今週から2回にわたり「孫子の兵法に学ぶ株式投資術」を掲載します。私は歴史オタクで、昔から「孫子の兵法」をじっくり読み込んでいました。
クイズ第1問
株価チャートには、投資家の動きを知るための重要な情報がたくさん含まれています。その見方を学ぶのが「テクニカル分析」です。
株価チャートは、買いと売りの「戦いの場」と見ることもできます。どちらが勝つか予想するのに、孫子の兵法の考えが役立ちます。
チャートを見る時、株価の動きだけでなく、出来高(売買高)の変化も見る必要があります。
売買高は、「戦闘中の兵隊の数」と見ることもできます。売買高が増えることは、戦争であれば「戦いが激しくなる」ことを意味します。売買高が減るのは、戦いが徐々に終息しつつあることを意味します。
ここから、クイズを2問出します。
【第1問】
以下、A社を100株保有しているとします。
ここから、売り・買い増し・様子見(HOLD)、どうしたらよいでしょうか?
株価チャートを見て、判断してください。
風林火山を学ぶ
正解をお知らせする前に、一つ、孫子の教えを学びましょう。武田信玄が旗印に用いたことで有名になった「風林火山」です。
「その疾(はや)きこと風のごとく、その静かなること林のごとく、侵掠(しんりゃく)すること火のごとく、動かざること山のごとし」
武田信玄の旗印として有名なこの言葉ですが、多くの人は、武田信玄の軍勢が「風のように速く火のように攻めたてる」イメージを持つと思います。確かに、それも大切です。
ただ、私はこの教えのより重要なポイントは、機が熟すまで「林のように静かに山のように動かない」ことにあるとみています。どんなに挑発されても、勝つための条件が整っていないうちは、ただただじっと息を潜めています。まるで戦う気がないか、あるいは戦う力がないかのようにおとなしくしています。
そして、機が熟したとみた時に「風のように火のように攻めたてる」のです。その激しいコントラストが勝利を呼び寄せます。この考えは、株のトレードでも重要です。
第1問正解
ここは「様子見」が良いと思います。
株価チャートを見ても、さらに上がるか下がるか、まったく分かりません。勝算がないまま戦いに入るべきではありません。
<再掲:A社チャート>
株価が1,000円から1,300円まで上がる間は、売買高が増加しています。
ところが、そこから先は、売買高が減少、徐々に上値が重くなっています。好材料は既に織り込み済みで、材料不足で大きくは動けなくなっていると思われます。もう少し様子見して、どう動くか観察した方がいいと思います。
第1問で「売り」を選んだ方、必ずしも誤りとは言えません。「高値圏で売買高が減少」しているので下がると予想したと思います。その見方も悪くはありません。ただ、株価が高値からまったく下がっていないので、売るのは早すぎると私は思います。
第2問
それでは第2問です。以下の2社の株を保有しているとします。売り、買い増し、様子見のうちどうしたらよいでしょうか?
【第2問】
B社C社はどちらも、第1問に登場したA社の「その後」のシナリオです。A社は6カ月のチャートでしたが、B社C社は1年のチャートです。
B社C社はずっと同じように動いてきましたが、最後の1週間で異なる動きとなりました。
さて、次の一手、どうしますか?
孫子の視点でチャートを眺める
株価チャートは買い手と売り手が戦う場だと思ってください。あなた自身が、「買い手の軍勢を率いて、売り手と戦っている」ことをイメージしてみましょう。
その上で、A社チャートを、もう一度、見てください。
【1】当初、売買高が増加しながら、株価上昇が続く
当初、あなたが率いる買い手が優勢で、売り手軍勢を次々と撃破して、進撃を続けていました。敵国に入って進むうちに敵軍が増えてきましたが、次々と駆けつける援軍によって撃破され進みました。
【2】高値圏で徐々に上値が重くなる。売買高は少しずつ減少
敵軍を次々と撃破したことにより、新たに立ち向かってくる軍勢は少なくなってきました。ただし、奥地に入るにつれ、援軍や物資・食料の補給が滞るようになったため、これ以上の進撃はできなくなっていました。援軍が来るという話もありますが、いつになるか分かりません。
さて、以上が、孫子の兵法の視点で見たA社チャートの解釈です。
第2問正解
B社は「売り」。C社は「買い」。
B社チャートを見てください。
織田信長は1570年、あと一歩で敵対する朝倉氏を滅ぼす寸前まで追いつめた時、浅井長政の裏切りを知ります。朝倉・浅井に挟み撃ちされる絶体絶命のピンチとなりました。
ところが、信長は、瞬時に決断して全力で逃げ出しました。「金ヶ崎の退き口(のきぐち)」として知られる撤退戦です。このピンチで致命的なダメージを負わずに済んだおかげで、後年、朝倉・浅井を滅ぼすことができたといえます。
続いて、C社を見てください。
風林火山の教えに従う
A社のチャートを見ていても、今後の株価についてのヒントは得られません。こんな時は、動かずにじっと辛抱すべきです。勝算がないまま動くのは、やめましょう。
一方でB社、C社のチャートは均衡が崩れて、大きな流れが出つつある様子を示しています。こんな時は、すぐ決断して動きましょう。
「林のように山のように」ふるまっていて、突然「風のように火のように」動くことができれば、「百戦するとも危うからず」です。
テクニカル・ファンダメンタルズ分析を詳しく勉強したい方へ
最後に、株式投資を書籍でしっかり勉強したい方に、私の著書を紹介します。ダイヤモンド社より、株価チャートの読み方をトレーニングする「株トレ」(黄色の本)と、決算書の見方など学ぶ「株トレ ファンダメンタルズ編」(水色の本)が出版されています。どちらも一問一答形式で株式投資の基礎を学ぶ内容です。
(窪田 真之)

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