『キン肉マン』大好き作家・燃え殻×爪切男の先月の肉トーク!!...の画像はこちら >>

『キン肉マン』大好き作家・燃え殻さんと爪切男さんが6月の連載を激論!

『ボクたちはみんな大人になれなかった』の燃え殻、『死にたい夜にかぎって』の爪切男の意外な共通点、それは『キン肉マン』!!

希代のストーリーテラーのふたりが6月分の『キン肉マン』連載を甘く、そして辛く批評。

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―今回の「先月の肉トーク」テーマ―

『キン肉マン』大好き作家・燃え殻×爪切男の先月の肉トーク!! vol.59【コミックス派はネタバレ要注意!】

第533話 死を賭したということ!!の巻 (6月1日更新分)
第534話 ウォーズマンの造反!?の巻 (6月15日更新分)
第535話 仮面の感涙!?の巻 (6月22
日更新分)
第536話 そびえ立つ高き壁!!の巻  (6月29日更新分)
あらすじ
生死を問わない完全KO決着のみという「ファイナルスタンディングデュエルマッチ」で行なわれることになったロビンマスクvsペシミマンのエクストラマッチ。

かつてバラクーダという立場で、ウォーズマンに徹底的な指導をしてきたロビンマスク。ぺシミマンはその恨みを代わりに晴らすと宣言した。そこで、立ち上がったウォーズマンが向かう先は!?

【ぺシミマン・ウォーズマンvsロビンマスク】

爪切男(以下、爪) 単行本の最新93巻が出ましたね。92巻もそうだったけど、今回も表紙にスカイマンが入っている。

燃え殻(以下、燃) そう、92巻はテリーマンとキン骨マン&イワオ、スカイマンで、93巻はアシュラマンとテリーマンとスカイマン、というね。

 スカイマンのあの心意気があったから、2冊続けて表紙なんでしょうね。テリーマンに替わってサラマンダーと闘うために、実況中継のヘリから飛び下りてくる、という。その登場だけで見開き2ページ使っていて、めちゃめちゃかっこいい。

 ここでスカイマンがリングに下りた時、読者みんな、湧いたよね。

『キン肉マン』大好き作家・燃え殻×爪切男の先月の肉トーク!! vol.59【コミックス派はネタバレ要注意!】

 最近出てきていない超人のファンも「これはオレの推しにも再登場のチャンスがあるんじゃないか」と思っちゃいますよね。みなさん、ゆでたまご先生にファンレターを送ったら、もしかしたら出してくれるかもしれないですよ(笑)?

 それにしても、この懐かしい超人を解説に起用するのって、いい発明だよね。やっぱりうれしいもん、出てくると。

 その時闘う超人と、関わりのある超人が出てくる、というふうになっていますよね。

 次の試合の解説も楽しみだね、誰が出てくるのか。

 で、今回は、第533~536話までの4話です。まず第533話は、ペシミマンの猛攻。ロビンマスクにヒザを入れまくる。

 ここでなんと、意識を取り戻して立ち上がったウォーズマンが、ペシミマン側のコーナーに付く。

『キン肉マン』大好き作家・燃え殻×爪切男の先月の肉トーク!! vol.59【コミックス派はネタバレ要注意!】
ウォーズマンは、ぺシミマンとロボ超人同士の熱き闘いを繰り広げた(JC90巻より)

ウォーズマンは、ぺシミマンとロボ超人同士の熱き闘いを繰り広げた(JC90巻より)

 すごくプロレス的なムーブですよね、裏切る時の感じ。

 そして、ウォーズマンのアドバイスどおりにペシミマンが闘って、ロビンマスクに唯一残っていた必殺技、タワーブリッジを防ぐ。

 もう、すごい仲良しですよね、ペシミマン、ウォーズマンの言うことを素直に聞くし。

 いい連携だよね。今、タッグトーナメントがあったら、すごくいいチームになる。

 うん、観たいなあ。

 あと、防がれちゃったけど、このロビンマスクのタワーブリッジへの入り方は、これまでになかった、新しい形だと思う。

 そう、現代のプロレスに近い感じがありますよね。たとえば、オカダ・カズチカのレインメーカーも、技までの入り方を工夫して変えていくじゃないですか。というのと近い感じがした。でも、ウォーズマンは全部読んでいて、かわされる。ウォーズマンが、いかにロビンのことを知り尽くしているかがわかりますよね。

 そうなんだよね。 

【漫画もパワハラを問う時代に?】

 第534話のロビンマスクの独白が、本当に良くて。

 そう、高笑いしながら滂沱(ぼうだ)の涙を流し、自分は最低の師匠だったことを懺悔(ざんげ)する。指導法に問題があった、心の壁を作りすぎた、そしてウォーズマンはモノを言わなくなった、と。今のこの時代に、過去のいき過ぎた指導に対して謝罪をするっていうのが、すごい話だよね。

 パワハラって言っていいですよね。

「"身勝手な自己ルールの押しつけ"であり、"精神的支配者のやり口"に他ならない」って、自ら言っているんだから。

 昔の漫画とかドラマで、当時はすばらしいものとして捉えられていたけど、今思うと全部パワハラっていうの、多いじゃない?

 多い、多い。

『キン肉マン』大好き作家・燃え殻×爪切男の先月の肉トーク!! vol.59【コミックス派はネタバレ要注意!】
バラクーダ(ロビンマスク)の指示とはいえ、ウォーズマンのベア・クローもかなり血に汚れた(JC9巻)

バラクーダ(ロビンマスク)の指示とはいえ、ウォーズマンのベア・クローもかなり血に汚れた(JC9巻)

 そういうのって、とうに終わった昔の作品だからほったらかしでいいんだけど、『キン肉マン』はその時代から地続きで今があるから。「そんな過去があったことをお詫びします!」ということを、ロビンマスクの事例を使って実行している、すごいよね。

 でも、本当にいい言葉ですよね。「師とはあくまで弟子の"壁"となるべきで"天井"となってはならん。壁として立ちはだかれど空は高く超える余地は常に残しておくものだ」って。このセリフを現役で書けるゆでたまご先生は、すごいなと思います。もしかしたら、めんどくさい新書を読むよりも、ロビンマスクのセリフを読んだほうが、ためになるかもしれない、特に『キン肉マン』世代の人たちにとっては。

 で、ロビンは「それこそキン肉マンが自ずとやってのけてきたようにな......」と言う。

 確かにキン肉マンって、常にそうでしたよね。誰と組んでも、相手に自分を押し付けることなく、対等なパートナーとして闘う、そういうことが自然にできる。

懐(ふところ)がでかい。

 キン肉マンって、『キン肉マン』という作品に登場する超人の中では、プレーンともいうべきキャラクターじゃない? たとえば、ロビンマスクは鎧(よろい)を着ている、ウォーズマンはロボ超人である、という、キャラが成立しているがゆえに不自由な状態で、自分を主張している。でも、キン肉マンは違う。

 だから、敵もみんなキン肉マンに惹かれていく、っていうのは、当然なんですね。

【勝敗よりも大切なこと】

 そして、ロビンマスクとペシミマンの闘いだけど。メガトンパンチをくり出すペシミマンを相手に、ロビンマスクは送り襟絞め(えりじめ)。この異種格闘技戦っぷりがすごい。こんなふうに、いろんな格闘のスタイルが混じり合っているのも、『キン肉マン』のいいところだけど。

 現実の格闘技の世界では、難しいことをやっていますよね。

 現実では不可能だもんね、これだけジャンルが混ざりすぎていると。総合もキャッチ・アズ・キャッチ・キャンも、ルチャ・リブレも柔術も全部混じっていて、それが試合として成立している世界を作っている。そういう漫画ならではの描かれ方が、めちゃくちゃおもしろいところなんじゃないかな。

 ここからのペシミマンの攻撃も、ウォーズマンとの友情のツープラトンですよね。「なるほどお前のアドバイス理解した! 永遠に高くそびえ立ちはだかり続けるつもりのこの厄介な壁、お前の気持ちも乗せて今こそ超えてやるぜ」だもん。

 ウォーズマン、見ているだけなのに、興奮してベア・クローを出してるしね。

 そう、これも名シーンですよね。

 ロビンはスクリュー・パルパライザーでこめかみに穴を空けられ、変型パロ・スペシャルみたいなエグい技を極められる。

 シェリフズ・アレスティング・パロという技だから、「パロ・スペシャルで逮捕した」ということですよね。これ、師匠と弟子の闘いだけど、昔の映画とか漫画だったら、弟子は師匠を超えてゆく、そこが熱く描かれる、というふうになるじゃないですか。

 今回は、その師匠の教え方自体が間違っていた、という展開になったから、どうなるかわからないよね。今になって「あの師弟の関係性は良くなかった」っていう問題提起をしたわけだから、それにどう決着を付けるんだろう? という。ロビンマスクが勝ったとして、それで何かが帳消しになるわけでもないし、ペシミマンが勝ったからって、溜飲が下がってよかったね、っていう話にはならない。と考えると、どっちが勝つにしろ、説明が必要になってくるんだろうな。

 プロレスのデスマッチを観ていると、勝ち負けよりも試合後の選手同士のマイクの言い合いで、お客さんたちは溜飲が下がることがあるじゃないですか。

葛西純が負けても、そのあとマイクで芯を食ったことを言うから、「葛西すげえな!」ってなる。

 だから普段の『キン肉マン』の闘いって、当然、勝敗がいちばん大事だけど、今回は珍しく、それが最重要ではない。この問題提起をしたことによって、このあとそれぞれがどう生きていくのか、ということに焦点が寄った。

 ああ、そうですよね。

 そう考えると、試合後に語ることよりも、ここから3者がどういう行動を取るかのほうが重要なんじゃないかな。ロビンマスクにウォーズマンが付いていくのか、それともウォーズマンとペシミマンが行動を共にするのか。

 あるいは、それぞれ別の道を行くのか。

 いずれにせよ、マジで勝敗関係ない、っていうところが、今までの『キン肉マン』の闘いにはなかった新しさなんじゃないかな。

 またゆでたまご先生にやられた、っていう気持ちですよね。しかし、今回は我々も身につまされる話だったな。僕もあちこちで働いてきたし、下に何人も後輩がいたり、仕事を教えたりすることもあったから。自分は無自覚だったけど、ロビンマスクにとってのウォーズマンみたいな存在がいたかもしれない。あの頃のアイツも、その前の職場でのあの人も、実はそうだったのかもしれない。

 あ、そうなんだ?

 燃え殻さんも会社員の頃は管理職で、何人も部下がいたわけでしょ? 今振り返ると、中には今のウォーズマンみたいな思いにさせてしまっていた人が......。

 え? いやあ、ひとりもいないと思うけど。全然思い当たらない。

 うわあ。そういう人がいちばんヤバいと思う(笑)。

燃え殻(MOEGARA)
1973年生まれ、神奈川県出身。働きながら始めたツイッターでの発言に注目が集まり、作家デビュー。『ボクたちはみんな大人になれなかった』(新潮社)、『すべて忘れてしまうから』(扶桑社)、『明けないで夜』(マガジンハウス)など多数の著作がある。最新著は『これはいつかのあなたとわたし』(新潮社)、『ブルーハワイ』(新潮文庫)。ラジオ番組 『BEFORE DAWN』(J-WAVE、毎週火曜26:30~27:00)もチェック

爪切男(TSUMEKIRIO)
1979年生まれ、香川県出身。2018年『死にたい夜にかぎって』(扶桑社)で小説家デビュー。2020年、同作が賀来賢人主演でドラマ化。『きょうも延長ナリ』(扶桑社)美容と健康にまつわるエッセイ『午前三時の化粧水』も発売中。ドライバーWebで『横顔を眺めながら ~爪切男の助手席ドライブ漂流~』を連載中。主演:木村昴でのドラマ放送でも話題となった『クラスメイトの女子、全員好きでした』が文庫化。最新刊は、『愛がぼろぼろ』(中央公論社)

取材・文/兵庫慎司 ©ゆでたまご/集英社

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