N国党「掲示板ジャック」めぐる名誉毀損訴訟で判決、インフルエンサー弁護士が「海外滞在で知らなかった」と主張も「不法行為に加担」と認定
弁護士の福永活也氏が、ジャーナリストの「選挙ウォッチャーちだい」こと石渡智大氏(以下「ちだい氏」)の記事で名誉を毀損されたとして損害賠償を求めた訴訟の控訴審で、東京高等裁判所(山田真紀裁判長)は24日、福永氏の控訴を棄却する判決を言い渡した。福永氏の請求を全面的に退けた一審・東京地方裁判所判決が支持された。

福永氏は政治団体「NHKから国民を守る党」(以下、N国党)やその設立者である立花孝志氏の訴訟代理人を務め、2024年7月の東京都知事選挙などに同党公認で立候補した経歴を持つ。
本訴訟は、ちだい氏がウェブサイト「note」に投稿した記事中の「自分たちが犯罪行為や不法行為を平然かつ盲目的に次々と行った結果の蓄積であり、」との表現が、福永氏の名誉権および名誉感情を侵害するとして提起された。福永氏は一審で50万円の賠償を求めたが、控訴審では請求額を100万円に拡張していた。

福永氏の「不法行為」を「事実」と認定

判決後の記者会見で、被告の選挙ウォッチャーちだい氏は、自身がN国党を「反社会的カルト集団」と呼んで追及してきた活動の文脈を説明。問題となったのは、2024年7月の東京都知事選で立花氏が主導した、選挙ポスター掲示板の枠を第三者に販売する「ポスター掲示板ジャック」である。
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選挙ウォッチャーちだい氏(24日 東京都千代田区/弁護士JPニュース編集部)

この「ポスター掲示板ジャック」とは、福永氏を含むN国党が擁立した24人の候補者のポスター掲示枠が、候補者自身とは無関係の広告や個人による投稿などに利用されたというもの。N国党は5000円~2万5000円程度の寄付を受け取り、候補者らの掲示枠にポスターを掲示させていた。候補者と無関係な動物の写真、性風俗店などのポスターが貼られ、物議を醸した。
そして、その中に、政治団体「みんなでつくる党」党首の大津綾香氏の大津の顔写真及び「大津綾香 お金を返してください」と記載されたポスターを掲載したほか、同ポスターに虚偽の事実を性的表現を用いて描いたアニメーション動画へ誘導するQRコードを貼り付けた(このことついては、判決文中において「大津の人格的利益を侵害するものということができるから不法行為に当たる」と明確に認定されている)。
一審の東京地裁判決(今年2月9日)は、ちだい氏の記事が福永氏の社会的評価を低下させることを認めつつも、その内容の「重要な部分が真実であった」として違法性を阻却し、請求を棄却した。
その理由中で、福永氏の不法行為として、都知事選におけるポスター枠の扱いを具体的に認定した。立花氏が大津氏を揶揄するポスター(本件大津ポスター)およびQRコードを掲示した行為は「大津の人格的利益を侵害するものということができるから不法行為に当たるといえる」と指摘。その上で、福永氏の関与について、以下のように判断した。

〈原告(福永氏)は、立花が本件ポスター枠を含む24のポスター枠に本件大津ポスターを掲示する行為、本件QRコードを貼り付ける行為に及んでいたことを容易に知り得たものと認められる。そうすると、そのような原告が、本件大津ポスターや本件QRコードが本件ポスター枠に掲示されたままの状態であることを許し、これを止めるよう求めなかったことは、立花による大津の人格的利益の侵害行為に加担したものとして、原告の不法行為であるということができる〉
福永氏は控訴審で、ポスターが掲示された当時、海外に滞在しており「知らなかった」と主張し、予見可能性も結果回避義務もなかったとして不法行為の成立を争った。

控訴審「確認を怠れば責任を免れない」

しかし、東京高裁はこの主張を退けた。まず、立花氏がSNS等で大々的にアピールしていたことなどから「容易に知り得たものと認められる」と一審の事実認定を追認した。
被告(被控訴人)代理人の石森雄一郎弁護士は、控訴審判決について、その注目すべき点を強調した。
N国党「掲示板ジャック」めぐる名誉毀損訴訟で判決、インフルエンサー弁護士が「海外滞在で知らなかった」と主張も「不法行為に加担」と認定

石森雄一郎弁護士(24日 東京都千代田区/弁護士JPニュース編集部)

石森弁護士:「控訴審判決では、ポスター掲示枠を貸した側の不法行為責任について、一審判決の論理からかなり進んだ判断を得られた。
その掲示板の枠を貸していた候補者に不法行為が成立するか否かが、主な争点だった。
判決では、ちだい氏が記事に『不法行為』と書いたのを、ちだい氏の意見としてではなく、『不法行為が成立する』という事実として認定している。このことは重大だ」
さらに控訴審判決は、一歩踏み込んだ判断を示した。福永氏が主張する通り「仮に」知らなかったとしても、福永氏は責任を免れないとしたのである。
〈仮に控訴人(福永氏)が本件ポスター枠に本件大津ポスターや本件QRコードが貼り付けられた事実を全く知らなかったとしても、控訴人において、選挙ポスター枠の利用を候補者以外の者に委ねるという、通常想定されていない方法で利用するのであって、本件ポスター枠の利用を立花や本件政治団体に委ねるに際して、どのようなポスターを掲示するのかを確認すべきであったといえるのに、その確認をしていなかったことになるから、立花による不法行為に加担したものとして、控訴人が不法行為責任を負うことは否定できないというべきである〉
石森弁護士は会見で、この「確認すべき義務」を裁判所が明確に認めたことの意義を強調した。
石森弁護士:「本来、選挙ポスター掲示板は候補者が自分自身のポスターを貼る場であるにもかかわらず、そこに無関係なポスターを貼るのだから、どういったポスターを貼るのか確認すべき義務があったとしている。にもかかわらず確認せず、そこに違法なポスターが貼られたならば、不法行為への加担になるということだ。

大津氏のポスターが貼られる前の段階で、違法性の高いポスターが貼られていることが話題になっていて、福永氏も自分で話題にしている」

大津綾香氏が福永弁護士を提訴、他の候補者にも責任追及の可能性

この高裁判決を受け、新たな動きがあった。石森弁護士は、大津綾香氏の代理人として、本判決当日に福永氏を相手取り330万円(損害金300万円、弁護士費用30万円)の支払いを損害賠償請求訴訟を東京地裁に提起し、受理されたことを報告した。
訴状においては、「請求の原因」として、福永氏が都知事選のポスター掲示枠を立花氏らに利用させることを許諾し、大津氏への「人身攻撃、人格攻撃としての名誉毀損行為」であるポスターの掲示を「漫然と放置し」、深刻な名誉毀損行為に加担したと主張している。
石森弁護士は、本判決を受け、福永氏以外のN国党関係候補者23名についても同様に、不法行為責任を問うことを検討していると表明した。
石森弁護士:「今回の控訴審判決の論理からすれば、24名の候補者全員が、大津氏への名誉毀損について、福永氏と同様の不法行為責任を負うことが読み取れる内容になっている。
東京高裁がこのような判断を行ったことは、当然、後の裁判でも尊重されることになると考えられる。
この問題に限らず、立花氏は選挙を使ってこういった不法行為を平然と行うが、N国党の関係者は、福永氏も含め、立花氏の影に隠れ、罪の意識が希薄なまま軽い気持ちで不法行為に加担していることが見受けられる。
そのような者に法的責任を取らせることにより、選挙を利用した犯罪行為を抑止し、適正な選挙が実現されるようにしなければならない」

福永氏コメント「帰国したら考える」

弁護士JPニュース編集部は福永氏に対し、以下の質問を送付し、コメントを求めた。
【判決内容について】
東京高裁は、本判決理由中において、以下のように判示しています。この判示について、どのようにお考えでしょうか。
「控訴人において、立花が本件ポスター枠に本件大津ポスターを掲示する行為や本件QRコードを貼り付ける行為に及んでいたことを容易に知り得たものと認められることは、原判決の説示の通り」
「仮に控訴人が(中略)事実をまったく知らなかったとしても、控訴人において、選挙ポスター枠の利用を候補者以外の者に委ねるという、通常想定されていない方法で利用するのであって、本件ポスター枠の利用を立花や本件政治団体に委ねるに際して、どのようなポスターを掲示するのか確認すべきであったといえるのに、その確認をしていなかったことになるから、立花の不法行為に加担したものとして、控訴人が不法行為責任を負うことは否定できない」
【上訴について】
①現時点で、控訴審判決について、上告または上告受理申立てをされる予定はありますでしょうか。
②上告される場合、上告理由は民事訴訟法312条1項または2項各号のどれについて、どのように主張することをお考えでしょうか。
③上告受理申立てをされる場合、民事訴訟法318条1項所定の事由について、どのように主張することをお考えでしょうか。

④もし、上告も上告受理申立てもなさらないご意向の場合、その理由をご教示いただけますでしょうか。
これに対し、福永氏は「ビバリーヒルズにいて、しばらく判決受領できないので、帰国したら考えます」(原文ママ)と回答している。


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