AIの進化により、コンサル界に変化の波が押し寄せている。複数の戦略コンサルティングファームに在籍してきた松本昌平さんは「今後は人間にしかできない泥臭い部分を担えるコンサルが生き残ることになる」という――。

■AI普及がコンサルの仕事を変える
AIによってコンサルの仕事がなくなる――近年、そうした説がまことしやかに広まっている。しかし、実際にはコンサルの仕事が大きく減ることはないだろう。むしろ、短期的にはAI対応の影響などで増えるという話すらある。ただし、AIの普及によってコンサルの仕事の中身は変わるし、付加価値の出し方も変わる。その結果として、クライアントのコンサルの選び方も変わることは間違いない。
ここ一年ほどで、AIの性能は目に見えて上がった。コンサルが行う仕事のうち、単なる要約や議事録作成だけでなく、調査や論点整理、仮説の叩き台づくり、ストーリーラインの骨格づくり、初期的なスライド作成までこなす。中堅くらいまでが担ってきた仕事のかなりの部分が、すでにAIに食われつつあるのだ。
これはコンサルの根拠となってきたスキル――情報へのアクセス、整理のスピード、仮説構築の型、資料化の技術といった知的生産の基本動作をAIというソフトウェアが巻き取っている、ということだ。
■コンサルのスキルはAI活用でも有効
もちろん、現時点ですべてがAIに置き換わるわけではない。クライアントとの高度なコミュニケーション、プロジェクト全体のマネジメント、論点の設計など、職位の高いシニアコンサルの領域では、まだ人間が積み上げた経験のほうがAIに勝る。
むしろ、現状でいうならば、シニアコンサルがAIを駆使することで、以前より遥かに高い生産性を実現するケースも見られる。
これは高度なコンサルスキルがあるからこそ、AIに対して適切な問いを投げかけ、返ってきた答えの妥当性を見抜くことができるからだ。
だが、AIがすでに「考えること」そのものに踏み込み始めている以上、いまの進化のスピードを考えると、遅かれ早かれシニアコンサルの仕事さえも、かなりの部分を食われることは想像がつく。
■スマートな仕事ほどAIに置き換わる
最もAIによる影響を受けやすいのは、抽象的な思考や整理の比重が高い仕事である。純粋に考え、整理し、仮説をつくり、きれいな資料に落とし込むタイプの仕事ほどAIに侵食されやすい。企業の進むべき方向を整理して仮説を立て、意思決定の材料をつくる「戦略コンサル」は、その代表例の一つだろう。
一方で、残りやすい領域もある。現場に入り込み、複雑な業務フローをほどき、属人化した仕事を言語化し、本社と現場のあいだを往復して調整を重ね、実行まで持っていくような支援だ。AIは工場や店舗や営業現場の空気を読まないし、対立する当事者のあいだに立って落としどころをつくることもできない。そう考えると、業務系や伴走型、社員代替型コンサルは相対的に残りやすい。
従来は、戦略コンサル>総合コンサル(業務系)>ITコンサル>社員代替型コンサルという序列が普通で、つまりスマートに見える仕事ほど上に見られ、現場に近く泥臭い仕事ほど下に見られがちだった。だがAIは、その「スマートに見える部分」から先に食っていく。コンサル業界のヒエラルキー自体が入れ替わる可能性がある。

■AI時代のコンサルに求められるもの
では、AI時代のコンサルに求められる条件とは何か。私は大きく次の三つに収斂(しゅうれん)していくと考えている。
第一に、人ならではの価値を生かせること。まさに現場を回すような社員代替型のコンサルがこれにあたる。コンサル内における営業職もそうだ。顧客との信頼関係を築き、相手の本音を引き出し、案件を前に進める。サービスを買うのは結局のところ人間であり、重要な意思決定は対人関係の中で行われる。
第二に、AIを使って成果物全体を設計・監督し、その妥当性を説明する力があること。ただ単純にAIに作業させるだけでは価値を生み出すことはできない。AIに何を問い、どこまで掘らせ、どの出力を採用し、どこで人間の判断を差し込むのかを設計できる人が必要だ。「象遣い」ならぬ「AI遣い」である。さらに、AIの出力をロジックや根拠を含めて説明する人も必須だ。

第三に、AIと現場をつなぐ力があることが挙げられる。現場の事実をAIが扱える形に変換し、逆にAIが出した結果を現場が動ける言葉に翻訳し直す。AIと組織のインターフェースになれる人材である。
■いいコンサルを選ぶための4つの問い
そしてコンサルの価値が変わるなら、クライアントの見る目も変えなくてはならない。どうすれば、いいコンサルを選ぶことができるのか。
第一に「AIをどこに使っていますか」と聞くことが重要だ。どの工程にAIを使い、どの工程を人間が担い、最終成果物の品質を誰がどう担保しているのか、といった点を問うべきだ。そうすることでアウトプットを最大化するための設計能力の有無、ファームとしてAIの使い方に明確な規範を持っているかどうかがわかる。
第二に、価格の妥当性を問うべきだろう。AI活用により従来と同程度の資料が短時間でできるなら、クライアントとして「なぜ同じ金額なのか」と疑問を感じるのは自然なことだ。もちろん、AI環境の整備にもコストはかかる。だが、それだけでは説明不足だ。
本当に必要なのは、短縮された工数が何に変換されたのかを示してもらうこと。プロジェクト期間が短くなったのか、対話の頻度が増えたのか、検討の射程が広がったのか、レビューが厚くなったのか、経営陣向けの示唆が深くなったのか。クライアント側が求めるべきは、効率化の果実がどんな形で自分たちに還元されるのかという説明である。
実は多くのクライアントが「コンサルはAIを使ってラクをしているのではないか」と思う一方、前述のように多くのコンサルは効率化の果実を還元している。問題は、そうした点をコンサルが十分に言語化してクライアントに伝えていないことだ。
■機密情報をどう取り扱っているか
第三に、機密情報の扱いについて問うべきだ。どこまでの情報をAIに入れているのか。顧客情報や未公開情報はどう管理しているのか。こうした点を明確に説明できないコンサルは、いくら成果物が立派でも不安が残る。コンサルは、クライアントの内部情報に深く触れる仕事である。だからこそ、「AIは使っていますが大丈夫です」では済まない。何が入力可能で、何が禁止され、誰が管理しているのかまで説明できるかどうかが重要になる。

この点が不明確なコンサルは事故を起こす可能性があるだけでなく、実効性のあるAI利用ルールを策定・実施できていない可能性が高い。つまり、組織としてきちんとした方針を持ってAIを使えていない可能性が高いのだ。
第四に「この提案の中で人間だからこそ提供できる価値は何ですか」と尋ねてみることだ。AIが作った資料を説明するだけではなく、現場を動かして組織の意思決定につなげる役割を、自分の言葉で語れるかどうかが重要になる。AIという存在が大きくなる傍らで、自分たちのコンサルとしての価値がどこにあるかを考えていれば答えられるはずだ。
もちろん、これだけでコンサルの実力を完全に見抜けるわけではない。しかし、AI時代には、ブランドや肩書よりも「AIをどう使い、人間がどんな価値を提供するのか」を具体的に説明できるかどうかが、以前にも増して重要な判断材料になる。
■華やかな職業から実務的な職業へ
現状では、まだクライアント側にAIを使うことへの抵抗感が残っているケースも散見される。先日、日系の総合コンサルから聞いた話だが、あるプロジェクトで社内チェックが甘く、AI感のあるアウトプットがクライアントの手に渡ってしまった際、「AIに高い金を払っているわけではない」と不満を呈されたという。
だが、AIはコンサルに限らず、広くビジネス現場に浸透し始めている。早晩、クライアントもAIの利用自体は受け入れざるを得ない。その際にクライアントが要求すべきなのは、成果物のどこまでをAIが、どこまでを人間が作り、誰が責任を持ち、その結果として何がクライアント側に返ってくるのか、の説明である。

AI時代に優秀なコンサルとは、単に頭のいい人ではない。AIを使ってより良い成果を出し、その中身を説明し、現場を動かし、なおかつ責任を引き受けられる人である。
以前は、コンサルといえば、カチッとしたスーツを着て、黒のアタッシェケースを持ち、頭が良く弁が立ち、きれいな資料を持ってくる人というイメージが強かった。しかし、これからは違う。AIを使って大量の下処理をこなしつつ、現場に入り込み、関係者を動かし、最後は自分の名前で責任を負う人でなければ価値が認められなくなるだろう。つまり、コンサルは華やかな知的職業というより、AIを背後に抱えた泥くさく実務的な職業へと近づいていくことになる。

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松本 昌平(まつもと・しょうへい)

コンサル、お笑い芸人

1978年、京都府生まれ。京都大学大学院修了。総務省や財務省などに勤務した後、米ボストン コンサルティング グループ、経営共創基盤(IGPI)など複数の戦略コンサルティングファームに在籍。現在は「データドリブン・イノベーション」を標榜するアスタミューゼでコンサルタントとして働く傍ら、お笑い芸人としても活動中。9月18日に『コンサルたちの憂鬱』(BOWBOOKS)、11月中旬に『ブラックエリート(仮)』(朝日新聞出版)を刊行予定。

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(コンサル、お笑い芸人 松本 昌平)
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