プレミアリーグ2026-27シーズン開幕
気になる日本人プレーヤーの現在地(前編)

 2026-27シーズンのプレミアリーグが、8月21日に幕を開ける。

 今夏も鈴木彩艶(パルマ/8月14日時点。

以下同)や中村敬斗(スタッド・ランス)らの移籍話が市場をにぎわせる一方、現時点でイングランドの新天地をつかんだのは、冨安健洋(アヤックス→クリスタル・パレス)、前田大然(セルティック→イプスウィッチ)、守田英正(スポルティング→ハル・シティ)の3人だ。

 完全復活を期す冨安、昇格組の命運を背負う前田、念願の移籍となった守田──。それぞれ異なる立場で世界最高峰の舞台に挑む3人は、来たる新シーズンにどんな景色を見せてくれるのか。期待と課題が交錯するプレミアリーグ開幕直前の現在地を追う。

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冨安健洋、前田大然、守田英正......プレミアリーグ復帰&...の画像はこちら >>
 この夏もプレミアリーグの移籍市場において、多くの日本人選手の名前が飛び交っている。

 パリ・サンジェルマン移籍が決定的になったとはいえ、アストン・ヴィラが鈴木彩艶に興味を示していたことは間違いない。中村敬斗の周辺からはフラムやエバートンの名前が聞こえてきた。そして日本時間の8月5日深夜、うれしいニュースが飛び込んできた。

「冨安健洋がクリスタル・パレスと契約」

 2日後のクラブHPは、ジャック・ヒギンズの人気冒険小説、そしてクリスタル・パレスの愛称になぞらえ、『The Eagle Has Landed』(鷲は舞い降りた)と、日本代表DFの加入を歓迎した。鎌田大地と共演するクラブ公式のPR動画も微笑ましい。昨シーズンのカンファレンスリーグ王者、クリスタル・パレスは冨安の加入を大々的に報じている。

 冨安は今夏からトレーニングに参加していた。

フリーエージェントにはよくあるケースだ。しかし、冨安は7月31日のプレシーズンマッチ、アル・ウラー戦で30分ほどプレーしている。ピエール・サージュ新監督をはじめとする首脳陣が「使える」と判断したからに違いない。単なる練習生ではなかった。

【冨安は2年ぶりのプレミアリーグ】

 負傷さえしなければ、冨安は世界でもトップランクのDFである。3バック、4バックを難なくこなし、中央でもサイドでも常に及第点以上のパフォーマンスを披露する。対人に強く、柔軟かつ迅速な状況判断も各方面で高く評価されてきた。

 アーセナルで同じ釜の飯を食ったウィリアン・サリバは「フットボールに取り組む姿勢は全選手が見習うべき」とリスペクトし、ガブリエウ・マガリャンイスは「トミがいるだけで安心する」と信頼感を口にしていた。冨安の実力を測るうえでベストといって差し支えない証言である。

 当然、クリスタル・パレスでも主力のひとりに数えられる。マクサンス・ラクロワがチェルシーに引き抜かれたため、最終ラインのリーダーとしてのタスクも求められる。望むところだ。

 現地8月22日15時、クリスタル・パレスはエバートンとのアウェーゲームで2026-27シーズンが開幕する。

冨安にとって2024年10月5日のサウサンプトン戦以来(当時アーセナル所属)、およそ2年ぶりとなるプレミアリーグの舞台だ。

 背番号は17に決まった。ピンチを未然に防ぎ、両足で楔(くさび)のパスを次々に配するだろう。熱狂するパレスのサポーターと完全復活の1ページを記憶に留めよう。そしてなにより、1シーズンを無事に終えることを──。

 昨シーズンこそサンダーランドとリーズが残留したものの、近年のプレミアリーグはチャンピオンシップから昇格したチームが屈辱のUターンを余儀なくされている。2023-24シーズンはルートン、バーンリー、シェフィールド・ユナイテッド、2024-25シーズンはレスター、イプスウィッチ、サウサンプトンの全3チームが、プレミアリーグの厚く高い壁に弾き返された。

 敗因はいろいろ思い浮かぶ。チャンピオンシップで通用したポゼッションスタイルが無効化されたり、経済力であったり、選手層を含めた組織の体力が足りなかったり......。

 今シーズンのイプスウィッチも苦戦は免れない。昇格の原動力となった安定感も、プレミアリーグでは十分な武器にならない可能性がある。「家族との時間を大切にしたい」と、昇格直後に退任したキーラン・マッケンナ前監督が志向したマイボールを大切にするフットボールと異なり、ギャリー・オニール新監督はカウンターが主武器だ。

昨シーズンと違うスタイルに選手は戸惑うかもしれない。

【前田のプレースタイルは好かれる】

 だが、試合開始から後半追加タイムまで相手守備陣にプレッシャーをかけ続ける前田大然なら、そんなチームにひと筋の光明をもたらすのではないだろうか。

 対戦相手のパスが正確性を欠いたり、スピードが鈍ったりすると、多少の距離があってもプレスを発動。「ここまでは追ってこないだろう」とたかをくくっていたGKやDFが突如として現れる前田に慌て、ミスを犯すシーンはこれまで何度も見てきた。

 昨シーズンは公式戦54試合で17得点10アシスト。所属していたセルティックはスコティッシュリーグ5連覇を達成したが、前田のスタッツは格別だった。

 もちろん、スコットランドとプレミアリーグではランクが違う。新シーズンは自陣ゴール前の危険なエリアに押し込まれるだろう。それでも、前田がボールを奪った瞬間にイプスウィッチのスイッチが入り、ロングカウンターで完結させるというシーンも十分にありうる。

 また、彼のようなハードワーカーはサポーターに好かれる。2015-16シーズン、レスターに奇跡のリーグ優勝をもたらした岡崎慎司は、献身的な姿勢でスタンディングオベーションを勝ち取った。前田が万雷の拍手に迎えられる日々が、きっともうすぐやって来る。

 そしてもうひとり、長年の夢をついに実らせた男がいる。

守田英正がスポルティングからハル・シティに移籍したのだ。世界最強のプレミアリーグで自らの力を試すことになる。

 この2~3年、守田は毎シーズンのように「プレミアリーグにチャレンジする」と言われていた。アストン・ヴィラ、エバートン、フラムなどの名前が挙がり、マンチェスター・ユナイテッドがルベン・アモリム(現・ミラン監督)を招聘した際には、「スポルティングから連れてくる選手のひとり」との噂も飛び交った。

 ただ、交渉は具体化しなかった。エージェントの交渉に問題があったのか、複雑な契約条項を提示するスポルティングの姿勢が邪魔をしたのか、市場が開くたびに守田の気持ちがないがしろにされているようにも映った。

【守田は冬の市場でステップアップも】

 だからこそ、ハル・シティへの移籍が決まった時、晴れやかな笑顔を見せたのだろう。「フリートランスファーとはいえ、31歳のMFを獲得する?」と報じた無礼なメディアもあったが、守田に対するリスペクトが微塵も感じられず、彼の心情を無視する非常識な反応でしかない。

 こうしたアンチは、プレミアリーグ開幕とともに恥をかくだろう。戦力的に乏しいハル・シティの現状をふまえると、守田は定位置を獲得する公算が非常に大きい。的確な状況判断に基づくポジショニングと、相手にペースを譲らないポゼッション技術により、瞬く間に首脳陣とサポーターの信頼を勝ち得るはずだ。

 前田が所属するイプスウィッチとともに、ハル・シティは降格の有力候補に挙げられている。

とはいえ、守田が攻守のバランスを整えさえすれば、残留に向けて活路を見いだせる。そして豊富な日本代表歴を持つ彼の危機察知能力と対人の強さが高く評価されれば、冬の市場でビッグクラブにステップアップというシナリオも考えられなくはない。

 復活の第一章が幕を開ける冨安、プレミアリーグ初挑戦ながら即座にフィットする予感が漂う前田と守田。彼ら3人はそれぞれのクラブで、重要なタスクを担う可能性が非常に高い。8月の月間MVPにノミネートされても不思議ではない実力者だ。

 興味深い2026-27シーズンのプレミアリーグ開幕が刻一刻と迫ってきた。

(つづく)

◆後編>>三笘薫のプレミアリーグ復帰はいつ? 全盛期のオーウェンも苦しんだ

粕谷秀樹●取材・文 text by Hideki Kasuya

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