全国で路線バスの廃止・減便が相次いでいます。原因の一つがドライバー不足。

そんな中、「ちょっと乗せてもらえませんか」と、すでに走っている別のクルマに便乗させてもらう動きが、全国で広がっています。

工場のバスに、ちょっと乗せて

まずは静岡県・湖西(こさい)市。「デンソー湖西製作所」の竹本 晴彦さんに伺いました。

デンソー湖西製作所 竹本 晴彦さん

もともと湖西市っていうのが、公共交通機関の空白地域って言われていまして。地域の住民の方が公共的な移動手段がなくなってしまってたんでうsね。ただその割には、結構大手の製造業がいっぱい工場を連ねてまして。じつは駅から企業まで、企業の連絡バスみたいなもの、シャトルバスがいっぱい走ってるんですね。で、朝晩は従業員の方が結構乗られるんですけど、昼間の時間っていうのが、空席が目立つ中で、でも定期便として動かしてるっていうのがありまして。じゃあそこに住民の方に乗ってもらうことができるんじゃないの?っていう、そんなアイデアから。

病院だとか、買い物するような場所だとかに少しルートを変えてですね、迂回しながら行かせていただくって形になってますね。従業員からすると「え?」みたいなところはあったんですけど。通常は10分ぐらいで移動できるところが、15分ぐらいになってっていうところなんですけどね。

湖西市は自動車関係の工場がいくつもあって、デンソーも自動車部品メーカーで1万人前後が働いています。

ただこの地域、東西を結ぶ電車(JR東海道線)はあるんですが、北と南を結ぶ移動手段がほぼない。令和3年に路線バスも完全撤退していました。

ところが、デンソーの従業員向けシャトルバスが、ちょうどその北と南を走っていた。朝は従業員で行列ができますが、昼間は空っぽ。「だったら乗せてもらえませんか」と市から持ち掛けられたのが始まりで、1回「100円」で一般の人も乗れるようにしたそうです。

ドライバーに行き先を伝えると、病院やスーパーなど、住民向けに新たに設けた6か所を含む合計9か所のバス停に乗せていってもらえます。当初はもっとバス停が多く、厳選に厳選を重ねて今の9か所に落ち着いたそうです。5年の実証実験を経て、今年1月にようやく本格運行へ。今は1時間に1本走っています。

郵便配達のクルマに、人を乗せる

「今あるものに乗せてもらう」という発想、北海道でも別の乗り物で広がっています。「上士幌町(かみしほろちょう)」の梶 達さんに伺いました。

上士幌町役場 梶 達さん

よく全国で走っている日本郵便さんの赤い車。あちらにですね、高齢者の方を助手席に乗せて運んでいただくという、そういった実証実験を行いました。

郵便ポストをバス停代わりにしてですね、郵便ポストの集荷って時間が決まっているので、その時間に高齢者の方に、「バス停」代わりにポストのところに集荷時間に立っていたら乗せていきますよということをやったんですけど。ゆうパックだとか、地域に運ぶ荷物の集荷配送に合わせて高齢者を迎えに行っていただく。

じつは上士幌郵便局が協力してくださって、局長自らハンドルも握ってくださったんですけど、トークも上手で楽しい方なんで、普段のバスより楽しかったっていう声もありました。

バスが減便?だったら郵便配達の助手席に乗せてもらうの画像はこちら >>
<イメージ>

上士幌町は北海道のほぼ真ん中。面積は東京23区より広いのですが、人口は5000人ほどでクルマ移動が基本。ただ、免許を返納した方は移動手段がありません。

1回目の実験では、ポストの「集荷時間」に合わせてポストの前で待つスタイル(無償)。2回目は、予約すると自宅まで迎えに来てくれるスタイルに進化し、郵便局に戻る帰り道のついでにスーパーや病院で降ろしてくれる仕組みになりました(片道500円)。

車は2人乗りなので助手席に座ることになりますが、後ろには配達物が積まれています。「郵便法」という法律で郵便物の中身を人に見せてはいけないため、荷物は外から見えない専用ボックスにしまって乗せるというルールも整えました。また、郵便配達のついでに人を乗せるには「自家用有償」という制度が必要で、郵便局員さんには自動車教習所での講習も受けてもらっています。

2か月間に44回の利用があったそうで、この秋には3回目を計画中。

うまくいけば定着させたいということでした。

郵便局は、最後のセーフティーネット

全世帯に配るものって必ず行政ではたくさんあるので、税金のことですとか、選挙の投票とか。そういうことを考えると、日本郵便さんが「最後のセーフティーネット」みたいなところはありますよね。本当に我々は一軒一軒が遠いエリアにあるんですけど、移動は移動、物流は物流っていうだけで、たとえば全く同じ人であっても往復一時間行ってるのはちょっともったいないんじゃないかと。

少なくとも郵便物は日本郵便さんって本当に日本で最大のユニバーサルサービスなので、月何回とか週一回とかでも、そこの郵便物に合わせて運ぶなんてことができたらって、そういった自治体からの問い合わせはたくさんありましたね。

上士幌町の動きは全国から注目を集め、問い合わせが相次いでいるそうです。また、群馬県・下仁田町や岐阜県でも、スクールバスをお年寄りの買い物や通院に使う取り組みが始まっています。国交省も、こうした地域の乗りものを住民の足として使いやすくするための法案を今の国会に提出しました。いかに人手不足が深刻かを物語る動きですが、今後、各地でこういった取り組みが増えていきそうです。

(TBSラジオ『森本毅郎・スタンバイ!』より抜粋)

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