前編では、Rickyさんが増配株投資にたどり着くまでの歩みを伺いました。後編では、年間配当804万円を生んだ具体的な銘柄選定術や、高配当株ではなく「増配株」にこだわる理由、そして暴落時にも狼狽(ろうばい)売りしないための投資哲学に迫ります。


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高配当ランキングだけでは見えない、増配株の本当の魅力

トウシル:前編では、Rickyさんが短期トレードから割安株投資に移り、ホテル勤務を続けながら配当金を育ててきた歩みを伺いました。後編では、具体的な投資手法について聞かせてください。まず、Rickyさんは「高配当株」と「増配株」は別物だと考えているそうですね。


Rickyさん:そうですね。ここは強くお伝えしたいところです。高配当株と増配株は、似ているようで全く別物だと思っています。


 高配当株ランキングはすごく目立ちますし、そこにもいい銘柄はあります。ただ、今の配当利回りが高いからといって、今後も配当が維持されるとは限りません。大事なのは、これからも増配が続きそうな銘柄を見極める視点です。


トウシル:「配当利回りが高い=よい銘柄」と単純には言えないということですか?


Rickyさん:そうです。一時的に高配当で有名だった銘柄でも、その後に業績が厳しくなれば、減配する可能性があります。ですので、私は高配当株そのものよりも、長期間じっくり持つことで配当が増えていく増配株に魅力を感じています。数年先、10年先を考えると、増配株はすごく夢がある投資だと思いますね。


まず数字で絞る。4,000銘柄から見込み株を探す方法

トウシル:Rickyさんは、増配株をどのように探しているのでしょうか。


Rickyさん:まずは機械的なスクリーニングから入ります。ネット証券のスクリーニング機能を使い、条件に合う銘柄を絞っていくんです。今の日本株は約4,000銘柄ありますが、第一段階で100銘柄前後まで絞れます。


Rickyさん式スクリーニングの条件
  • 株価収益率(PER):12倍以下
  • 株価純資産倍率(PBR):1.3倍以下
  • 自己資本利益率(ROE):7%以上
  • 総資産利益率(ROA):3%以上
  • 配当利回り:3%以上
  • 自己資本比率:35%以上
  • 時価総額:100億円以上

 金融やリースのような一部の業種では、自己資本比率に関する条件を除外する場合がありますが、おおむねこの条件で絞り込みしていますね。


トウシル:いきなり会社の中身を見るのではなく、まず数字で絞るのですね。


Rickyさん:はい。定性分析から入らないのは、かなり大事だと思っています。


 例えばテレビの経済番組で「この会社、すごいな…」と思ってから分析を始めると、どうしてもその会社にほれてしまいます。そうなると、「ここは少し気になるけど、将来性があるから大丈夫だろう」と、都合のいい材料を探しにいってしまうんです。そのため、私はまず定量分析から入ります。

数字で残った銘柄に対して、事業内容や配当政策を見ていく流れですね。


トウシル:第一段階で絞った後に、さらに第二段階があるのですか?


Rickyさん:あります。第一段階の弱点は、その瞬間の企業の状態しか見えないところです。今の数字は分かりますが、過去からどう積み上がってきたのかまでは見えません。そこで第二段階では、過去の実績を確認します。


 具体的には、1株当たり純資産(BPS)や1株当たり利益(EPS)の推移を見ます。特に重視しているのはBPSです。第一段階で100銘柄前後に絞り、そこから第二段階を通すと、時期にもよりますが10銘柄前後まで候補が絞れます。


トウシル:4,000銘柄から10銘柄前後まで。かなり絞り込まれますね。


Rickyさん:そうですね。そこから配当政策や事業内容を見て、最終的に投資する銘柄を選びます。

毎週金曜日の取引が終わった後や土日に確認する場合が多いですね。趣味のようなものなので、そこまで頻繁にやる必要はないと思いますが、定点観測にはなります。


配当800万円超を生んだ「成長力の強い銘柄」の選び方:増配株投資家・Rickyさんインタビュー後編
感情や期待値を抜きにしてまずは数字で銘柄をスクリーニング。成功体験にも失敗体験にも頼らない冷静な判断が、底堅い銘柄を選び出すコツ

株価より会社の基礎体力。BPSを重視する理由

トウシル:BPSを重視する理由を、もう少し教えてください。


Rickyさん:短期的な株価は、EPSにかなり振られると思っています。増収増益が発表されれば株価は上がりやすいですし、減収減益になれば下がる。そこに国際情勢や為替なども加わります。


 ただ、長期で見ると、企業が持っている資産や自己資本の積み上がりを無視できない動きになるのではないか、と考えています。特にバリュー株の場合、BPSがしっかり伸びている銘柄は底堅い印象があります。


トウシル:企業の基礎体力を見ている感覚でしょうか。


Rickyさん:その通りです。過去10期でBPSがしっかり伸びている企業は、その間にいろいろなショックを乗り越えてきた証拠にもなります。

コロナショックの時も、チャイナショックの時も、利益を積み上げて自己資本を厚くしてきた。そこを私は大事にしています。


 バリュートラップという言葉がありますよね。割安なまま放置されて、株価がなかなか上がらない銘柄を指す言葉です。ただ、私は必ずしも悪いことだとは思っていません。仮に株価純資産倍率(PBR)がずっと1倍程度でも、BPSが伸びていれば、長期的には株価もその水準に沿って上がっていく可能性があるからです。


トウシル:目先の値動きより、会社の土台が厚くなっているかを見ているのですね!


Rickyさん:そうです。一方で、EPSが10期連続で伸び続ける企業はかなり少ないです。そういう銘柄はグロース株に多く、株価収益率(PER)も高くなりがちなので、私のバリュー株投資とは少し相性が悪いんですよ。ですので、EPSの上げ下げはある程度妥協しつつ、BPSが積み上がっている部分をしっかり見るようにしています。


トウシル:保有銘柄でも、BPSを重視する傾向は強いのですか?


Rickyさん:そうですね。保有銘柄を見ても、EPSが10期連続でプラスの銘柄はかなり少ないです。

80銘柄以上持っていても、1、2銘柄くらいではないでしょうか。


 その代わり、BPSについては過半数の銘柄が10期しっかりプラスになっています。そこが、私の増配株投資の裏付けになっていると思います。


配当性向よりDOEを重視、増配が続く会社を見抜く視点

トウシル:最近は自己資本配当率(DOE)を採用する企業も増えています。Rickyさんの投資手法とも相性が良さそうですが、どのように感じていますか?


Rickyさん:かなり相性がいいですね。配当性向は利益に左右されますので、どうしても波が大きくなります。分散投資をしていても、受け取る配当金の見通しが立ちにくい面があります。


 一方、DOEは自己資本を基準に配当を出す考え方です。BPSが伸びている銘柄と相性が良く、増配率は小さくても安定的に増えやすくなります。私の増配株探しにとっては、かなり追い風だと感じています。


トウシル:自己資本利益率(ROE)との関係では、どのように見ていますか?


Rickyさん:ROEとDOEは、どちらも自己資本が関係します。例えばROEが10%でDOEが2%なら、残りの8%は翌期の自己資本の厚みに回ると考えられます。自己資本が積み上がれば、それに対してまたDOEで配当が支払われる。

そういう好循環が続けば、短期的な株価がどう動いても、配当金は安定しやすいと思っています。


 もちろん、全ての企業が理想通りに動くわけではありません。ただ、配当性向だけを見るより、BPSやDOEの流れを見た方が、増配株投資には合っていると感じます。


暴落時に売らないために必要な平時からの準備

トウシル:Rickyさんの投資人生を振り返ると、大きな下落を経験しながらも狼狽売りを全然していない印象があります。暴落時に狼狽売りしないために、意識していることはありますか?


Rickyさん:狼狽売りをしてしまうと、リターンはかなり落ちると思っています。急騰するタイミングは、だいたい暴落の後に来ます。そこで売ってしまうと、一番大事な上昇局面を逃してしまうんです。


 特に配当株投資の場合、狼狽売りは避けたいですね。そのためには、暴落した時に「売る」のではなく、「買って配当金を増やす」という意識を持つのが大事だと思っています。


トウシル:頭では分かっているのですが、実際に資産が大きく減ると怖いですよね…。


Rickyさん:もちろん怖いです(笑)。だからこそ、事前の準備が大事になると考えています。


 暴落に直面してから銘柄を探しても、その時のメンタルはボロボロですので、冷静に判断できるとは限りません。そのため、普段から買い付け候補の銘柄をストックしておき、どの水準まで下がったら買うのか決めておきつつ、そのための資金も残しておきます。そうすれば、計画通りに全て動けなかったとしても、少しは冷静に行動しやすくなると思っています。


トウシル:暴落なら何でも買う、というわけではないのですね。


Rickyさん:そうです。企業単体の悪い決算で下がっている銘柄ではなく、市場全体のショックで下がった好業績銘柄を買いたいと思っています。植田ショックやトランプショックのように、市場全体が大きく下げた時ですね。


 今は普段あまり大きく買わないようにしていますが、それはいずれ買い時が来ると思っているからです。ただ、気になった銘柄は打診買いすることもあります。少しでも持っていると、その銘柄のニュースや業界情報に敏感になるので、それはそれでメリットがあるかなと。ルールは決めますが、一方で柔軟な姿勢もキープしておきたいですね。


未来の自分に仕送りする。配当金を育てる投資のすすめ

トウシル:最後に、これから投資を始める人や、まだ投資経験が浅い読者に向けてアドバイスをお願いします。


Rickyさん:まずは、増配株の魅力を知っていただきたいですね。繰り返しになりますが、高配当株と増配株は別物です。今の利回りだけではなく、1株当たり配当金(DPS)が今後も増えていきそうかを見てほしいと思います。


 そしてもう一つ、「総資産額という数字を追い求めすぎないこと」です。


トウシル:資産がいくらあるか、というのは皆さん一番気になるところだと思いますが…。


Rickyさん:資産額というのは、結局のところ「その時の株価」次第でいくらでも上下してしまいます。そして、株価の動きや暴落のタイミングを完璧に予測し、コントロールすることは不可能です。予測できない不確実な数字に一喜一憂して振り回されるのは、精神衛生上よくありません。


 一方で、企業から支払われる配当金や増配の継続性は、企業の実績や配当方針に基づいて判断しやすい部分があります。株価に比べれば見通しを立てやすく、銘柄選びを通じて自分の投資方針に反映しやすい領域だと考えています。


 増配が期待できる銘柄をコツコツと買い集めていけば、コントロールできない株価がどう動いても、自分の元に届く配当金は右肩上がりで増えていく可能性があります。じっくり長期で取り組めば、これほど夢が膨らむ投資はありません。


トウシル:とても夢があるお話です!一方、「もう自分は40代、50代だから、今から長期投資を始めても遅いのではないか」と躊躇(ちゅうちょ)してしまう人もいるかもしれません。


Rickyさん:まったく遅くありませんよ! 今は人生100年時代ですからね。実は私の祖母は60歳を過ぎてからスキーや絵画など、ありとあらゆる新しい趣味を始めたんです。そこから30年以上、90代になっても人生を全力で楽しんでいました。その姿を見ていたので、私の中に「何歳から始めても遅すぎることはない」という強い確信があるんです。


 40代、50代、あるいは60代からだって、一歩を踏み出せば、これからの人生を支える強固な「配当金の柱」は十分に育てられます。ぜひ未来の自分に仕送りをするような気持ちで、増配株投資を楽しんでください!


トウシル:激動の就職氷河期や数々の苦難を乗り越え、あきらめずに数字に向き合い、資産を築き上げられたRickyさんの言葉だからこその勇気をいただけました! 本日は本当に貴重なお話をありがとうございました!


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(トウシル編集チーム)

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