上場企業による中国子会社・事業の売却、最多ペースで推移中

わが国上場企業による中国現地子会社・事業の売却が過去最多ペースで推移している。その数は今年に入って16件(適時開示ベース。

7月21日時点)。この間、中国側が買い手の対日M&Aは19件あるが、中身をみると、8割以上は日本企業の現地子会社・事業が対象だ。

一方、日本側が買い手の対中M&Aはわずか1件で、これまでにない低水準にある。中国ビジネスの整理・縮小や投資意欲の減退が浮き彫りになっている。

中国、一見すると日本企業を“爆買い”?

国内上場企業がかかわる海外M&Aの相手としては例年、米国が断トツで、これに中国が続く。

M&A Onlineが上場企業の適時開示をもとに7月21日時点で調べたところ、日米間のM&Aは41件、日中間のM&Aは20件(中止1件を含む)。

今年ここまでの日米M&Aは日本企業が買い手の案件24件、米国が買い手の案件17件と、日本側が優位にある。

これに対し、日中M&Aの全20件(文末に一覧表)の買い手をみると、日本側1件、中国側19件と極端なアンバランスで、数の上では日本企業が“爆買い”されているかのように映る。

上場企業による中国子会社・事業の売却、最多ペースで推移中
※2026年は7月21日時点 適時開示ベース

対日M&Aの8割以上、中国子会社・事業関連

ところが、中国側が買い手の19件のうち、8割以上の16件は中国進出の日本企業が現地子会社・事業を合弁パートナーなどに売却する案件が占め、日本企業の本体などを直接の買収ターゲットにするものは3件にとどまる。

こうした傾向は年を追って強まっている。2025年の日中M&Aは年間28件あり、買い手の内訳は中国22件に対し、日本6件。前者の中国が買い手の22件中、20件は日本企業による中国子会社・事業の売却案件で、件数も過去最多となった。

これに続く今年は7カ月足らずで16件を数え、最多更新が濃厚だ。

リコー、事業停止中の子会社を200億円超で売却

リコーは4月、複合機などの中国生産子会社で事業停止中だったリコー・アジア・インダストリー(深圳)の全持ち分を約208億円で現地企業に売却すると発表した。遊休不動産の処分を通じた資産効率改善の一環だ。

7月には、フジクラが光ファイバー用母材を製造する中国子会社・藤倉烽火光電材料科技(武漢)の持ち分60%を現地合弁相手に売却すると発表した。2009年からの合弁事業が一定の役割を終えたと判断したもので、売却金額は約120億円。

また、この21日には明治ホールディングスが中国での牛乳・ヨーグルト事業などを約76億円で売却すると発表。個人消費の低迷や競争激化で業績不振が続いていたためで、今後成長が見込める中国でのカカオ事業は継続する。

上場企業による中国子会社・事業の売却、最多ペースで推移中
中国での事業売却を発表した明治ホールディングス(東京・京橋の本社)

現時点で日本企業による今年唯一の買収案件はRS Technologiesが取り組んだ案件。7月初め、先進パワーデバイス向け基板材料として需要拡大が見込まれるエピタキシャルウエハー事業を手がける安徽晶隆半導体科技を約106億円で子会社化した。

今に始まったことではない「脱中国」の流れ

2017年から直近までの約10年間をみると、日中M&Aは165件(M&A Onlineが集計)。日本企業による買収が39件に対し、中国による買収が126件と3倍に達するが、その8割以上を占めるのが日本企業の現地子会社・事業が対象とする案件だ。

日本企業は2020年からのコロナ禍をきっかけに国内外の事業選別にアクセルを踏み込んだ。とくに海外事業をめぐってはサプライチェーン(供給網)の再構築に向けて移転、縮小・撤退の動きが加速。日本企業の海外M&Aの内容も売却のウエートが高まりを見せた。

ただ、日中M&Aについてはコロナ禍以前から日本企業による売却(中国側にとって買収)が断然優位のまま推移してきたのが実情だ。

中国の経済・政治の不安定要素、いわゆる「チャイナリスク」への警戒感から、海外生産拠点の国内回帰や多様化など「脱中国」の流れが早くからできていたことがM&A動向からもうかがえる。

中国TCL、ソニーGのテレビ事業を事実上傘下に

一方、今年は久々に中国による大型の対日買収もあった。中国家電大手のTCLがソニーグループからテレビ事業を事実上傘下に収める案件がそれ。

ソニーは同社が49%、TCLが51%を出資する合弁会社「BRAVIA(ブラビア)」にテレビ事業を分離・移管するもので、これに伴うTCLの支払対価は出資分などで約754億円(約38億香港ドル)。新会社は2027年4月の事業開始を予定する。

上場企業による中国子会社・事業の売却、最多ペースで推移中

文:M&A Online

上場企業による中国子会社・事業の売却、最多ペースで推移中
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