていない。
これまで、主観色には網膜の反応が関わると考えられてきた。
一方で、色の見え方には個人差があり、脳が受け取った視覚情報を処理する過程も関係すると考えられている。
同が予測AIにベンハムのコマを学習させる
基礎生物学研究所、総合研究大学院大学、ソニーコンピュータサイエンス研究所京都研究室の研究チームは、脳の予測する働きと主観色の関係を調べるため、動画予測AI「PredNet」を使った。
PredNetは、過去の映像をもとに「次にどのような画像が現れるか」を予測する人工ニューラルネットワークだ。研究チームはまず、カメラを持った人が自然や街中を歩く一人称視点の動画をAIに学習させた。
学習を終えたAIに、これまで見せたことのない白黒のベンハムのコマの映像を入力し、AIが次の場面として出力する予測画像を調べた。
AIが予測した白黒のコマに淡い色が現れる
静止したコマの画像を見せた場合、AIの予測画像に色は現れなかった。
ところが、コマが回転する映像を入力すると、AIが出力した予測画像の弧の部分に淡い色が現れた。
入力映像は白黒で、色の情報は一切含まれていない。それでもAIは、動く白黒の模様から色のある画像を予測したのである。
さらに研究チームは、AIに学習させる動画の内容を変えて検証した。
赤、緑、青の四角形が動く単純な2次元アニメーションを学習させると、AIが出力する色は、学習映像の中で動いていた四角形の色に応じて変化した。
この結果は、AIが白黒のコマに無作為に色を加えたのではなく、学習によって得た「動き」と「色」の結び付きを利用して、次の映像を予測していたことを示している。
錯視には脳の「予測」も関わる可能性
今回の研究は、錯視は目の錯覚だけではない可能性を示した。
人間の脳は、目に入った映像を受け取るだけでなく、過去の経験をもとに、次にどのような光景が現れるかを絶えず予測していると考えられている。
AIで起きた現象は、動きと色の関係を学んだ予測の仕組みが、白黒の刺激から色を生み出す一因になり得ることを示すものだ。
ただし、この研究だけで、人間がベンハムのコマから色を見る仕組みをすべて説明できるわけではない。
研究チームは、脳の予測する働きが、網膜の働きを補う形で主観色に関わる可能性を示したとしている。
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References: 白黒のコマになぜ色が見えるのか ―200年の謎に、予測するAIが新たな手がかり―[https://www.nibb.ac.jp/press/2026/07/17.html] / AI Can See Optical Illusions[https://nautil.us/ai-can-see-optical-illusions-1284064]











