近年、生活者を取り巻く環境や価値観は大きく変化しています。資生堂ジャパンの新価値プロダクトグループでは、企業の持続的な成長に向けた「新価値創造」の取り組みとして、生活者の小さな行動変化やニーズに着目し、より楽しくなる美容体験と、思わず試してみたくなるワクワク感を兼ね備えた、これまでの化粧品の常識を越える新しい商品価値の創出に挑戦しています。


その取り組みから生まれた商品の一つが、凍らせて使う美容液「ソルベセラム」です。猛暑や長い残暑という社会変化や、「暑い夏でも心地よくスキンケアを楽しみたい」という若い世代のリアルな声を起点に、資生堂ならではの研究開発力と品質へのこだわりをかけ合わせ、これまでにないスキンケア体験を実現しました。

「凍らせる美容液」はどう生まれたのか。『ソルベセラム』に込めた資生堂の新価値創造 ~経験と感性が融合した新しい美容習慣~


ソルベセラムは、どのようにして生まれたのか。その背景には、生活者の小さな変化を見つめ、これまでにない価値の創造へ挑戦し続ける資生堂ならではの商品開発があります。今回は、資生堂ジャパン 新価値マネジメント部 新価値プロダクトグループの畠山真紀と、資生堂 ブランド価値開発研究所の季高那音に、その舞台裏を伺いました。

未来の市場をつくる。「新価値創造」が担うミッション

資生堂には、既存ブランドの枠組みにとらわれず、新しい市場や価値を生み出すことをミッションとした「新価値創造」の組織があります。

目指しているのは、新商品を企画することだけではありません。生活者の価値観が変化し、従来の発想だけでは捉えきれないニーズが生まれる中で、まだ世の中にない市場そのものを発見し、新しい美容文化を創り出していくことです。

新価値プロダクトグループとして資生堂の新価値創造の一端を担う畠山は、そのミッションをこう語ります。

畠山「私たちのチームが目指しているのは、未来の市場をつくっていくことです。若年層がワクワクするような価値を創造し、それによって市場を広げていきたいと考えています。
一言で言うと、『新しいワクワクは、いつも資生堂から』。日本から新しいビューティーをつくり、世界へ発信していくことが私たちのミッションです」

「凍らせる美容液」はどう生まれたのか。『ソルベセラム』に込めた資生堂の新価値創造 ~経験と感性が融合した新しい美容習慣~


資生堂ジャパン株式会社 新価値マネジメント部 新価値プロダクトグループ       畠山 真紀(はたけやま まき)

新価値プロダクトグループが着目しているのは、若年層や、一部の人しか気が付いていない小さな価値観です。未来のスタンダードは、そういった小さな変化から生まれることがあると考えているからです。

畠山は、その兆しを「小さな水たまりのニーズ」と表現します。

畠山「例えば、今では当たり前になったノンシリコンシャンプーも、かつては存在しませんでした。シリコンシャンプーが主流だったところに新しい選択肢が生まれ、若者を中心にスタンダードになっていった。私たちも、主流とは異なる新しいビューティーの兆しを見つけ、『小さな水たまりから、大きなビッグウェーブにしていく』ことを目指しています」

SNS上に現れる小さな変化や、まだ言葉になっていない生活者の声に目を向ける。その背景には、畠山が長年の商品開発で大切にしてきた信念があります。

畠山「私にとって、化粧品は『夢』なんです。こうなりたいと思う自分の夢を叶えてくれるものだと思っています。お客さまや、化粧をする、ブランドを使う人たちの夢を想像して少しでも叶えていきたい。それは、ずっと変わらない私の信念です」

一方、新しい発想を商品として実現するには、確かな研究開発力が欠かせません。
ブランド価値開発研究所の季高は、研究現場の役割をこう語ります。

季高「資生堂の大きな強みの一つに、基礎研究があり、製品化までには長い時間を要することもあります。一方で、その強みを軸としながらも、『今のお客さまが持っているニーズに迅速に応えること』も大切にしています」

「凍らせる美容液」はどう生まれたのか。『ソルベセラム』に込めた資生堂の新価値創造 ~経験と感性が融合した新しい美容習慣~


株式会社資生堂 ブランド価値開発研究所 季高 那音(すえたか なお)

生活者の変化を捉えるマーケティングと、長年培ってきた研究開発の知見。その両輪があるからこそ、これまでにない美容体験が生まれます。その象徴的な挑戦の一つが、凍らせて使う美容液「ソルベセラム」でした。

「猛暑」を新しい美容体験へ。ソルベセラムはどう生まれたのか

化粧品を凍らせて使う。その発想の背景には、単なる話題性ではなく、社会環境や生活者の変化を捉えたマーケティングがありました。開発の出発点となったのは、年々深刻さを増す猛暑です。

畠山「日本だけでなく世界中で気温が上昇し、『猛暑』『酷暑』という言葉も当たり前になりました。この夏を少しでも快適に過ごせる、新しい価値をつくれないかと考えたことが始まりでした」

転機となったのは、展示会で出会った「アイススラリー」の技術でした。液体が細かな氷状へ変化する技術を見て、これを化粧品に応用できないかと考えたことが、「凍らせて使う美容液」という発想につながります。
同じ頃、SNSでは若年層を中心に、氷を使った美容法や、極端なほどに冷たさを楽しむ美容や生活習慣が広がっていました。

「凍らせる美容液」はどう生まれたのか。『ソルベセラム』に込めた資生堂の新価値創造 ~経験と感性が融合した新しい美容習慣~


冷凍庫から取り出したばかりのソルベセラム

畠山「暑すぎて肌のケアのやる気が減退するという声や、氷を使った美容法が広がっていました。そこで、夏に効果的で本当に気持良い、ご褒美にもなる美容体験をつくれないかと考えました」

こうして、「猛暑」という社会変化、「アイススラリー」の技術、生活者インサイトが重なり、ソルベセラムの開発が始まりました。しかし、前例のない商品だけに課題も少なくありませんでした。

季高「凍らせて使う製品は社内にも前例がなく、品質保証の基準づくりから始まりました。研究所だけでなく、マーケティングや品質保証など、さまざまな部署と試作品を囲みながら議論を重ねました」

目指したのは、冷たいだけの美容液ではありません。取り出すとシャリシャリとしたソルベ状で、肌の上ではすっと溶け、美容液として心地よくなじむこと。さらに、凍らせても常温でも品質を保てること。それらを実現するために試行錯誤を重ねました。

「凍らせる美容液」はどう生まれたのか。『ソルベセラム』に込めた資生堂の新価値創造 ~経験と感性が融合した新しい美容習慣~


季高「硬すぎても柔らかすぎてもダメ。肌にのせた瞬間に気持ちよく溶ける、そのバランスに一番こだわりました」

さらに、夏の乾燥などの肌悩みに着目し、「フレッシュクリア」と「ジューシープランプ」の2種類を開発しました。「フレッシュクリア」は、うるおい透明感ケアとして、「ビタC*1、グルタチオン、グリセリン(保湿)」を配合し、「ジューシープランプ」は、うるおい毛穴ケアとして「ナイアシンアミド、水溶性コラーゲン、グリセリン(保湿)」を配合しています。
また、2種共通の保湿成分として「CICA*2・アラントイン・グリセリン(保湿)」を配合。「冷たくて気持ちいい」だけではなく、夏の肌をしっかりうるおす美容液として設計しました。

*1 2-O-エチルアスコルビン酸

*2 ツボクサ葉/茎エキス

「凍らせる美容液」はどう生まれたのか。『ソルベセラム』に込めた資生堂の新価値創造 ~経験と感性が融合した新しい美容習慣~


ソルベセラム 左:フレッシュクリア 右:ジューシープランプ

その中で今回、通常と比べて短い期間で商品開発を実現できた背景には、部門を越えた連携がありました。

畠山「経営層からも『今の酷暑だからこそ、一人でも多くのお客さまへ素早く届けよう』という後押しがあり、生産部門を含め多くのメンバーが協力してくれました」

発売後はテレビや新聞、SNSでも大きな反響を呼び、「資生堂がこんな斬新なことするなんてすぐ使いたい」「定番商品にしてほしい」といった声も寄せられました。

ソルベセラムは、社会や生活者の変化を起点に、資生堂ならではの研究開発力と品質をかけ合わせることで生まれた商品なのです。その開発プロセスには、「新しい市場を自ら創り出す」という新価値創造の姿勢が表れています。

多様な人財が生んだ新しい価値

ソルベセラムは、一人のアイデアだけで完成した商品ではありません。マーケティング、研究開発、生産、品質保証など、多くの部門が力を合わせて生まれたプロジェクトです。その中心にいたのが、長年マーケティングを担ってきた畠山と、研究開発を担当した若手社員の季高でした。

新価値プロダクトグループでは、さまざまな経験や視点を持つ人財の感性を掛け合わせ、「自分たちが本当にワクワクするものは何か」を起点に商品開発を進めています。

畠山「私たちのチームは、多様な人財が一緒になり、自分たちがワクワクする化粧品とは何かを深掘りしています。さまざまなディスカッションを重ねながら、新しい価値を考えているチームです」

市場や事業の可能性を見極める畠山に対し、季高は学生時代の経験とターゲット世代に近い感覚を商品づくりへ反映しました。

季高「私は2024年入社で会社での経験は浅いですが、博士課程での研究を通じて培った『限られた時間で何度も試行錯誤する力』を活かすことができたと感じています。
また、同年代の友人や自分自身が使いたいと思えるかという、等身大の感性も大切にしていました」

「凍らせる美容液」はどう生まれたのか。『ソルベセラム』に込めた資生堂の新価値創造 ~経験と感性が融合した新しい美容習慣~


「凍らせる美容液」という前例のない企画は、本当に実現できるか分からないところからのスタートでした。

畠山「商品は一人では絶対につくれません。企画だけでは形にならないんです。最初は『難しいかもしれない』というところから始まりましたが、季高さんたちが『やります』と言ってくれました。何度も試作を重ね、実現してくれた姿勢が本当に心強かったですね」

「凍らせる美容液」はどう生まれたのか。『ソルベセラム』に込めた資生堂の新価値創造 ~経験と感性が融合した新しい美容習慣~


その言葉を受けた季高も、畠山の熱意が挑戦を後押ししたと振り返ります。

季高「畠山さんの熱意があったからこそ、ぜひ形にしたいと思いました」

若手ならではの視点は、商品の細部にも生かされています。例えば、蓋に記された「MIX MIX MIX」という文字。凍らせた美容液を混ぜて使うことが直感的に伝わるこのアイデアは、季高がアイスクリームのパッケージから着想を得て提案したものです。パッケージも、シャーベットの楽しさと資生堂らしい上質感を両立するデザインを目指しました。

畠山「近年、世の中のトレンドが生まれるスピードは本当に速くなっています。だからこそ、日本から新しい価値を生み出したい。その思いは強く持っています」

経験と感性、マーケティングと研究開発。
それぞれが専門性を持ち寄り、部門や世代を越えて対話を重ねることが、新しい価値の創造につながっていく。その開発プロセスには、異なる価値を掛け合わせて新しいものをつくりだす資生堂らしいものづくりの文化が息づいていました。

五感に響く新しい美容文化を、日本から世界へ

新価値プロダクトグループが目指しているのは、ただ単に新商品を発売することではありません。生活者の中に新しい美容習慣を生み出し、それを新たな市場や美容文化へと育てていくことです。

季高「この製品をきっかけに、凍らせて使うという美容習慣や市場カテゴリーが生活者の中に根付いてくれたらうれしいです。世代や性別を超えて、『これは使ってみたい』と胸が躍るような商品を、これからも開発していきたいです」

その先に見据えるのが、「五感に響く価値」の創造です。

「凍らせる美容液」はどう生まれたのか。『ソルベセラム』に込めた資生堂の新価値創造 ~経験と感性が融合した新しい美容習慣~


爽やかな香りとひんやり肌に溶け込むソルベセラム



畠山「肌グミのぷにぷにした感触や、ソルベセラムの冷たさ、シャリシャリとした感覚や音など、五感で楽しめる心地よさは、これからも大切にしていきたいと思っています。そうした体験が、新しい美容文化や市場につながっていけばうれしいですね」

今回の挑戦は、研究開発にも新たな可能性をもたらしました。

季高「生活者ニーズから生まれた製品が、基礎研究にも新たな問いやひらめきをもたらす。そうした相互作用が生まれていくかもしれません。最先端技術だけでなく、これまで積み重ねてきた知見や技術を、新しい視点で生かすことにも可能性を感じています」

畠山もまた、新価値創造とは「0から1を生み出すこと」ですが、それは新知見や技術だけではないと話します。

畠山「資生堂には長年積み重ねてきた処方や技術があります。10年前、20年前の技術でも、今の時代やニーズに合わせて視点を変えれば、新しい価値になるかもしれない。そうした角度を変えた発想でも、日本発の新しい美容文化を育てていきたいですね」

生活者の変化を捉える感性と、長年培ってきた技術や研究開発の知見。それらを掛け合わせながら、資生堂はこれからも、まだ世の中にない美容体験を創造し、日本から世界へ新しい美容文化を発信していきます。

「凍らせる美容液」はどう生まれたのか。『ソルベセラム』に込めた資生堂の新価値創造 ~経験と感性が融合した新しい美容習慣~


資生堂研究員が語る「ソルベセラム」の魅力を紹介するショート動画を公開

「凍らせる美容液」はどう生まれたのか。『ソルベセラム』に込めた資生堂の新価値創造 ~経験と感性が融合した新しい美容習慣~


資生堂研究員 季高が語る開発へのこだわりや、冷凍庫から取り出したばかりの新感覚な商品の様子など、ぜひご覧ください。

https://www.youtube.com/shorts/ol8_x23wp_M
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