セザール・サンパイオ ロングインタビュー/第4回(全4回)
現役引退後もサッカー界に深く関わっているセザール・サンパイオは、今年の北中米ワールドカップをどう見たのか。インタビューの最終回では、日本代表とブラジル代表について、見解を示した。
【遠藤と三笘の不在が響いた】
──今年開催されたワールドカップでは、ラウンド32で日本とブラジルが対戦しました。両国をよく知る元ブラジル代表選手であり、今は監督としての目線も持つセザール・サンパイオ氏に聞きます。まず、北中米ワールドカップでの日本の戦いぶりをどう見ましたか?
「僕は今回の日本代表を非常に気に入ったよ。戦い方が豊富で、一つひとつの完成度が高かった。正直に言って、常に日本代表を見てきたわけではない。でも、個々の選手たちのことはずっと見ているから、強い代表チームになっているだろうと想像していた」
──ワールドカップ前にじっくりと日本代表を見たのは、昨年10月のブラジル代表との親善試合ですよね。
「あれは素晴らしかったね。前半、ブラジルに試合をコントロールされて、2点を先行されたあと、後半に森保(一)監督が戦い方を変えて、20分ほどで3−2と逆転。日本にとってブラジルからの初勝利だったけど、日本人選手たちは信じていたんだと思う。それが可能だとね。逆にブラジルは、自分たちがミスをしたことにより、不安がチーム全体に伝染してしまった。日本はその状況を活かして、攻撃的なスタイルで勝利をつかんだ。
それについて、森保監督とも話したよ。
──北中米ワールドカップでのブラジル対日本戦はどう見ましたか?
「森保監督は3-4-3とも3-4-2-1とも取れるシステムで試合を始めたよね。ウイングが攻撃的にプレーし、日本が先制した。だが、後半に勢いを取り戻したブラジルに同点とされ、その後に複数の守備的な選手を投入した。その変更は理解するよ。でも結局、それをきっかけにブラジルをより攻撃的なエリアに誘い出してしまった。日本は再び攻めに転じることなく、逆転を許してしまった。
森保監督は重要なふたりの選手を失ったことにも苦しんだ。MFの遠藤(航)とFWの三笘(薫)はプレミアリーグでの経験も豊富な重要選手。彼らの不在は、こういう試合で大きく響くものだ。
大会中に、日本が高いレベルの相手と激戦を重ねながら成長している姿を確認した。それだけに、グループステージを突破したあとにすぐブラジルと対戦したのは、とても残念だった」
【ブラジルは能力を発揮できずに敗退】
──森保監督が長期間にわたって日本代表を指揮してきたことは、日本のメリットになっていたと思いますか?
「森保監督は素晴らしい仕事をしてきたよ。2018年からチームを率いているから、自分が求める役割にはどの選手を選べばいいかわかっているし、さまざまな局面ごとに主力選手たちに何ができるかもわかっている。そして選手たちも、自分たちの役割を非常によく理解している。
ワールドカップではそれが大きな違いになるし、そういう詳細を修正していくには時間が必要なんだ。グループステージでは、そうして培ってきた強みを見せていたよね。日本のサッカーはダイナミックだった。選手たちは運動量が非常に豊富で、技術的なクオリティも高い。流動性とテンポもいいね。そうしたプレースタイルに磨きがかかっていたと思う。
今や日本人選手たちは、欧州の主要リーグでも模範的な主力になっているし、選手たちがそこで得たものを日本代表に還元している」
──一方、今大会のブラジルはどうでしたか?
「ラウンド16のノルウェー戦で、ブラジルは能力を発揮できずに敗退した。ワールドカップでは、チャンスを逃してはいけない。ブルーノ・ギマランイスのPKやエンドリッキのシュート、それにヴィニシウス・ジュニオールにも先制するチャンスがあったけど、それらを活かせなかった。
相手エースの(アーリング・)ハーランドは、それまでの試合でもっといいプレーを見せていたが、あの日はそれほどでもなかった。なのに結局、2ゴールを決めさせてしまった。ノルウェーは1点を決めたあと、それほどプレッシャーをかけてこず、ブラジルに攻撃を仕掛けさせていた。そのうえで、数少ない機会に攻撃に転じて2点を奪ったんだ。これほど強い相手に対して、2点差を覆すのは難しいよ。ネイマールのPKで1点は返したけどね」
──ブラジルの問題は何だったのでしょうか。
「カルロ・アンチェロッティが監督に就任してからまだ1年、好不調のムラのある状態でワールドカップに突入した。先発の11人も決まっておらず、大会中にも多くの変更を加えながら対応していくことになった。ロドリゴやエステヴァンのような、重要なアタッカーの負傷による不在もカバーしきれていなかった。
でも、アンチェロッティ監督は長年、欧州のトップレベルで戦ってきた指揮官だし、その間もトップレベルのブラジル人選手たちを指導してきた。今後は2030年大会に向けて、より多くの時間を有効に使い、彼の信念に基づいた世代交代を進め、よりよい仕事をしてくれることを願っている」
【ダイスキ、アイシテル、ユウショウ(笑)】
──ブラジルと日本に贈りたい言葉はありますか?
「ブラジルは1994年、1998年、2002年のワールドカップ3大会連続で決勝進出し、そのうち2回で優勝した。それがどれほどすごいことだったのかをあらためて感じるよね。
僕は1998年大会に出場し、3ゴールを決めることができた。特に初戦のスコットランド戦で決めたワールドカップ初ゴールの時は、ヘディングしたボールがネットに収まった瞬間、走り回りたい、叫びたいとしか感じられなくて、どうしたらいいのかわからなかったよ(笑)。自分の魂が体から抜け出して、また戻ってきて我に返ったという感じで。そして貧しかった子どもの頃などが思い出された。ああいう時には、本当にそんなことが起きるんだなと、あとで思ったよ。走馬灯というのかな。
ブラジル代表にも日本代表にも、今大会でそんな歓喜を味わった選手たちがいる。その経験を大事にし、これからも頑張ってほしい。また次の世代からも、そうした経験をできる選手が生まれることを期待している。
日本のサッカーファンには、僕の好きな日本語で。サポーター ノ ミナサン、オヒサシブリ。ダイスキ。
(了)
第1回に戻る >>> 横浜フリューゲルスでの日々を振り返るセザール・サンパイオ「僕らが築いた友情は永遠のもの」
セザール・サンパイオ Carlos César Sampaio Campos
1968年3月31日生まれ、ブラジル・サンパウロ出身。現役時代は万能型のボランチとして活躍し、サントス、パルメイラスというブラジルの名門を経て、1995年に横浜フリューゲルスに加入した。同クラブ在籍中、1998年ワールドカップにブラジル代表のレギュラーとして出場し、準優勝に貢献。2002年に柏レイソルに入団、翌2003年からはサンフレッチェ広島でもプレーした。引退後はクラブ経営や指導者の職務を歴任し、大学で経営学なども学んでいる。
藤原清美●取材・文 text by Kiyomi Fujiwara

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