笹川友里がパーソナリティを務めるTOKYO FMのラジオ番組「DIGITAL VORN Future Pix」(毎週土曜 20:00~20:30)。この番組では、デジタルシーンのフロントランナーをゲストに迎え、私たちを待ち受ける未来の社会について話を伺っていきます。
8月29日(土)の放送は、関西電力株式会社 理事 IT戦略室長の上田晃穂(うえだ・あきお)さんが登場。2018年から進めてきたDXの歩みと、AI時代の新しい仕事の進め方について話を伺いました。

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(左から)上田晃穂さん、笹川友里


上田晃穂さんは、1997年に関西電力へ入社。2016年にはグループ会社のケイ・オプティコム(現・株式会社オプテージ)へ出向し、格安スマートフォン「mineo」の事業責任者を務めました。その後、関西電力に戻り、IT戦略室IT企画部長を経て、2024年にIT戦略室長、理事に就任。現在はAIファースト企業への変革を牽引しています。また、電力会社として初めて「DX銘柄2026」に選定されるなど、同社のデジタル変革を推進しています。

◆「関西」「電力」からの脱却とDXの原点

関西電力といえば、関西エリアの電力を支える大手電力会社ですが、2026年4月から新たな経営計画がスタートし、そのなかにあるのが「関西電力はいつまでも『関西』『電力』であってはならない」という考え方です。現在は電力だけでなくガスやエネルギーマネジメント、情報通信、不動産などにも領域を広げ、日本全国、さらには海外も含めて多角的な事業展開を進めています。

また、関西電力には100以上のグループ企業があり、従業員数はグループ全体で3万人以上にのぼります。こうした事業変革の土台となっているのが、2018年から進めてきたDXです。経済産業省の「DXレポート」が同年9月に公表される前の6月には、すでに社内に「DX戦略委員会」を立ち上げ、同年8月には、アクセンチュア株式会社との共同出資により、デジタル技術を活用したグループの業務変革や新規事業の創出を目的とする戦略子会社・K4 Digital株式会社を設立しました。


そのきっかけとなったのが、当時の社長によるアメリカ視察です。シリコンバレーなどを訪れた際、日本とのデジタル技術の活用度レベルが圧倒的に違うことを目の当たりにしたことで、今後はDXにも力を入れなければならないことを実感し、日本に帰ってすぐに取り組んだそうです。

◆ChatGPT登場でDX戦略を再構築

2024年7月、関西電力は「DXビジョン」と「DXロードマップ」を策定しました。そのきっかけとなったのが、2022年11月のChatGPTの登場だと言います。上田さんは「これは世の中を変えるようなものになる、すごい技術が出たということと、生成AIが出てくる前に立てたDX戦略っていうのはもう役に立たないなと思って、今までのものはもうガラガラポンで作り変えないといけないと思いました」と話します。

そこで、「2030~2035年にAI産業革命が起こったら、関西電力はどのような企業になっているのか?」と仮説を立て、デジタルをフル活用した業務や事業の変化をイメージしたうえで、現時点で足りないところを整理し、未来に向けて、いつまでに何をするのかをロードマップに落とし込みました。

現在はDXに加えてAIの戦略も策定し、経営計画とは別に公表しています。2018年から始まった取り組みは、生成AIなどの技術変化を取り込みながら、業務だけでなく事業そのものを変えるDXへと進んでいます。

◆失敗を恐れない「まずやってみよう」の風土

関西電力がDXを進めるうえで掲げているのが、「AIファースト企業」という考え方です。上田さんは、これを「JTC(Japanese Traditional Company)」と対比して説明します。JTCとは日本の伝統的企業を意味しますが、「いい意味か悪い意味かでいうと、基本的に悪い意味で、部門・組織の壁が厚く、計画を作ったけど実行しない企業を揶揄する言葉として使われています。そのうえで、皆さんは『電力会社ってJTCじゃないの?』というイメージで捉えている方が多いと思いますが、僕の気持ちのなかでは、関西電力はJTCじゃなく、AIファースト企業になりたくてDXを進めています」と熱弁します。


両者の大きな違いは、AIの捉え方です。JTC型では、これまでの仕事のやり方や人の役割分担を変えず、「ここに部分的にAIが使えそう」と考えます。一方、AIファースト企業は、AIの利活用を前提に人の役割や業務のあり方を考え、必要であれば「仕事そのものを変える、再構築する」と発想します。

もう1つの違いが、失敗への向き合い方です。AIファースト企業では「失敗はどんどんしていい」と考え、早く、多く失敗しながら、そこから何を学び、次にどう生かすかを重視します。この考え方は、関西電力が進める「組織風土改革」にも表れています。

上田さんは、「うちの社長が『まずやってみよう』というのをすごく言うんですね。『やる前からいろいろ考えていると最初の一歩が踏み出しにくい。だから、まずはやってみて、その結果から考えてみたらええやんか』と。社長がそう言ってくれることで、『じゃあ、まずはやってみようか』と全社員がなっていって、どんどん挑戦し、失敗しても“次はどうするの?”と考える雰囲気になっているのかなと思います」と話します。

◆AI×ベテランの知識で進める人材不足対策

AIファースト企業という考え方は、実際の発電所の現場にも広がっています。関西電力では、ベテラン社員が長年の経験の中で培ってきた知識やノウハウをAIに取り込み、若手社員の業務を支援する取り組みを進めています。


その1つが、過去の現場で蓄積されたナレッジ(知識)の利活用です。ベテラン社員が持つナレッジをAIに読み込ませておくことで、若手社員が工事や作業をおこなう際、その情報を検索しながら業務を進められるようにしています。さらに、法令チェックの作業にもAIを活用しています。火力発電所では消防法や高圧ガス保安法など、さまざまな法律に基づく届け出が必要です。そこで、今回実施する工事の内容を記した仕様書をAIに読み込ませると、AIがどの法律に基づいて、どのような届け出が必要になるのかを洗い出してくれる仕組みを作りました。

ベテランであれば経験から判断できることでも、初めて工事を担当する若手にとっては「膨大な法律のなかから一体どの法律のどこを見たらいいのか」「社内のどのマニュアルを見たらいいのか」さえ分からない場合があります。「そういうところもAIが、『この法律の届け出が必要になる確率が80%』といった形でサポートしてくれることによって、すごく若い子は助かっていると言っていましたね」と上田さんは話します。

一方、この取り組みで課題となるのが、ベテラン社員の持つ「暗黙知」を次の世代へ残すことだと言います。「ベテランも、いつまでも関西電力の社員でいてくれるわけではない」とし、日本全体で労働人口が減少するなか、「ベテラン社員が退職してからでは遅いので、いるあいだに、その暗黙知をいかに形式知化してAIに読み込ませるか。そして、それを若手含めて、今関西電力にいる人が使いこなせるように準備を進めているところです」と話していました。

次回9月5日(土)の放送も、引き続き上田さんをゲストに迎えて、クラウド型サービス「SenaSon」についてなど、貴重なお話が聴けるかも!?

<番組概要>
番組名:DIGITAL VORN Future Pix
放送日時:毎週土曜 20:00~20:30
パーソナリティ:笹川友里
番組Webサイト: https://www.tfm.co.jp/podcasts/futurepix/
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