今季の佐々木朗希は、昨季までとは違う。
 シーズン序盤は不安定な投球が目立ったが、徐々に安定感を増し、オールスター後は防御率2.31。
前回登板したロッキーズ戦でも5回2失点、6奪三振と試合をつくり、デーブ・ロバーツ監督も「昨年よりかなり良くなった」と、その成長を認めている。

佐々木朗希が迎える“未知の投球領域”

佐々木朗希は9月に“先発から外すべき”なのか…MLB公式が予...の画像はこちら >>
 ロッテ時代には、登板間隔や球数を慎重に管理される姿に「過保護ではないか」との声も上がり、年間を通した耐久性を疑問視されることもあった佐々木。2024年に右上肢のコンディション不良で離脱した際には、当時の吉井理人監督が「前回も2週間空けて投げて同じ症状だった」と説明して、復帰を慎重に見極めたほどだ。

 さらにメジャー1年目の昨季は右肩の故障で5月から長期離脱した。それでも今季は先発ローテーションの一角として投げ続け、ここまで116回。かつて付きまとった耐久性への懸念を、自らの投球で払拭しつつある。

 だからこそ、次に考えたいのは「その先」だ。

 佐々木がロッテ時代に投げたシーズン最多は、2022年の129回1/3。自己最多まで残り13回1/3で、今後も1試合5~6回を投げれば、早ければ9月上旬にも更新する可能性がある。

 129回1/3という数字そのものに、特別な境界線があるわけではないが、その先は佐々木がプロ入り後に経験したことのない投球量になる。まさに未知の領域だ。

 世界一を狙うドジャースにとって、佐々木がレギュラーシーズンを投げ切ることがゴールではない。右腕の将来を考えながら、10月にどんな状態で、どんな役割を任せるのかまで見据える必要があるだろう。


MLB公式の10月予想は「ブルペン入り」

 そうなると焦点は、ポストシーズンでの起用法に移る。

 10月の先発候補としては、山本由伸、タリク・スクバル、ブレーク・スネルがまず有力だ。さらに、タイラー・グラスノーや大谷翔平には復帰や調整面の不確定要素が残るものの、候補には入ってくる。短期決戦でも、先発の選択肢は複数ある。

 MLB公式サイトが8月上旬に掲載したポストシーズン26人枠の予想記事でも、万全の場合の先発4人は山本、スクバル、スネル、大谷で、佐々木はブルペンに置かれていた。あくまで番記者による予想で球団方針ではないが、救援起用が突飛な発想ではないことはわかるはずだ。

昨季に示した“救援適性”

 長いシーズンでは先発として計算できる投手でも、短期決戦では別の使い方が最善になることもある。そして佐々木は、救援でもすでに結果を残している。

 昨季終盤、長期離脱からの復帰を目指す佐々木に対し、フリードマン編成本部長は「10月への道はおそらくブルペン」と伝えていた。健康な状態で先発から配置転換されたのではなく、故障明けの復帰ルートとして救援を試した形だった。

 佐々木はマイナーで救援登板を経験してからメジャーへ戻ると、そのままポストシーズンで3セーブ。地区シリーズ第4戦では3回を完全に抑えた。つまり1年前にすでに救援の適性を示していたわけだ。

 元最多勝投手の武田一浩氏も自身のYouTubeチャンネル『武田一浩チャンネル』内で、守護神エドウィン・ディアスの状態次第では、ポストシーズンで佐々木が後ろに回る可能性があるとの見方を示している。


9月中に救援起用を試すべき理由

 もちろん、現時点で救援転向が決まっているわけではない。それでも、ポストシーズンのどこかで佐々木の力をブルペンで必要とする場面は十分にあり得るだろう。問題は、もし10月に役割を変える可能性があるのなら、その準備をいつ始めるかという点にある。

 このまま順調なら、今季は昨季と違って健康な状態で9月を迎えられそうだ。ならば自己最多投球回が迫る9月の早い段階から、数試合に限って救援で起用し、適性や登板後の回復を改めて確かめてみる価値はあるのではないか。

 先発と救援では、登板までの準備の流れが大きく違う。救援では試合中にブルペンへ入り、展開を読みながら急いで準備を始めなければならない場面もある。

 昨季に成功した経験があるとはいえ、本番直前にいきなり役割を変えるより、9月のうちに何度か試しておく方が、本人にとっても首脳陣にとっても判断材料は増えるだろう。

救援起用は「温存策」ではなく“攻めの準備”

 もちろん、好調な先発を動かせば調整リズムを崩すリスクもある。短期決戦でも先発の枚数は必要で、登板間隔を空ける、先発で球数を抑えるなど負荷管理の方法もある。決して救援起用だけが正解というつもりはない。

 それでも、今季の佐々木は確実にたくましくなった。だから次に問うべきは「1年間投げられるのか」ではない。
これまで経験したことのない投球量の領域に足を踏み入れる佐々木を、10月の勝負どころでどう生かすかだ。

 9月の救援起用は佐々木を守るためだけの策ではない。強くなった佐々木朗希の最大出力を、本当に必要な瞬間にぶつけるための「攻めの準備」。そう考えれば、試してみる価値は十分にある。

文/八木遊(やぎ・ゆう)

【八木遊】
1976年、和歌山県で生まれる。地元の高校を卒業後、野茂英雄と同じ1995年に渡米。ヤンキース全盛期をアメリカで過ごした。米国で大学を卒業後、某スポーツデータ会社に就職。プロ野球、MLB、NFLの業務などに携わる。現在は、MLBを中心とした野球記事、および競馬情報サイトにて競馬記事を執筆中。
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