仕事のできる人は、何を意識して日々の業務にあたっているか。営業コンサルタントの黒田昭彦さんは「仕事ができる人ほど見た目よりも中身を重視する。
未完成でも早めに見せたり、ひとこと確認するだけで、仕事のスピードは2倍以上にあがる」という――。
※本稿は、黒田昭彦『15分スケジュール すぐに成果を出す人の時間術』(明日香出版社)の一部を再編集したものです。
■完成してから見せるのはリスクが高すぎる
資料作成において、ドラフトの段階で確認を取ることは、時短、品質、一発OKの鍵ともいえる重要なステップとなります。
多くの人は、完璧な資料を作ってから上司や関係者に見せようとします。
しかし、この完成してからの確認は、修正の手戻りが大きくなる危険性をはらんでいます。
もし、方向性のズレなど根本的なフィードバックが入れば、せっかく作った資料の大部分は作り直すことになってしまいます。
これでは、時間もモチベーションも大きくロスしてしまいます。
つまり、完成してから見せるのではリスクが高過ぎるのです。
■仕事ができる人ほど見た目は気にしない
ドラフト段階の完成度2割で上司に確認しましょうというと、こんな下書きレベルで見せていいのかと思ってしまうかもしれません。
しかし、仕事ができる人ほど見た目よりも中身を重視するものです。中には、つまらない飾りを付けるくらいなら早く見せろという方もいらっしゃいます。
実際に私も取引先へ箇条書きレベルで提案をしたことがありますが、「内容がよく分かるので、これで大丈夫です」と言われて、今までのスライドにまとめる作業は何だったのだろうと思った経験があります。

このように無駄を省けば作業内容は半分以下になりますので、スピードは2倍以上に上がります。
早く持っていけば、依頼者が望むレベルを上げることも可能ですし、会議などで使うのでスライドにまとめてと言われれば、それから作成すれば済む話です。
■構成案でも手書きメモでも何でもいい
ドラフトは、ラフでもいいので早く見せるのがポイントになります。構成案だけでも、手書きのメモでも、箇条書きでも何でも構わないのです。
むしろ未完成の状態だからこそ、上司も気軽に意見を言いやすくなります。
この話の流れ、構成でOK、この視点を付け加えてといったフィードバックをもらえれば、完成に向けて迷わず進めることができます。
ドラフト段階で早めに上司に確認しておくと、「ちゃんと進めてくれているな」という印象を与えることができますので信頼にもつながります。
また、早い段階で意見をもらえば、チェックした人もその企画内容を一緒に作成した感覚になるので、後々の承認をもらう際にもスムーズにことが進みます。
完成してから提出する場合は「これで大丈夫だろうか」と多かれ少なかれ不安になるものですが、ドラフト段階なら「叩き台ですが」と言って精神的にも楽に出すことができます。
方向性や構成の確認を事前に終えておけば、最終版の資料は「合意済みの形」で提出することができます。
資料作成は、完成してからではなく完成度2割のドラフトの状態で上司に確認しましょう。
そうすれば、質の高い資料を最短で仕上げることが可能になります。

資料作成は、完成度2割で確認する!
■社内用の資料作成で時短のカギとなる声かけ
資料作成の見せるための時間は、ひとこと確認するだけで、かなり削減することが可能です。
私のビジネスの先生が若手の頃、サイバーエージェントにいた際、藤田社長(当時)に新規事業をプレゼンする資料を2日間かけて見やすく仕上げたところ、大変怒られたそうです。
その理由は、「社内用なら内容が分かれば問題がない。何で早く見せない、何で時間を大切にしない」だったそうです。
先生としては、社長へのプレゼンなので前職の経験からもビジュアルを丁寧に仕上げたのですが、藤田社長からは、社内用なのだから見栄えよりも中身、本質的なことが分かればいい。何より時間がもったいないという指摘だったそうです。
もちろん、取引先へのコンペでのプレゼンなど見せ方の工夫が必要な時はあります。
ただ、そのような装飾はあくまでTPOをわきまえた「演出」であり、すべての資料に必要なわけではありません。
■資料作成における2つのフェーズ
百貨店で買い物をすると、「ご自宅用ですか?」「熨斗や包装はされますか?」と聞かれます。
これは、誰のための、どんな用途の買い物かを知った上で最適な包装を選ぶための確認です。
資料作成も同じように、「これは社内用ですか?」「体裁は、どこまで整える必要がありますか?」と、まず確認することが時短のための第一歩です。
資料作成は、大きく分けて2つのフェーズがあります。
内容作成と分かりやすく見せるための装飾(見せ方の工夫)です。
ただ、必要性で言えば内容作成は必須事項ですが、装飾はケースバイケースです。
もしかすると、内容が明確で相手の意図に即していれば、装飾は不要かもしれません。
資料を丁寧に仕上げることは悪いことではありません。しかし、その丁寧さが「本当に求められていることかどうか」を確認することが、時短と成果を両立させるためには必要です。
そのためにも、まず「この資料は社内用ですか?」と確認してみましょう。そのひとことで、みなさんの資料作成の効率とスピードは格段に上がります。
資料作成は、整える必要があるかを確認する!
■労力の大きい0→1を極力なくす方法
資料作成で最も時間を要するのは、0→1を考える工程です。
まっさらな状態から構成を考え、情報を集め、説得力を持たせる内容を検討していく。
このクリエイティブな作業はやりがいのある仕事ですが、作業時間という点では最もコストがかかる部分です。
ところが、会社には知らないだけで、これから作ろうとしている資料と同じような企画書、見積書がたくさんあります。
それもそのはず、同じ会社で同じ商品、同じサービスを販売しているのですから、探せば似たようなものが出てくるのは、当たり前といえば当たり前です。

にもかかわらず、この資産が各社員の間で有効にシェアされて活用されている会社は意外に少ないのではないでしょうか。
専任の担当者がいて整理した形で共有されている場合ならいざ知らず、ほとんどの会社では各社員が個人商店化して同じような資料作成を行う、全体では非効率な状態が続いています。
逆にいうとそこに効率化、時短のチャンスがあります。
■聞いて回ると意外なほど協力者は出てくる
「今、こんな案件を担当しているのだけど、このような情報、事例、見積り、提案書を持っている人はいないですか?」と発信、聞いて回ると意外なほど出てきますし、みな協力してくれるものです。
コツは、普段から成功事例にアンテナを張っておくことです。
他の人がしていることに興味を持って、ランチを一緒にした時などに今、どんな仕事をしているか聞いてみると情報収集の幅は広がります。
また、自分が何をやっているのかを発信すると、「その仕事をしているなら、これが参考になるよ」とか、「このあいだ○○さんがA社に提案していたよ」とか、自然と情報が入って来るようになります。
情報が欲しい場合には、まず自分からその情報を発信すると、関連する情報が入って来やすくなるのです。
■成功事例を集めて、成果を最大化する
重複業務を整理して個人負担を減らし、集めた情報は共有フォルダを作成して、そこにあるものをフォーマット化するだけでも効率は格段にアップします。
もし、みなさん個人だけでなく、多くの人が使うようになれば、より多くの情報が入ってくることも期待できます。
資料作成の時短術としては、フォーマットの活用がよくあげられますが、事例を使えば0→1が助かるだけでなく、1→100になり一瞬で資料は完成します。
そして、事例を作成した人からよりリアルな経験値も収集できますので、資料の活用に関しても、より良いパフォーマンスが発揮できるはずです。

このように事例を活用しない手はありません。
さっそく今日から、ランチの時などには今、みなさんがしている仕事内容を発信して情報を集めてみましょう。
そして、周りの人がどんな仕事をしているのかに興味をもって、成功事例を集めていきましょう。
そうすれば、資料作成が短時間で済むだけでなく、成功事例の共有で仕事の成果も最大限に上がっていきます。
自分の仕事を発信する!
■一晩寝かせると視点が切り替わる
煮込み料理は一晩寝かせると美味しくなる。そう言われるように、カレーやシチューは、時間を置くことで味が深まりまろやかになります。
実はこの「寝かせる」という考え方は、資料作成にも効果的です。
なぜ、一晩寝かせると資料が良くなるのか。その答えは「視点の切り替え」にあります。
資料を作っている時、私たちの頭の中は作成者としての視点に強く偏ってしまいます。
論理構成、数字の整合性、見た目のバランスなど、すべて自分なりに完璧だと思っているので、すぐに提出したくなります。
しかし、その状態では提出先や取引先の視点、つまり「第三者の視点」が抜け落ちがちになります。

囲碁の世界には、岡目八目(おかめはちもく)という言葉があります。これは、当事者よりも、傍から見ている人の方が冷静に状況を判断できるという意味です。
資料作成もまさにこれと同じで、作っている最中はその資料の当事者ですから、論点のズレや言葉の違和感、読み手の疑問点に気づきにくくなってしまうのです。
■資料の質を一段上に引き上げるスケジュール
ところが、一晩寝かせると夜のうちに頭をリセットすることができます。
翌朝フレッシュな状態で資料を見返すと、ミスや改善点に気づくことができます。「この表現、まわりくどいな」「この図は必要だろうか?」「このページ、読み手には伝わりづらいかもしれない」そうした確認が、資料の質を一段上に引き上げてくれるのです。
実際、広告代理店やコンサルティング会社など、企画書を日常的に扱うプロの現場では、この「一晩寝かせる」は基本テクニックとして定着しています。
プロは提出の1~2日前には資料を仕上げてフレッシュな頭でチェックして修正ができるように、あらかじめスケジュールを組んでいるのです。それは、一晩寝かせることで、完成度を引き上げられることを経験的に知っているからです。
たった一日、数時間の差ですが、その時間があるかどうかで「OKな資料」と「やり直しの資料」の差が生まれます。短時間で質の高い仕事が求められるビジネスの場では、こうした見えない準備が成果に影響を及ぼします。
急ぎの仕事が多い時こそ、あえて余白の時間を作る。一晩寝かせて、翌朝の自分に振り返りの時間を設ける。この一拍おく習慣が、一発OKになる資料作成の確率をぐんと高めてくれます。
資料作成は、一晩寝かせて確認する!

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黒田 昭彦(くろだ・あきひこ)

営業コンサルタント、営業改善 代表取締役

1971年生まれ大阪府堺市出身、甲南大学卒。マーケティング会社にて企画営業として23年間多数の企業の営業支援に携わる。会社員時代のある晩、チームメンバーが「明日は徹夜をしても業務が終わらない!」と泣きじゃくり始めて手が付けられない状態になった時に、業務を分解して15分単位で予定に落とし込む方法を実践。短時間で業務を前に進める手応えを得たことから、再現性のある手法として体系化した。2019年、営業コンサルタントとして独立。現在は15分スケジュール、週間スケジュールを活用した営業の生産性向上と販売促進などを支援している。

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(営業コンサルタント、営業改善 代表取締役 黒田 昭彦)
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