そんなMagnolianが PlayStation 5の世界的人気ゲーム『Death Stranding 2: On the Beach』に楽曲提供を行った。作中に使用されている曲数は6曲。そのうちの「Woods」はゲームのために書き下ろした曲だそう。本インタビューでは、Magnolianの音楽的ルーツから、どういった流れでゲームの楽曲を書き下ろすに至ったのか。また、どんな作品になったのかを尋ねた。
その多くは2000年代後半から2010年代前半に活躍していたアーティストで、ちょうど僕が大学生で、ライブに通ったり、起きている時間ほぼすべてを音楽に費やしていた時期と重なっていますね。でも、インスピレーションはジャンルを問わず、いろんな音楽から受けています。エチオピアのジャズ、メキシコのフォーク、映画のサウンドトラック、オルタナティブ・ヒップホップ、パンクロック、そしてチャートを賑わすポップソングまで、本当に幅広く聴いていますよ。──祖国であるモンゴルからの影響はありますか?少し誤解を招くかもしれませんが、僕は曲を作るときに「モンゴルっぽい音にしよう」とか「モンゴルの楽器を使おう」と思って制作することはほとんどないんです。まずは曲そのものが大事で、その曲が自然にモンゴルらしさを求めているかどうかが重要だと考えています。例えば、「The Bride & the Bachelor」という曲はラストに馬頭琴でメロディを入れていて、モンゴルの讃歌を思わせるような響きがあります。でも、この曲はもともとギターで作ったもので、自分ではまったくモンゴルっぽいとは思っていませんでした。誰かにそう言われて初めて気づいて、実際に馬頭琴で演奏してみたら驚くほど自然で、しっくりきたから採用したんです。新曲の「Woods」でも同じようなことがあって、サビのメロディをギターで作った後、いろんな楽器で試したんですが、最終的に馬頭琴の音がもっともマッチしました。モンゴルの楽器を使うのはあくまで自然な流れなんですけど、うまくハマったときはやっぱり嬉しいです。自分のルーツは、さっきお話したようなバンドやアーティストなんですけど、自分がモンゴル人である限り、自然とモンゴルらしさが曲に現れる部分はあると思います。
この作品は、セックスショップで働き始める大学生の女の子を描いた青春映画なんですが、その主人公がMagnolianのファンという設定なんです。監督のジャンチブドルジ・センゲドルジさんは、観客を彼女の世界に没入させるために音楽を使いたいと考えていて、彼女が街を歩くシーンでは常にヘッドフォンで僕の音楽を聴いている、という演出になっています。なので、サウンドトラックは全編僕の楽曲で構成されています。僕自身もちょっとだけカメオ出演しているんですよ。この映画が日本で公開されたとき、日本限定で『Best of Magnolian』というCDをリリースしました。映画に使われた曲に加えて、数曲を追加収録したベスト盤です。
昨年の終わり頃、PlayStationから連絡が来て、『Death Stranding 2: On the Beach』に僕の曲を使いたいという話を聞いたときは、本当に信じられませんでした。なんと、6曲も使ってくれていて、そのうちの1曲「Woods」はこのゲームのために書き下ろした曲です。今年の4月には、Kojima Productionsを訪問して、小島秀夫さん本人にもお会いすることができました。リリース前でとてもお忙しい時期だったのに、2時間以上スタジオを案内してくれて、ゲームの一部を見せてくれたり、お話したりと、信じられないような体験をさせていただきました。こんなふうにゲーム作品に関われたことを心から光栄に思っています。『Death Stranding 2: On the Beach』がついに発売されて、多くの人に体験してもらえることが本当に嬉しいです。まだプレイしていない方は、ぜひやってみてください。本当に“別世界”のような作品です。
僕は初代『Death Stranding』もプレイしていて、ゲームの世界観やムードはなんとなくわかっていました。壮大でありながら、すごく個人的で感情的な作品なので、曲にもそれを反映したいと思ったんです。そのためには自分自身の経験を引き出す必要がありました。──どのような経験を引き出したんですか?昨年12月、僕を育ててくれた祖母が亡くなりました。晩年の祖母は寝たきりで、家族で交代しながら世話をしていたんですけど、ある夜遅く祖母のもとから帰宅する途中、夜中の雪に覆われた森の中で、ふと白いしっぽの鹿を見かけたんです。20年その道を通っているけど、1度も鹿を見たことがなかったので、すごく印象的でしたし。鹿はまるで何かの精霊のように感じました。その経験を元に「Woods」のリリックの最後の一節を書いて完成させることができたんです。この曲は10年もの間書けずにいましたが、ようやくすべてが繋がって、自分が満足できる楽曲にすることができたんです。──「Woods」が収録されているEP『Echoes Of The Strand』はどんな作品になりましたか?この作品は僕にとってとても特別な作品です。というのも、このEPには『Death Stranding 2: On the Beach』に使用された6曲がすべて収録されているからです。Rambling Recordsからの2作目のリリースでもあり、ゲームの世界に関われたことを祝うのにぴったりの作品になりました。このEPは、ゲームと同じ空気感や感情を呼び起こせるように意識して作りました。特に気に入っているのは、僕のこれまでのすべての作品から選ばれた曲で構成されているところです。1枚目のアルバムから2曲、2枚目から3曲、そして次回作からも1曲が収録されています。『Echoes of the Strand』は、『Death Stranding 2: On the Beach』の世界観とMagnolianの音楽、その両方の魅力を感じてもらえる作品になっていると思います。──今後、どのような活動をしていきたいですか? 今、新しいアルバムに取り組んでいて、曲たちがいい感じにまとまってきています。これまで書いてきた中でも特に良い作品になっていると思うので、早くみなさんに聴いてもらいたいです。それから、新しいサウンドに挑戦したり、新しい仲間とコラボしたりして、音楽をいつも新鮮でワクワクするものにしていきたいと思っています。大事なのは自分の直感に耳を傾けることだと思うので、その時が来たら何がしっくりくるか見てみようと思います。
モンゴル出身のシンガーソングライターで、Magnolian(マグノリアン)というステージネームで活動。2015年にモンゴル最大の音楽フェスティバル「Playtime」に唯一のソロアクトとして出演し、その後すぐに1stシングル「Someday」をリリース。16年6月にリリースしたデビューEP「Famous Men」は、モンゴル国内はもちろん国際的にも注目を浴び、米メディア「Nerdist」の「Bandcamping」欄で、7月のベスト・アンダーグラウンド・アルバムに選出された。同年、韓国最大の音楽ショーケースの一つである「Zandari Festa」で初の海外公演を行い、翌17年3月にはテキサス州オースティンで開催されたSXSWに出演した。Spotifyでは、人気ロックバンド「The HU」に次いで2番目に再生数が多いモンゴル人アーティストで、1,000万回以上を記録している。20年9月にAnti-Fragile MusicからデビューLP「Slow Burn」をリリース。また、18年の釜山国際映画祭に出品された映画「They SingUp on the Hill」では音楽と主演を務めている。