最近、若い世代を含めて人気上昇中な「平屋」。今回紹介する埼玉県入間郡のTさん夫妻も「最初から平屋しか想定しなかった」そう。
夫の実家が所有していた農地をマイホームに。当初から平屋一択
■Tさん邸データ
施工費2500万円~3000万円家族構成夫30代、妻30代 犬2歳竣工年月2023年12月間取り平屋 3LDK敷地面積348.33平米建物面積87.71平米断熱等級5UA値0.48建築会社ヒロ建工家づくりの第一歩は、夫の親から譲り受けた土地の活用から始まった。もともとは農地で、周囲に高い建物がない、開放感のある場所だ。
「一軒家を建てるなら、平屋がいいなと思ったんです。私たちは夫婦ともキャンプが趣味なのですが、2階建てだと重いキャンプ道具を階段で運ぶのが大変じゃないですか。平屋なら動線がフラットなので、準備も片付けも格段に楽になると思ったんです」(妻)
「土地が十分に広かったので、2階建てにする必要性を感じませんでした。むしろ2階建てだと手に余ると思ったんです。30坪に満たないコンパクトな平屋であれば、自分たちの暮らしにちょうどいいサイズ感になると考えました。建築費が抑えられるメリットもあります」(夫)
木の質感のある家がいいと、当初はログハウスのハウスメーカーの住宅展示場を訪れた。
「でも平屋のモデルハウスがなかったんです。
もう少し手軽に、でもアウトドアな雰囲気はしっかり感じられるようにしたい――そうして調べていく中で、今回依頼したハウスメーカーに出合いました。決め手は、平屋住宅を多く手掛けていたこと。なかでも、緩やかな勾配屋根を持つ、カリフォルニア風の平屋住宅のモデルハウスが気に入り、それをもとに間取りや仕様をオーダーメードしていくことにした。
「MONICA」という商品ブランドをもとに、間取りや仕様をカスタマイズした(写真撮影/片山貴博)
天井高は4m超。木の質感を活かした縦空間は開放的
室内に入ってまず目を引くのは、4m超の高い天井に力強い木の梁(はり)が渡る縦空間だ。さらに広々とした土間には薪ストーブが置かれ、まるで山の中にある別荘を訪れたのかと感じる。家具含め、木の質感を活かしたインテリアはアウトドア感があり、キャンプ好きの夫妻にふさわしい空間になっている。
「天井の高さだけは、絶対に譲れない条件でした。家全体の天井を高くできるのは平屋だからこそ。面積以上の広がりを感じることができます」(夫)
建物を支える木の梁も、薪ストーブの黒い煙突も空間のアクセントに。どちらも機能とデザインの両方を担っている(写真撮影/片山貴博)
DATA
間取図
木の梁にはライティングレールが施されている。土間の上には小さなロフトも(写真撮影/片山貴博)
他の居室も天井が高い。
断熱性の高い家だから、冬は「薪ストーブ」ひとつで暖かい
リビングの一角に鎮座する薪ストーブは、この家の主役ともいえる存在だ。これは家を建てる際、最初から導入を決めていたオプションだという。
「冬場は、この薪ストーブ1台だけで家全体が十分に暖まります。家の断熱性能がとても高いので、一度暖まると冷めにくい。実は各部屋にエアコンを設置したのですが、冬の間は一度も使いませんでした」(妻)
「夏は夏で、風通しが良く涼しく過ごせます。気密性が高いので、エアコンの効きも非常にいい。一年を通して、これほど快適に過ごせるとは思っていませんでした」(夫)
断熱等級5という高い住宅性能のおかげで、自然の温もりを感じながら、エネルギーに頼りすぎない豊かな暮らしを実現できている。
薪ストーブのある土間。テーブルやチェアは高さが低い家具を置くことで、空間を広く見せている(写真撮影/片山貴博)
広い庭は愛犬のドックラン。階段の上り下りがないのもベスト
この平屋には、大切な家族がいる。ポメラニアンとダックスフントのミックス、2歳の「ラックス」くんだ。ここにマイホームを構えるのと同時にお迎えした。
「階段を下りる動作は犬にとって足腰の負担になるそうなので、本当に平屋にしてよかったと実感しています。
「庭にはウッドデッキをつくり、そこから直接外へ出られます。フェンスも設置し、今ではプライベートなドッグランのような状態。キャンプに行けない週末でも、ここでラックスと一緒に外の空気を感じるだけで、十分にリフレッシュできます」(夫)
屋根付きのデッキも広い庭もラックスくんの一番の遊び場(写真撮影/片山貴博)
武骨なスティールのフェンスにヴィンテージなブリキ看板を設置(写真撮影/片山貴博)
「ラックスくんにとって居心地のいい家」は家づくりの大切なコンセプトのひとつ(画像提供/ご本人)
ウォークスルークローゼット、オープン棚、倉庫で収納不足を解消
平屋の懸念点として挙げられることが多い収納不足も、「見せるインテリアの一部」とすることで対応した。
なかでも寝室と洗面台の間に位置するウォークスルークローゼットは夫妻こだわりのポイントだ。
「洗濯して、乾燥させて、そのまま収納する。この一連の流れを最短にするために、通り抜けできるクローゼットを寝室と洗面台の間につくりました。平屋はどうしても収納が限られるので、あえて『見せる収納』を意識したんです」
夫妻ともに洋服好き。たっぷり収納量のあるウォークスルークローゼットは店舗のディスプレーのよう(写真撮影/片山貴博)
ほかにも、玄関入ってすぐの場所は、靴だけでなく、外に着ていったアウターやペットのグッズ類などの置き場としても機能。パントリーの入口を美しいアーチ状にしたり、洗面所の下をオープンにしたりすることで、圧迫感を抑えつつ、インテリアの一部にするなど収納を楽しんでいる。
「しまい込みすぎず、洋服屋さんのようにディスプレーすることを意識しています。そうすることで、何がどこにあるかひと目でわかりますし、常にキレイにしておこうという意識も働きますから」(妻)
玄関はオープンな棚で、何があるか一目瞭然。
パウダールームの収納もオープン棚。統一感のある布製ボックスを利用してすっきり(写真撮影/片山貴博)
アーチ型のパントリーに、オープンな食器棚。Tさんのセンスで集められたモノは、不思議と統一感がある(写真撮影/片山貴博)
さらに、室内スペースを有効活用するための“裏ワザ”として、庭に倉庫を設置した。ここには主にテントなどのアウトドア用品を収納。室内に持ち込むことなく、車から直接荷物を出し入れできるため、車と倉庫の間の動線も非常にスムーズだ。
ちなみに倉庫は、床面積の合計が10平米以下、防火地域または準防火地域ではないことなどの諸条件がそろっていれば、建築確認申請が不要だ。
庭にある倉庫。横には薪ストーブ用の薪を置いている(写真撮影/片山貴博)
倉庫の中には、キャンプ道具など、かさばるものを収納(写真撮影/片山貴博)
自分の「好き」を集めた家づくりは楽しい経験。ただし想定外も
もともとインテリアが好きだったというTさん夫妻。新居にある家具のほとんどは結婚当初の住まいのものだが、今回のマイホームづくりでは、自分らしい空間へと仕上げていく家づくりのプロセスそのものに夢中になったという。
例えば、扉はすべて同じにせず、場所ごとに色もデザインも変えた。玄関から土間に向かう扉にはヴィンテージ風のドアをオーダー。
「自分たちが『やりたい』と思ったイメージ写真をInstagramで探して、その写真を施工会社の担当者に見せながら、一つずつ形にしていきました。もともとやりたかったテイストの家を多く手掛けていた会社だったので、イメージの共有がしやすかったです」
玄関から土間に至るドアはヴィンテージ風の引き戸で趣ある雰囲気に(写真撮影/片山貴博)
各々の扉のカラーを変えた。「どんな建具がいいか、ひとつひとつ考える家づくりが楽しかったです」(写真撮影/片山貴博)
土間には鉢植えのグリーンを置いて、室内に居ながら自然を感じられる場所に(写真撮影/片山貴博)
DIYも新たな趣味のひとつに。狩猟が趣味の友人から譲ってもらった鹿の骨を塗装し、飾り棚を自作した(写真撮影/片山貴博)
ランタンなどのキャンプグッズもインテリアの一部に(写真撮影/片山貴博)
快適な平屋生活だが、1点想定外だったことがあった。
「もともとこの土地は農地だったため、家を建てられるよう宅地に変更する手続きが本当に大変だったんです。認可が下りるまで1年半かかったでしょうか」(夫)
実際、いわゆる「農地転用」の手続きには多くの関門がある。その土地が転用できる農地かどうかを市区町村の農業委員会に確認することから始まり、申請書類を集めて許可を得るまでには、たくさんの時間と労力を要したという。
「住宅ローンを組むタイミングや、土地の手続きを考えると、少しでも早く動き出すことが大切です。私たちは結婚して2年目くらいで動き始めましたが、あのとき決断していなければ、まだ家は建っていなかったかもしれません。もし農地を活用しようと考えているなら、スケジュールに十分なゆとりを持って計画することをお勧めします」 (夫)
約100坪の土地という恵まれた環境を活かし、キャンプ、洋服や雑貨、愛犬との時間と、「好き」を具体化したTさん夫妻の平屋住宅。まさに夢の実現といえよう。
●取材協力
ヒロ建工

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