米国とイランの戦闘終結合意報道でドル円は円高に動くも159円台後半でストップ。市場は楽観ムードですが、まだ先行きには不透明感も残ります。

日銀は0.25%の利上げを決定しましたが、追加利上げのペースは不透明です。今後は19日の署名式以降、ホルムズ海峡の開放状況や原油価格、そして各国中銀の要人がどう反応するのかに注目です。


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戦闘終結合意で、ドル売り株高進行。日銀利上げ決定の背景

 今週明け早朝、米国とイランが戦闘終結に合意との報道でドル売り、原油安、株高となりました。ドル円は160円台前半から円高に動きましたが、159円台後半でとどまりました。しかし、原油は80ドル台、日経平均株価は6万9,000円台に上昇しました。


 株は相変わらずイラン情勢に楽観的でしたが、19日の署名式の後、濃縮ウランの取り扱いとホルムズ海峡の完全自由航行がどのように進展するのか、まだ先行き不透明部分が多い状況となっています。ウラン濃縮など核問題は最終合意に向け60日間交渉する内容となっているようです。


 また、レバノンを含む全ての戦線で即時かつ恒久的に戦闘停止という内容がありますが、イスラエルのネタニヤフ首相はレバノンから撤退するつもりはないと明言している中で、無事19日の署名式を終えることができるのかどうかも懸念されます。


 そして19日までには15~16日に開催された日本銀行の金融政策決定会合の他にも、16~17日に米連邦公開市場委員会(FOMC)が開催予定ですが、署名式を終えるまで、ホルムズ海峡が開放されるまで、相場はこれら金融会合の結果に対して動きづらい状況となる可能性があります。


 15~16日の日銀金融政策決定会合は、植田和男総裁が入院のため氷見野良三副総裁が議長を代行し、会合後の記者会見は内田真一副総裁が対応することとなりました。決定会合では昨年12月以来、4会合ぶりに0.25%の利上げを決定し、政策金利は0.75%程度から1.0%程度と約31年ぶりの水準となりました。


 中東情勢の混乱で生じた原油価格の上昇が幅広い品目の値上げにつながり、物価が想定より上昇するリスクを警戒する必要があると判断したとのことです。


 そして国債の買い入れ額の減額を停止し、2027年4月以降、月2兆円程度の買い入れを続け、段階的な減額は行わないことを決定しました。これらの決定はほぼ予想通りであったため、ドル円はわずかに円高に動きましたがほとんど反応しませんでした。


 注目された記者会見でも内田副総裁は利上げの背景について、まず、足元の景気については、「経済が大きく下振れするリスクはひところよりも低下している」と述べ、物価については「企業間取引での価格転嫁がやや速いスピードで進んでいる」と指摘し、「(一時的な変動要因を除いた)基調的な物価上昇率が2%の物価目標を超えて上振れするリスクに配慮する必要がある。」と今回利上げした理由を説明しています。


 内田副総裁は「利上げを続けて基調的な物価上昇率を2%に着地させる」と強調しましたが、具体的な追加利上げのタイミングやペースには踏み込みませんでした。これらの発言を受けて早期利上げ期待が後退し、ドル円は160円台半ばの円安となりました。日経平均はドル円が安定した動きとなったことから、一時7万円台に上昇しました。


ホルムズ海峡、原油価格、中央銀行の発言に注目

 16~17日のFOMCでは政策金利据え置きとの見方が大勢ですが、年内利上げについてどの程度タカ派的な内容になるのでしょうか。声明文の緩和バイアスの文言が削除されて中立色を出すのかどうか、あるいはインフレリスクを警戒する文言が加味されるのかどうか注目です。


 そして経済金利見通しでは、3月の金利見通しの年内利下げ1回、来年1回の利下げ見通しがゼロになるのか、ゼロになるだけでなく、年内1回利上げになるところまでタカ派的見通しになるのかどうか注目です。


 また、3月の2026年物価見通しは2.7%の上方修正、成長率も2.4%の上方修正となり、スタグフレーション懸念が和らぐ見通しとなりましたが、今回、物価の上方修正はあっても成長率を維持するのかどうか注目したいと思います。成長率が下方修正されると、スタグフレーション懸念が再発するため注意が必要です(米国1-3月期国内総生産(GDP):+1.6%)。


 また、米連邦準備制度理事会(FRB)新議長ウォーシュ氏の初陣ですので、いきなりウォーシュ色を出すのかどうかも注目です。フォワードガイダンスや政策スタンスに変化が出るのかどうか注目したいと思います。


 また、ウォーシュ新議長は金利見通しのドットチャートについても変更や廃止などを主張しているとのことであり、これまで市場が注目していたドットチャートの取り扱いがどのようになるのか注目です。


 そして14日の合意報道から原油は低下しており、16日にはウエスト・テキサス・インターミディエート(WTI)が70ドル台まで下がっています。原油の低下によって先行きのインフレ懸念が後退し、市場ではFRBの利上げ観測が後退しています。FOMCでもウォーシュ新議長が主導しタカ派色がやや後退するシナリオも想定しておきたいと思います。


 先週11日の欧州中央銀行(ECB)理事会で、ECBは原油高によるインフレを警戒し、予防的措置として約3年ぶりに利上げを決定しました。経済見通しでは2026年の物価上昇率を3月時点から0.4%引き上げて3.0%、成長率は0.1%引き下げて0.8%としました。


 14日の合意前の利上げ判断でしたが、急速に原油が低下しているため、インフレリスクは後退し、逆に利上げが景気に水を差す可能性もあります。ユーロや欧州の株や債券動向に注意したいと思います。ECBは勇み足の動きが時々あり、今回もそうならなければよいのですが…。


 日銀は、14日の合意報道後の利上げ判断ですが、経済は下振れリスクが低下しており、それよりも物価の上振れリスクに配慮したいとインフレ抑制に重心を移しました。


 内田副総裁は為替相場について、「為替相場自体は日銀の目標ではないが、物価に影響を及ぼす重要な要因の一つになっている」「為替の変動が物価に影響を及ぼしやすくなっている」との認識を示しました。海外の中央銀行が利上げに傾き始めている中、日銀の政策が遅れると、円安が加速し、国内物価が上昇するリスクが高まります。


 内田副総裁はこの円安による物価上昇の構図を認識しており、「ビハインド・ザ・カーブに陥ることがないように適切に運営していきたい」と述べていますが、市場はビハインド・ザ・カーブリスクを懸念し始めており、半年に1度の利上げペースでは円安へのブレーキ役にはなっても円高に反転し、物価を低下させることにはつながらないと市場はみているようです。


 もし、海外の中央銀行の利上げペースが加速し、円安が進めば日銀も前倒しで利上げに踏み込まざるを得ない状況になるかもしれません。日銀がじりじりと追い詰められているような環境になってくるかもしれません。


 しかし、19日の署名式以降、ホルムズ海峡が開放され、低下した原油が再び上昇しなければ、日銀以外の海外中央銀行のタカ派姿勢は和らぐかもしれません。そして利上げ後もまだ金利水準は「緩和的」との見方を維持している日銀の追加利上げ姿勢が変わらなければ、海外投資家の円売りは弱まり、円高反転の動きがみられるかもしれません。


 19日以降のホルムズ海峡の開放度合い、原油価格の動き、それらの動きを受けた各国中央銀行要人からの発言に注目したいと思います。


(ハッサク)

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