「抜きん出るためには人と違うことをやっていかないと」。そう話すのは、多彩なキャリアを歩む俳優の滝藤賢一だ。
2018年は朝ドラ出演や初めてのMC挑戦など、今まで以上に活躍の機会を増しているベテラン俳優に、7月19日より放送開始となる主演ドラマ『探偵が早すぎる』(読売テレビ・日本テレビ系/毎週木曜23時59分)での風変わりな役柄や、芝居に対する意識の変化、俳優業への思いについて語ってもらった。

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 些細な違和感やミスを察知して事前に事件を防ぐ探偵・千曲川光(滝藤)の活躍を描く本作。千曲川を演じる魅力を問うと、滝藤は「偏屈な変わり者なのに、事件を未然に解決し、犯人を返り討ちにしてしまうところ」と答える。また「普段、相手の核心の部分をついたり、触れられたくない所を触れまくったりできないじゃないですか。千曲川は、それをやれるんです」としたうえで「楽しくてしょうがないです。ドラマだから可能にすることができる代表的なキャラ」と役柄を分析。
千曲川が守るヒロイン・一華役で初共演となった広瀬アリスについては「お芝居の振り切り方が凄まじいので、気持ちがいいです。広瀬さんの芝居に刺激されまくっています」と称賛する。

 役柄や作品により千変万化の演技を見せる滝藤だが、過去には自身の方法論に捉われ悩んだ経験もあったという。そんな彼に変化を与えたのが、ドラマ『半沢直樹』(TBS)で共演した香川照之だ。「『頭上を覆っている雲からひょっこり顔がでた時、一面に視界が広がる。そうなると楽しくなる』とアドバイスを頂きました」。
その助言を受けてからは「最初は、それをどう体現していいか分からなかったです。最近、何となくこういう事なのかなという感じですよ」とのこと。

 2007年まで在籍していた無名塾時代に培った演技力に、映像の世界での経験を上積みすることによって、多くのクリエイターや視聴者から支持されるようになった滝藤。しかし、昨年末に放送された『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!』の年末スペシャル『絶対に笑ってはいけないアメリカンポリス24時!』(日本テレビ)では、俳優としてのパブリック・イメージを裏切る渾身のギャグで世間を驚かせた。 「去年の仕事で一番緊張しました(笑)」と振り返る滝藤は「集中しすぎて吐くかと思いましたよ」と自虐。出演を決意した理由を問うと、女優の松雪泰子や自身の子供たちの後押しがあったと言い「やっぱり、抜きん出るためには人と違うことをやっていかないと。
同世代の俳優がひしめき合っていますからね」と冷静に現状を分析。「これだけ俳優があふれている中で僕を選んでいただいている。チャンスをいただければ、やっぱりやりたいです」と続ける。

 ジャンルを問わず貪欲に、全力で仕事に挑む滝藤に、俳優としての展望を問うと「新しい作品をやっていくと同時に、“帰ってくる”作品を大事にしたいです」と返答する。出演している『連続ドラマW コールドケース』(WOWOW)や『オリガミの魔女と博士の四角い時間』(NHK教育)をシリーズ化の例に挙げ、「将来的には、自分が主演の作品を持ちながら、新しいことにチャレンジしていけるといいのかもしれません」とも。

 「新企画をどんどん出して行って、自分たち発信で作品を生んでいけたら幸せですね」と、制作サイドに加わることにも前向きだ。
当代きっての演技派は、俳優という枠組みを超え、一人の作り手として、どんな活躍を見せてくれるのか。滝藤賢一の今後に期待が膨らむ。(取材・文・写真:岸豊)

 ドラマ『探偵が早すぎる』は読売テレビ・日本テレビ系にて、7月19日より毎週木曜23時59分放送。