2026年上期のTOB(株式公開買い付け、届け出ベース)は55件と前年を13件下回り、上期として3年ぶりに減少した。ただ、前年比2割近い落ち込みとはいえ、年間トータルで過去最多の136件を記録した前年に次ぐペースで推移しており、水準そのものは依然高い。
55件中、投資ファンド関与は15件
1~6月の上期中、対象企業の経営陣が反対する敵対的TOBと買付予定数に応募が届かずTOBが不成立となったのが各1件。下期に向けて買収合戦に突入しそうな雲行きの案件もある。
各地の管轄財務局にTOB開始の届け出(公開買付届出書)があった件数をM&A Onlineが集計した。
上期の全55件を目的別にみると、子会社化・非公開化34件、MBO(経営陣による買収)10件、親子上場の解消5件、持ち分法適用関連会社化2件、その他(純投資など)4件。
このうち投資ファンドが関与する案件は15件を数え、全体の4分の1超を占めた。内訳は国内ファンド6件、海外ファンド9件だった。国内ファンドでは半数の3件で商社系(三菱商事系2件、丸紅系1件)がかかわった。
豊田織機の非公開化、総額5.9兆円に
最大案件はトヨタ自動車グループによる豊田自動織機の非公開化。TOBは1月半ばから3月末にかけて行われ、買付代金は最大4兆6632億円。これに豊田織機による自己株取得分を合わせた一連の買収総額は5兆9200億円に上り、日本企業同士の買収として最大となった。
トヨタの源流企業である豊田織機の非公開化が発表されたのは昨年6月。その時点で提示した買付価格は1株1万6300円。
これに対し、物言う株主の海外投資ファンドから「(豊田織機の)本源的な価値を反映していない」として批判を浴び、最終的に2万600円まで2度引き上げられた経緯がある。TOB開始も当初予定していた昨年12月上旬から年明けにずれ込んだ。
「食べログ」カカクコムで争奪戦に発展か
今年に入ってからの発表分で最も大きいのは、情報サイト「食べログ」「価格.com」を運営するカカクコムをめぐるTOBで、総額5500億円規模。
スウェーデン投資ファンドのEQTによるTOBが5月半ばに会社側の賛同を得てスタートし、現在進行中だが、争奪戦に発展する可能性が高まっている。
カカクコムに対し、LINEヤフーは7月1日付で、米投資ファンドのベインキャピタルと共同で買収を正式提案したことを公表した。LINEヤフーが示した買付価格は1株3384円で、EQTの3000円を上回る。EQT側は7月2日としていた当初の買付期間を同16日から22日に再度延長した。
LINEヤフーは今のところ、カカクコムによる賛同を前提として9月ごろのTOB開始を見込んでいる。
MBOでは湿布薬「サロンパス」で知られる久光製薬の案件が総額3900億円超に達し、これに「mouse(マウス)」ブランドのパソコンなどで知られるMCJが2079億円で続いた。
久光製薬、1962年以来の株式上場を廃止
なかでも久光製薬の案件はMBOとして、2024年の大正製薬ホールディングス(総額約7070億円)に次ぐ過去2番目の規模となった。
目先の株価や業績にとらわれず、中長期の視点で成長戦略を進めるとして同社創業家出身の中冨一栄社長の資産管理会社がMBOの一環としてTOBを実施。久光製薬は5月に、東証プライムへの上場を廃止し、1962年から続く上場企業の看板を下ろした。
また、医療事務受託を中心に介護、保育事業を手がけるソラストは2度目のMBOに取り組んだ。買収総額は905億円で、アジア系投資ファンドのMBKパートナーズと連携して実施した。
ソラストは2012年に東証2部上場を廃止し、その後、2016年に東証1部(現東証プライム)に再上場したが、事業環境の変化を踏まえて株式市場からの退出を再度決断した。
旧村上系が大株主のサンケイRE、不成立に
上期中、唯一、TOB不成立に終わったのは上場REIT(不動産投資信託)のサンケイリアルエステート(RE)。不動産業のトーセイが1月早々にTOBを開始し、5月半ばまで期間を6度延長したが、投資口の応募が買付予定数の下限に満たなかった。
サンケイREはフジ・メディア・ホールディングス傘下のサンケイビルがスポンサーの投資法人。フジ・メディアと対立していた旧村上ファンド系投資会社が突如、サンケイREの大株主として登場したことで、TOBの成否が注目されていた。
敵対的TOBとなったのはフィッシング・アウトドア用品を手がけるティムコに対する案件。中国投資会社Capital Nuts(厦门果投管理有限公司)の系列法人が経営への関与を目的にTOBに始め、これにティムコが反対を表明した。
Capital Nuts側は約45%の株式の買い付けに成功し、TOB自体は成立した(ティムコの東証スタンダードへの上場は維持)。
3年連続の年間100件突破へ
TOBは2023年を境に明らかな増加に転じ、2024年に年間100件ちょうどと2007年(104件)以来17年ぶりに100件の大台に乗せた。2025年はこれまで最多の年間136件まで伸ばした。足元の2026年もよほどの失速がない限り、3年連続の100件突破が見込まれる情勢にある。
中核事業の強化や事業ポートフォリオの見直しを目的する買収の活発化に加え、物言う株主の存在感が増す中、経営の自由度を確保するため投資ファンドと組んで戦略的に非公開化する動きが加速し、件数を押し上げる形となっている。
※金額は取引総額。TOBに応募しなかった株式の買い取り、自己株取得を含む場合がある
文:M&A Online
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