日本三大祭の祇園祭もいよいよ前祭のハイライト、宵山と山鉾巡行を迎えます。毎年祇園祭の時期は暑さが本格化しますが、今年も例外ではなく厳しい暑さとなる見込みです。
京都市内の熱中症の搬送者数のピークは7月17日、すなわち山鉾巡行の日と重なる年も多く、熱中症に厳重な警戒が必要です。
祇園祭と暑さ・熱中症との関係とは?そして、有効な暑さ対策は?京都出身京都在住の気象予報士が解説します。(気象予報士・前田智宏)
祇園祭 今年の宵山と山鉾巡行の暑さは
平年よりも11日も早く、7月8日に梅雨明けした近畿地方。それ以来、雨らしい雨は降っておらず、夕立に見舞われることの多い前祭期間中も、京都市内の降水の観測はありません。
16日(木)の宵山、17日(金)の山鉾巡行も天気の崩れはなく、夏空が広がる見込みです。雨の心配がある場合、山鉾の装飾品を濡らさないためにビニールカバーをかける対応がとられますが、今年はその必要もなさそうです。
京都市内の予想最高気温は16日(木)、17日(金)ともに36℃と猛暑日になる見込みです。金曜の午後は次第に雲が広がりますが、巡行の時間帯は日ざしも強いでしょう。
「祇園祭の前か後」京都の熱中症搬送者数は梅雨明けのタイミングで決まる?
実は、京都市内の熱中症搬送者数は、祇園祭と大きな関係があるとされています。
梅雨明けが祇園祭の前祭より前になるか後になるかによって、搬送者数のピークが変わってくるという研究データがあります。京都市の熱中症搬送者数の季節推移傾向は、多くの年で7月中旬と8月初めにピークがあり、7月のピークは祇園祭前後と対応しています。
ただ、梅雨明けが7月17日より後になった年は、このピークが出現しないということが明らかになり、梅雨明け直後の暑熱順化不足のタイミングで多くの観光客が祇園祭に訪れるという状況で、熱中症の患者が急増することを強く示唆しているといいます。
図の左の棒グラフを見ても、搬送者数が突出しているところがありますが、これがまさに7月17日、前祭の山鉾巡行の日なのです。今年は既に梅雨明けしていますから、熱中症に厳重な警戒が必要だと言えるでしょう。
左)7月のピークがより顕著であった5年(2011,2012,2017,2018,2023)と、右)8月のピークがより顕著であった5年(2012,2013,2015,2016,2019)の比較
提供:総合地球環境学研究所 京都気候変動適応センター
祇園祭の暑さ対策 その1 宵山は「人いきれ」に要注意
祇園祭には毎年多くの人出があり、去年(2025年)は16日の宵山に約24万人、17日の山鉾巡行には約14万人が訪れたとされます。
宵山とは、山鉾巡行を前にした前夜祭のようなもので、特に夕方からは四条通や烏丸通などの大通りが歩行者天国となり、屋台なども出されて賑わいます。夕方から夜の時間帯に楽しむ人が多いため、日中に比べると熱中症のリスクも低いように感じるかもしれませんが、夜9時でも気温が30℃を下回っていないような年もあり、油断はできません。さらに、非常に多くの人が集まることによる「人いきれ」にも注意が必要です。
「人いきれ」とは、大勢の人が集まることで、体温や汗の蒸発、呼気などの影響を受け、気温や湿度が上がって蒸されるような状態になることです。漢字で「人熱れ」とも書きます。むんむんとした熱気に包まれ、熱中症のリスクが高まります。
京都は細い小路も多く、山や鉾、露店が並ぶ場所では、すれ違うのが難しいくらいに人が密集することがしばしばあり、この人いきれが心配です。ひと筋ずれるだけで人出が大きく変わり、歩きやすさも違ってきます。体調がすぐれないと感じたら、すぐに人混みから離れるようにしてください。
祇園祭の暑さ対策 その2 山鉾巡行はいかに日ざしを防ぐか
山鉾巡行は午前9時にスタート。昼にかけて、強い日ざしの下、ぐんぐん気温が上がっていくタイミングです。正午にはもう、35℃前後にまで気温の上がることもあります。
京都は景観政策に伴う高さ制限で、高い建物が少ないため、日陰があまり多くありません。多くの人が観覧する御池通も、広い大通りのため、直射日光を遮るものが少なくなっています。
先頭の長刀鉾から最後尾の船鉾まで、23基すべての巡行を観覧しようと思うと、所要時間は2時間ほどです。それだけの長い時間を炎天下で過ごすとなると、暑さに十分慣れていない人はもちろん、暑さに強い人でも熱中症にかかってしまうおそれがあります。
いかに日ざしを防ぐかが重要なポイントとなりますが、日傘は後ろの人の視界を遮ってしまうので、使えないことがほとんどです。直射日光対策は、つばの広い帽子をかぶることをおすすめします。その中にガーゼでくるんだ保冷剤を入れて頭部を冷やすのも、一つの方法です。もちろん、こまめな水分補給も忘れないようにしてください。
お祭りに夢中になっていると、自分の体調の変化にも気づきにくくなってしまいます。その点にも留意して、京都の夏を存分に楽しんでください。
参考文献:「京都市の熱中症搬送者数変動は何で決まっているか ―気象要素と観光客数変動の連関分析―」安成哲三・何斯誠
文 前田智宏
毎日放送 気象予報士(南気象予報士事務所所属)
MBSテレビ「よんチャンTV」などに出演中。京都大学大学院 情報学研究科博士後期課程(防災研究所)にて、防災気象情報に関する研究にも取り組む。

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