『フレンズ・オン・アイス2026』40歳を迎えてもなお、高橋...の画像はこちら >>

 8月27日、横浜。荒川静香がプロデュースするアイスショー『フレンズ・オン・アイス2026』の公開リハーサルが行なわれた。

トリノ五輪があった2006年からスタートし、今年で20回目という日本フィギュアスケートの歴史を紡いできたようなショーだ。トリノ五輪の金メダリストである荒川から、今年のミラノ五輪で、フィギュアスケート日本勢最多タイとなる4個目のメダルを勝ち取って現役を退いた坂本花織、そしてキッズスケーターまで、幅広い世代のスケーターが集っている。

 第一部は、鈴木明子がプロスケーターとしての円熟を見せ、仕草や表情で圧倒的なキュートさを咲かせていた。青木祐奈は今シーズンのショートプログラム『君の瞳に恋してる』を現役選手ならではの一瞬の爆発力で滑り、後半に会場を巻き込む引力を感じさせた。また、山下真瑚は憧れの荒川のイナバウアーを継承するように披露している。

 第二部、村元哉中の人形のプログラムは前回同様、不思議な魅力を放ち、異世界へ誘った。また、宮原知子は相変わらず静謐なスケーティングで、人生や物語を曲に乗せるように、『パリは燃えているか』の世界観を滑りきっている。そしてジェイソン・ブラウン、ステファン・ランビエルのスケートは珠玉で、まさに"永遠の一瞬"だ。

「それぞれのスケーターが今一番、輝く姿というのがあると思うので、それを楽しんでもらえたらって思っています」 

 座長である荒川が語るように、オープニングの『トゥーランドット』は彼女自身の金メダルの輝きにノスタルジーも滲んでいた。今しか味わえない氷上の陶酔。20年という時間を知るファンは、恍惚の空間を体験できるはずだ―――。

「(リハーサルで)オープニングを観ていたら、フラッシュバックを感じて」

 そう語ったのは、荒川と戦友であり、男子フィギュアの歴史を作ってきた高橋大輔(40歳)だ。

 高橋の実績をいちいち羅列するのは避けるが、アジア男子フィギュア初の世界一や五輪でのメダルを獲得しただけではない。一度は現役を引退しながらも、復帰後の全日本選手権2位で度肝を抜き、まさかのアイスダンス転向では村元哉中とのカップルで、わずか3年にして日本一に輝き、世界選手権では11位に入るなどカップル競技の人気を開拓。フィギュアを超越したスポーツ界の伝説だ。

「しーちゃん(荒川)の『トゥーランドット』(トリノ五輪のフリー)は何度も観てきているんですが......2006年からのいろんな思い出が湧き出てきて。きっと、お客さんもこんな気持ちになるんだろうなって思いました。(荒川とは)15歳で初めて会話を交わすようになったんですけど......今回、ショーでみんなとリンクで集まったとき、ふと月日を感じたんですよね。懐かしさというか、いろんなことあったんだなって急にエモくなっちゃって、"ありがとう"って感じました」

 そう語った高橋自身、第二部で万感の思いをこめてソロを滑っている。黒いシャツ、黒いパンツ、黒いスケート靴で、物憂げでけだるい律動のなか、ダンスで緩急をつけ、生きる強さのようなものを表現した。しっとりとした曲調に、激情を表現できるのは彼の真骨頂だが、革新も忘れていない。「AIで作った」という曲は、彼にしては珍しく歌詞が入ったプログラムだったが、『氷艶』シリーズなどで様々な表現を経験するなか、新たな境地に入ったということか。

「(最近は)カップルでのパフォーマンスが多かったので、ひとりでのパフォーマンスは不安な部分もあったんですが......今まではあまり歌詞が入った曲はやらなかったんですが、"歌詞で表現する"ということが、今になって、やっとしっくりくるようになってきたな、と滑ることができました。すごく新鮮で......ジャンプはしなかったですが、40歳になったからこそ、できる表現なのかなって思います」

 そう振り返った高橋は、表現者としての道をどんどん広げている。

画期的なアイスショー『滑走屋』では、積極的に若手スケーターたちを招き、細部までスケーティングにこだわる姿で啓発。彼自身の表現だけではなく、周りを巻き込んだフィギュアの発展に貢献している。今回の『フレンズ・オン・アイス』でも、子どもたちともグループナンバーを滑って、違う顔を見せた。

「自分は、キッズと一緒に滑るというのをやっていなくて......今回、滑らせてもらって、"お父さんってこんな気持ちなのか"って思いました(笑)。こんなに温かい気持ちでスケートを滑ったことはなかったかも、って。"いつか、何かを誰かに託す日が来るんだな"とか、未来の自分に思いを重ねながら、そんな日が来るかわからないですけど、そういうのを感じられて幸せです!」

 過去、現在、未来という時間の流れを、真夏のリンクで味わえる。フィギュアファンには極上のひとときだろう。『フレンズ・オン・アイス』は8月28日~30日の3日間、全6公演が行なわれる。

小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki

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