6,800万人。なんの数かというと、LINEの国内利用者数だそうです(2016年1月28日時点 ※LINE 2016年10月-2017年3月媒体資料参照)。


日本人の53.6%がLINEユーザーということで、もはやなくてはならない連絡用ツールとなっているLINE。しかし、わずか数年前までテキストメッセージでのやり取りといえば、老若男女問わずもっぱらメールが主流でした。

トム・ハンクスとメグ・ライアン主演『ユー・ガット・メール』


昔、トム・ハンクスとメグ・ライアン主演の映画に『ユー・ガット・メール』という作品がありました。
大手プロバイダとのタイアップによって製作され、1998年に公開された本作は、当時最先端だった電子メールとライブチャットが活躍するラブコメディです。

インターネットで知り合った名前を知らない男女が、メールでのやり取りを通じて、惹かれあっていく……というのが話の大筋。
今だったら、「メール」が「Twitter」に変換されるでしょう。また、そもそも見知らぬ者同士がオンライン上で繋がってリアルでも交流を持つこと自体、あえて物語の主題として扱うほど物珍しい事象ではなくなっているのが現状です。


映画公開と同じく1998年、翌1999年に開始される『iモード』のキャリアメール(iモードメール)サービスで電子メールが流行するのを見越したかのように、「電子メール」をテーマにした連続ドラマが日本で放送されました。
それが竹野内豊・田中美里主演の『WITH LOVE』(フジテレビ系)です。

最終回で23.6%の高視聴率をマークした『WITH LOVE』


ドラマ『ビーチボーイズ』(フジテレビ系)でブレイクした竹野内と、NHK連続テレビ小説『あぐり』で脚光を浴びた田中によるこのドラマ。平均視聴率18.1%、最高視聴率23.6%という、なかなかのヒット作となります。

物語は、竹野内演じるCM作曲家・長谷川天(はせがわたかし)が、試作音源を間違って、田中演じる平凡なOL・村上雨音(むらかみあまね)の元へ送ってしまうところからスタート。
受け取った雨音が感想のメールを返信し、以降は天が「小学校の音楽教師」、雨音が「パリに留学中」とプロフィールを偽りながらやりとりを重ね、徐々に惹かれ合っていきます。

しかし、これを現実逃避だと感じた雨音は、及川光博演じる商社マン・吉田のプロポーズを受諾。

ほどなくして開催された婚約パーティーで、たまたま招待されていた天がお祝いにピアノを奏でると、雨音はメールの相手が天だと気づきます。天は雨音を傷つけないよう「人違い」と否定。けれども、2人は互いの想いを断ち切れず……と、大体こんな感じのお話です。

「“ベル友”じゃなくて、“メル友”というのよ」


ここで注目したいのはやはり、作中における電子メールの捉え方。

もはや死語となった“ベル友”、“メル友”

こんな台詞が登場したりするのです。“ベル友”はいわずもがなで、“メル友”さえ今や死語になっていることを考えると、時の流れを感じずにはいられません。


ちなみに、先述した『ユー・ガット・メール』には『桃色の店』(1940年公開)という元ネタの映画が存在し、その作中における連絡手段は手紙での文通でした。

まだ見ぬ異性に対し「どんな素敵な人なんだろう」と妄想を膨らませ、なんとか結ばれようと願うのは、いつの時代も変わらない人間の性。
しかし、テクノロジーはどんどん進歩するものだから、その時代に流行した連絡ツールが頻繁に登場する映像作品を見ると、どうしても時代錯誤な印象を受けてしまうものです。

きっとあと20年もすれば、映画『君の名は。』で、主人公の瀧とヒロインの三葉がスマホのメモ欄で連絡を取り合っているのを見て、「スマホなんてつかってるよ…」と思うに違いないのでしょう。
(こじへい)

※イメージ画像はamazonよりWITH LOVE(1) [VHS]