これまで軍用機、特に戦闘機や攻撃機には、敵からの視認性や被発見性の低下を目的とした、様々な迷彩塗装が施されてきました。目視による発見や識別を困難にするために様々な塗装スキームが考案されてきたのです。
F-22A「ラプター」やF-35「ライトニングII」に代表される第5世代機は「ステルス戦闘機」とも呼ばれ、設計段階からレーダー反射を極限まで低減する構造を採用していることを特徴としていますが、この低反射性をより高めるため、塗装を含む表面処理にも工夫がなされています。
塗料の中にはレーダー波が持つエネルギーを吸収して熱に変換するカルボニル鉄粉など様々な物質が含まれています。ただ、レーダー波を熱に変えるだけだと、今度は赤外線探知センサーに捉えられてしまうため、この熱を塗装の下層に取り込んで、内部でゆっくり、均質に発散させるようになっています。ステルス機のシンプルに見える塗装とその下には、レーダーの目を欺くのに特化した分子レベルの工夫が詰まっているのです。
ステルスを追究しつつ、アメリカとは逆を行くロシアレーダーに発見されないことを最重視するステルス機ですが、有視界戦闘(WVR)や高高度での視認性の低減も依然として重要です。ステルス機の多くがグレー系の塗装になっていますが、これは電波吸収塗料自体がグレー系なので、素材の特性を活用して低視認性を追求しているとも言えます。グレーは多くの場面で、背景の明暗に溶け込みやすい色として機能しているのです。
ところが、ロシアの第5世代戦闘機、Su-57「フェロン」の映像などを見ると、ピクセル状のデジタル迷彩や幾何学的スプリンター迷彩が認められます。ステルス機の性能にはあまり馴染まないような塗装ですが、これはロシア空軍にとっては合理的な考えに基づいています。
ロシア空軍では、第5世代機同士の空戦であっても、最終的には目視主体の近接格闘戦にもつれ込む可能性を見越しています。実際、Su-57を開発したスホーイ設計局も、その迷彩パターンが、近接空戦時に機体の輪郭を誤認させる効果を狙ったものと認めています。
また現代の偵察衛星や高高度偵察ポッド、UAVは、可視光や赤外線画像をAIなどが解析し、地上駐機中の航空機を自動的に検出・識別する能力を備えています。そのため視覚的な欺瞞を目的とした迷彩は、人間の目だけでなく、こうした機械視覚を欺く手段としても現在なお研究されているのです。
ステルス性と低視認性を両立するグレー迷彩もちろん、アメリカ軍もF-22やF-35で近接空戦の訓練を実施しており、第5世代機にもドッグファイトの可能性を認めています。ただしそれは有視界外戦闘で解決しなかった場合に発生する、望ましくない交戦形態という位置づけです。したがって、ステルス機にはロシア機のような迷彩塗装のスキームを導入していません。
ただレーダー波吸収素材である下地層(ブート層)と、その上に追加で施す上塗り塗装(トップコート)が含有するレーダー吸収性を帯びたカーボン系素材の地色が、結果として低視認性を生むグレー系の配色となっているのです。
なお、もう一つの第5世代戦闘機開発国である中国空軍では、2020年度に発出した『空軍航空機の塗装および標識の塗装に関する規定』の中で、新規生産の戦闘機には低視認塗装を徹底することと厳命しています。実際、航空ショーで飛行展示される機体には、機体輪郭を分断するような濃淡の迷彩パターンが確認できます。
ロシアのSu-57ほどその目的を明らかにはしていませんが、ほぼ均一なグレーを採るアメリカ機と、明瞭な変形迷彩のロシア機の中間的な考えに立つと推測されます。ただし、あらゆる点でアメリカへの対抗を剥き出しにしている中国の現状を考えると、第5世代機の塗装分野でも、新しいスキームに基づく意外な発見をしてくる可能性は無視できません。

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