きょう、秋田県大仙市で「全国花火競技大会『大曲の花火』」が開催される。全国の花火師が技術を競う国内有数の花火大会で、約1万8000発が打ち上げられる予定だ。

また、北海道遠軽(えんがる)町では「コスモス開花宣言花火大会」が開かれ、約6000発の花火が夜空を彩る予定だ。
一方、花火大会に付き物なのが「迷惑駐車」の問題だ。
8月2日~3日に開催された新潟県長岡市の「長岡まつり大花火大会」では、会場から約3km離れた道の駅「ながおか花火館」の無料駐車場が、花火観覧を目的とした多数の車に長時間占拠されるという問題が起きていた。
駐車場は朝からほぼ満車となり、本来の「道の駅」の利用者が駐車できないほか、最大2時間待ちの渋滞も発生した。駐車していた車両の約95%が、県外ナンバーだったという。
当日、施設側は「2時間以内の駐車」を呼びかけていたが、事態は改善されなかった。報道によると、花火目的で利用した人の中には「みんなが駐車しているので自分も駐車していいと思った」などと話す人もいたという。
こうした行為は、施設の利用者や地域住民にとって明らかに迷惑といわざるを得ないが、ドライバーらに法的な責任を問うことはできないのだろうか。また、駐車場の管理者や土地所有者は、迷惑駐車に対してどのような対応をとれるのか。民法に詳しい荒川香遥(こうよう)弁護士(弁護士法人ダーウィン法律事務所代表)に聞いた。

「不法行為」や「住居侵入」の可能性

そもそも、路上駐車や私有地への無断駐車は、法律上の責任を問われる可能性がある行為だ。
たとえば、公道での路上駐車や駐車禁止場所への駐車は、道路交通法に違反するおそれがあり、警察による移動命令や車両移動の対象となることもある。
一方、私有地への無断駐車は、通常、それだけで犯罪になるわけではない。
ただし、土地所有者の権利を侵害する行為であることから、不法行為(民法709条)に基づき、駐車料金相当額などの損害賠償を請求される可能性がある。
また、私有地であっても、フェンス等で囲われた建物の敷地などに無断で立ち入った場合には、住居侵入等(刑法130条)の犯罪が成立するケースもある。
冒頭で紹介した「長岡まつり大花火大会」の事例では、「道の駅」の無料駐車場を長時間利用する人が多数いることが問題になった。
荒川弁護士は「『無料駐車場だから目的や時間を問わず自由に駐車できる』というわけではありません」と指摘する。
国土交通省による「道の駅」の登録要件では、休憩目的の利用者が無料で利用できる駐車場を備え、24時間利用可能とすることが求められている。
しかし、この要件は「利用者に無制限の長時間駐車を認めること」を意味するわけではない。国土交通省も、休憩目的以外の利用が一律に禁止されているわけではないものの、休憩目的の道路利用者の利用が妨げられないことが必要だとしている。
そのため、たとえば施設側が「2時間以内」「施設利用者に限る」など合理的な利用条件を明示している場合に、その条件を大幅に超えて駐車し続ければ、利用条件に反する行為となり得る。
今回の「長岡まつり大花火大会」でも、施設側が「2時間以内の駐車」を呼びかけていたにもかかわらず、花火観覧のために長時間駐車する人が相次ぎ、本来の利用者が駐車できない状況が生じていた。こうした事情は、駐車した側の法的責任を問う際に考慮される可能性がある。 
特に、駐車した側が注意を受けても駐車を続け、本来の利用者が利用できないなど具体的な損害が生じた場合には「不法行為」にあたり、駐車した側が損害賠償責任を負う可能性もある。
つまり、花火を見るための駐車は、直ちに犯罪になるわけではないものの、利用条件に反して長時間駐車を続けるなどして具体的な損害を生じさせた場合には、民事上の損害賠償責任を問われる可能性がある、ということだ。

駐車場の管理者が取れる対策は?

全国の花火大会では「道の駅」に限らず、ショッピングモールやスーパー、コンビニなどの商業施設の駐車場でも、花火を見るための長時間駐車が行われる可能性がある。
こうした迷惑駐車を防ぐため、駐車場の管理者は、事前に利用時間や利用目的を明示し、違反した車両に対して警告や移動を求めるなどの対策を取ることができる。
また、月極駐車場や住宅などの私有地で「関係者以外の駐車禁止」「無断駐車禁止」などの表示を設けているにもかかわらず、花火を見るために無断で駐車するケースも考えられる。
私有地については、土地の所有者は所有権に基づいて車両の撤去を求めることができる。また、駐車によって損害が発生していれば、駐車した側に損害賠償を請求することも可能である。
ただし、車の持ち主に無断でレッカー移動したり、車が出られないように封鎖したりする行為には注意が必要だ。私有地だからといって土地の所有者が自由に車両を移動・処分できるわけではなく、逆に持ち主から損害賠償を請求されるリスクがあるためだ。
「長期間放置されている車両については裁判をして強制執行を行うことになりますが、短時間の駐車に対しては強制撤去は実現できず、駐車料金相当額の賠償請求ができるにとどまるものになります」(荒川弁護士)
つまり、私有地への無断駐車については、土地所有者が自力で車両を撤去するのではなく、まずは駐車した側に警告や移動要求を行い、必要に応じて法的手続きを取ることが基本となる。

主催者の責任を問うことはできる?

もし花火大会が原因で迷惑駐車の被害を受けた場合、土地所有者は、主催者に責任を問うこともできるのだろうか。
荒川弁護士は「現実的には、主催者に責任を問うことは難しいでしょう」と語る。
「主催者に損害賠償を求めるには、原則として、『主催者に注意義務違反があり、その違反によって迷惑駐車による損害が発生した』という因果関係を立証する必要があります。
そして、単に『花火大会を開催した結果、多くの車が来た』というだけであれば、無断駐車を実際に行ったたのは個々の運転者であることから、無断駐車によって生じた損害について、主催者の行為(花火大会の開催)との因果関係まで認められる可能性は低いといえます。
ただし、主催者が特定の私有地への駐車を案内していた場合や、深刻な迷惑駐車が繰り返されていることを把握しながら具体的に必要な対策を怠ったと評価できる事情がある場合には、主催者の責任が問題となる余地もあります」(荒川弁護士)
花火大会は、多くの人が楽しみにする一大イベントである一方、開催地の周辺では、交通渋滞やごみ、騒音、迷惑駐車など、さまざまな問題が生じることもある。

迷惑駐車については、一定の場合に法的責任を問うことができるものの、すべての迷惑行為を法律だけで解決できるわけではない。だからこそ、花火大会を楽しむ側にも、周辺の施設や地域住民への影響を考え、ルールやマナーを守ることが求められる。
「みんながやっているから自分も」と考えるのではなく、一人ひとりが周囲への配慮を心がけることが、花火大会を地域にとってより良いイベントにしていくことにつながるだろう。


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