馬トク報知で過去の名勝負を当時の記事から振り返る【競走伝】。今回はヤマニンウルスが勝った2025年の東海Sを取り上げる。

先週、現役引退を発表した個性派が武豊騎手と鮮やかに復活を遂げた一戦だ。

 強い砂の怪物が復活した。ヤマニンウルスは4コーナー手前から加速すると、直線で独壇場に持ち込んだ。グイグイと後続との差を広げ、影をも踏ませず、3馬身半差の快勝。約1年ぶりの白星を祝うように、武豊はゴール手前で右拳を力強く握った。「久しぶりにこの馬のパフォーマンスができて、すごくうれしいです」とユタカスマイルも全開だ。

 横綱相撲だった。発馬を決めて先行集団に取り付くと、早々と2番手を確保。残り300メートル付近で堂々と先頭に立ち、そのまま押し切った。「いい時のこの馬の感じだったので、自信を持って先頭に立ちました。もまれない位置で先行できればと思っていたので、理想のポジションが取れました」とうなずいた鞍上。「すごく上手にエスコートしてくれました」と斉藤崇調教師も手綱さばきを称賛した。

 ギラギラと太陽の輝く季節が似合う。無傷の5連勝で重賞初制覇を飾った24年のプロキオンS(小倉・ダート1700メートル)は7月。ダート1700メートルのJRA2歳レコードで駆け、2着馬に4秒3差の大楽勝だった22年のデビュー戦(小倉競馬場・ダート1700メートル)も8月だった。

 自分との戦いに打ち勝った。早い時期から大器と評判になりながらも、爪や体質面の弱さなどに泣かされ、なかなか順調には使えず。24年12月の名古屋大賞典でデビューからの連勝が5で止まってからは低迷が続いたが、前走後に3か月半の放牧で精神面をリフレッシュ。集中力が持続するようワンターンの1400メートル戦へ距離短縮し、ブリンカーも初着用した。「このまま終わってしまったらどうしよう、と思っていたのでホッとしましたね」。クロワデュノールも管理するダービートレーナーが次々と施した“策”も、歯車が再びかみ合う要因となった。

 その3週前に北九州記念を制した半弟ヤマニンアルリフラに負けじとつかんだ重賞2勝目。「改めてこの馬は走るなと思いました」とたたえた名手とのコンビで、ダート界の頂点へ。怪物伝説の“第二章”が幕を開けた。

 ただ、その後も体質面などの影響で順調には使えず。今年は休養明け&8か月半ぶりの実戦で、59・5キロのトップハンデだったポラリスSで12着と大敗。多くの競馬ファンが再び復活の時を待ち望んでいたが、先週17日に現役引退と種牡馬入りが発表された。その上質なスピードと、高い身体能力を受け継いだ産駒たちの誕生を心待ちにしたい。

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