上司からの仕事の指示がよくわからないときはどうしたらいいのか。企業研修を手掛けるチェンジ社長の野田知寛氏は「指示がわからないこと自体は問題ない。
ただ、わかりませんと聞き返すだけでは適格な返事は期待できない」という――。
※本稿は、野田知寛『仕事ができる人のアウトカム思考』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。
■ビジネスに不可欠な「3意識」と「4動作」
私たちがビジネスの現場で成果を上げるには、4つの基本動作――「聞く」「読む」「書く」「話す」――を適切に使い分けながら仕事を進める必要があります。しかし、これらの動作をただ機械的に行うだけでは、期待される水準には到達しません。行動の質を決定づけるのは、その背後にある3つの意識――「目的意識」「相手意識」「コスト意識」です。
3つのうち最も重要なのが、目的意識です。作業の目的や期待される成果が何なのかを理解していなければ、どれだけ丁寧に作業しても、望ましいアウトプットにはなりません。「何のためにこの作業を行うのか」を考えることが、すべての行動の出発点になります。
次に、相手意識が欠かせません。仕事は一人では完結しません。上司や先輩、お客様、チームメンバー――そのすべてが「相手」です。相手がどの情報を必要としているのか、どの程度の知識を持っているのか、どんな伝え方なら理解しやすいのか。
その視点を保つことで、作業の精度が大きく変わります。
そして3つめが、コスト意識です。ここで言うコストは、時間や労力、上司の負担など、仕事の遂行にかかるあらゆる資源を指します。限られた時間の中で最適な方法を選び、生産性を高めるためには、常に「より効率よくできないか」を考える姿勢が求められます。
これら3つの意識は、4つの基本動作のどれとも切り離せないものです。
■「基本動作×意識」が基礎をつくる
たとえば「聞く」場面では、「話し手の意図=目的」を理解し、「相手とのやり取りの効率」を高める必要があります。「読む」では、「必要な情報を見極める目的意識」と「信頼できる情報かどうかを判断する相手意識」が欠かせません。「書く」「話す」でも同様に、3つの意識が行動の質を左右します。
つまり、「基本動作×意識」の掛け合わせによって、初めてビジネスパーソンとしての仕事の基礎力が形づくられるのです。
ここからは、4つの基本動作のうち、最初の「聞く」について詳しく見ていきます。
結論から言えば、仕事の成否は、ほぼこの「聞く」で決まります。
■なぜ、仕事の成否は「聞く」で決まるのか
新入社員であっても、経験を積んだビジネスパーソンであっても、仕事は必ず誰かからの依頼や指示によって始まります。
つまり、仕事のスタート地点は常に「聞く」なのです。
では、「聞くことのゴール」とは何でしょうか。
それは、作業指示を聞いたその瞬間から、迷わず作業に取りかかれる状態になることです。
聞き終わった後に、「ええと、何からやればいいんだっけ」と立ち止まってしまうようでは、聞けているとは言えません。
「聞く」というと、「相手の話を最後まで聞くこと」や「理解すること」だと考えがちです。しかし、ビジネスにおいてはそれだけでは不十分です。
聞くことのゴールは理解ではなく、アクションです。
聞いた瞬間から、自分が何をすればいいのかがわかり、作業に着手できる。この状態をつくることが、「聞く」という基本動作における最大の目的です。
■上司の指示を聞き取れなかったら?
作業指示を受ける際に、指示内容のすべてをその場で聞き取れるとは限りません。
うまく聞き取れなかった不明点を解消する方法は、大きく3つあります。
1 自分で調べる

2 その場で質問する

3 後で聞く

その場で質問できるなら、それに越したことはないのですが、いつでもそうできるとは限りません。
したがって、作業指示を受けた後に、「これは自分で調べられるか」「これは確認が必要か」指示内容を切り分ける必要があります。
すぐに聞かなくても作業を進められそうなことについては、まず自分で調べる。過去の資料や事例を見て当たりをつけ、確認が必要なところだけを質問する、ということです。
これにより、滞ることなく作業を進めることができ、相手の時間もムダにしません。
ここで一つ、強調しておきたいことがあります。それは、「思いついたまま手を動かす」のはよくない、ということです。
進められるところは進めてかまいません。しかし、上司に確認しないといけないポイントがどこかを特定し、そこは確認が取れるまで進めないようにします。
この線引きができるかどうかが、仕事の質を大きく左右するのです。
■「わかりません」と聞くな! と言われたら
作業指示を受けると、わからないことは必ず出てきます。「さっさと手を動かせ」と言われても、わからないものはわかりません。このこと自体に問題があるわけではありません。

問題になるのは、わからないことの伝え方です。
私自身、新入社員だった頃に、当時の上司からこんなことを言われました。
「これからは自分の辞書から、『わかりません』『知りません』『できません』という言葉を消すように」
正直、「怖い会社に来たな」と思いました。
■「何がわからないのか」わからないのが問題
しかし、実際に現場に出て仕事をする中で、あのとき言われたことの本当の意味が、だんだんわかるようになってきました。
それは、わからないこと自体が悪いのではなく、「何がわからないのか」を相手に伝えられないことが問題だということです。
たとえば、「指示が雑だからわかりません」と言われても、相手はどう答えていいかわかりません。「何が、どの程度わからないのか」が見えないからです。
結果として、「で、何がわからないの?」という会話になり、話が前に進まなくなります。
■まず、理解の範囲を示す
わからなくていいのです。ただし、どこまでがわかっていて、どこからがわからないのか、質問される相手の立場に立って明確に示す必要があるということです。
たとえば、
「○○については理解できていますが、△△の部分がわかりません」

「○○という理解で進めようと思っていますが、合っていますか」
このように、自分の理解を言葉にする。これだけで、相手の反応は大きく変わります。

「○○までは合っている。△△はこうだよ」
と、ピンポイントで補足してもらえるようになります。
逆に、単に「わかりません」とだけ言われると、相手は一から説明し直す必要が出てきます。
それは、相手にとっても大きな負担になるのです。
■「合意形成」で認識のズレを埋める
作業指示を受けた際、それを実行するに当たって、最終的に相手との間に「合意形成」が必要となります。
「こういう理解で進めますが、問題ありませんか」

「この前提で作業を進めていいですか」
こうした確認をすることで、相手は安心します。「ちゃんと理解しているな」「勝手に進めていないな」と感じるからです。
上司や先輩は、自分の説明が完璧ではないことはわかっています。それでも、部下やメンバーが、理解が曖昧なまま作業を進めてしまうことを一番心配しています。
だから合意形成にはある程度、時間をかけてかまいません。
確認をし、認識のズレをなくしてから進める。このひと手間が、後の手戻りを大きく減らします。


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野田 知寛(のだ・ともひろ)

チェンジ 代表取締役社長執行役員

立命館アジア太平洋大学卒業。2007年4月、チェンジ(現・チェンジ・ホールディングス)の新卒一期生として社会人キャリアをスタート。アジア・オセアニア地域現地法人で組織変革、BPR、BPO、CRM導入等のプロジェクトに従事。中国現地にて中国人経営者向け研修事業の立ち上げを経た後、チェンジ研修事業に再参画。人材開発・組織開発サービスによる企業改革支援を手掛ける。2020年12月、執行役員。2023年4月、代表取締役社長に就任。

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(チェンジ 代表取締役社長執行役員 野田 知寛)
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