7月19日、大阪。バレーボールネーションズリーグ(VNL)予選ラウンド最終戦、日本は南米のアルゼンチンをセットカウント3-0とストレートで難なく下した。

怒涛の12連勝達成だ。

「最高でーす!」

 試合後、ヒーローインタビューで心境を聞かれた髙橋藍(24歳)は、2度、3度と明るい声で同じセリフを繰り返している。満員の会場で4本のサービスエースを決め、会心の試合だった。予選ラウンド1位での決勝ラウンド進出も決めており、文句のつけようがない結果だ。

「最高でーす!」

 髙橋はさらに声を張り上げた。会場は祝福ムードが漂った。ただ、本当の意味での"最高の景色"を見られるのはこれからだ。

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 VNL日本ラウンドの髙橋はイタリア、カナダ、ベルギー、そしてアルゼンチンと全試合に出場している。

 ハイライトはやはりパリ五輪で苦杯をなめた強豪イタリア戦だった。髙橋は両軍を通じて最多の26得点を記録した。しぶといイタリアが盛り返そうとするたびに、その流れを断ち切った。頼もしい姿は2年間の成長の証だ。

 翌日のカナダ戦も髙橋は先発したが、明らかにイタリア戦の疲労をひきずっていた。0-2とリードされたあと、代わりに出た選手たちの活躍を見届けることになった。

「チームの勝利が最優先で、全員がどう貢献していくかというところで、代わった選手が活躍したのは、チームの強さと言えるでしょう」

 髙橋はそう言って、3-2での逆転勝利を喜び、フォア・ザ・チームを強調した。ターンオーバーで戦うのは折り込み済みだろうが、日本を背負うエースは、厳しくプレーに向き合うことも忘れていなかった。

「自分はもっとプレーしたかったですし、そこで力を出しきれなかったのは、もったいなかったですね。やっぱり、プレーを続けることで成長はできるので。個人的には夜遅くの試合で(リカバリーが)しんどいのはあるんですが、こういうことはあることだし、言い訳はできない。もっといい打ち方があったし、もっとできることはあったと思います」

 世界一を取るためには、妥協はできない。

【「サーブで難しい状況を打開する」】

 続くベルギー戦、髙橋はリリーフサーバーとして3-0の勝利に貢献した。1セット目には、エースで25点目を奪い、胆力を示している。その後もサーブ効果率は20%と高く、それは決して簡単なことではない。

 そして"勝負の天才"髙橋の真価が出たのが、先発に戻ったアルゼンチン戦だろう。

アルゼンチンは地力のあるチームで、試合のなかで点差を詰めてくる瞬間があった。そのたびに髙橋のスパイク、サーブが輝いている。

 1セット目、12-11から髙橋のスパイクを皮切りに、自身のサーブで崩してバックアタックでボールを叩きつけ、ショートサーブでエースを奪い取るなどして、16?11と引き離した。さらに2セット目も、12-12から空中で半身になりながら得点を決めると、自ら連続サービスエースを記録し、15-12とリードを広げたのだ。

――勝負の分かれ目を逃さず、サーブは圧巻でした。

 そう話を向けると、髙橋は少し顔を綻ばせて、こう答えた。

「難しい状況を打開できるのがサーブだと思っています。しんどい状況でこそ、エースを取ると、チームがすごくラクになるというか、ほっとする感じはあるので。自分としては、サーブは日本が勝っていくためには重要なポイントのひとつだと思っています。"大事な状況でこそ、サーブでチームを救える"というのを意識してやっていました」

 SVリーグのサントリーサンバーズ大阪での2シーズン、髙橋は目に見えてサーブを進化させてきた。

 1年目、球筋が読めないショートサーブは相手を確実に崩し、チームのチャンピオンシップ優勝に貢献。2年目はショートサーブにスパイクサーブを織り混ぜ、エースも増えた。

そして最近はスパイクサーブの強度が増し、一撃必殺感が醸し出されつつある。体脂肪を落とし、動きにキレが出て、スイングスピードも速くなり、柔も剛も身につけた。

 今回のVNLでは、予選ラウンド終了段階でのサーブポイント数は21点で、世界1位だ。

「日本はパワーでは世界に劣るところはありますが、サーブは相手に邪魔されない。やっぱり、日本が勝ってくためには、エースも含めてサーブから崩していくのは必要かなって。ブロックディフェンスの強みを生かすためにも、"まずはサーブで"というところが、五輪でのメダルを考えると大事になってくるのかなと思います」

 野心的に語る髙橋は、武器を磨き続ける。7月29日からのVNL決勝ラウンド、準々決勝は開催国の中国と対戦となる。メダル、優勝、さらにロス五輪出場をかけたアジア選手権と勝負は続く。

「結局、勝つか負けるか。勝ちにこだわって戦っていくことが、結果につながると思っています。チームとして勝つポイントを逃さずに戦えるか。今は"その1点"を取りきれていると思うし、最後はそこの取り合いで、取ったほうが勝つので」

 ロス五輪に向け、髙橋は腹を括る。

その勝負勘は人並みはずれており、大きな舞台でこそ発揮される。本当の"最高の景色"はこれから目の前に広がるはずだ。

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