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インフルエンザが流行する季節になりました。マスクや手洗いうがいで予防している人がほとんどだと思いますが、それでも感染することがあります。


当然、インフルエンザになってしまった場合は、会社を休むことになると思いますが、人の少ない企業や一部シフト制店舗などでは「這ってでも出ろ!」と出勤を強要することがあると聞きます。
このようなことは許されざることであると思うのですが、どのような罰則となるのか、いまいち不明です。エジソン法律事務所の大達一賢弁護士に解説して頂きました。

■インフルエンザなのに出勤を強要…違法性は?
「小中学生の頃、インフルエンザに罹患して出席停止となったり、インフルエンザが流行ったため学級閉鎖になったりしたという記憶がある方は多いと思います。学級閉鎖が臨時のお休みだと思って少しだけワクワクしていたのは不謹慎ですが、子ども心にインフルエンザはそんな記憶です。
一方で、社会人になってからインフルエンザに罹患した場合の話についてはあまりいい話は聞きません。
基本的には、休みをもらえる会社や有休を取ることができる会社が多いのでしょうが、もし、従業員がインフルエンザなどの伝染性の疾病に罹患した場合に、会社には当該従業員を休ませる義務があるのでしょうか」(大達弁護士)

■労働安全衛生法68条違反の疑い
「この点について、労働安全衛生法68条は
「事業者は、伝染性の疾病その他の疾病で、厚生労働省令で定めるものにかかつた労働者については、厚生労働省令で定めるところにより、その就業を禁止しなければならない」

とし、対象となる疾病について同法施行規則61条1項1号は
「病毒伝ぱのおそれのある伝染性の疾病にかかつた者」

と規定しています。
つまり、従業員が伝染病に罹患した場合には、事業者は当該従業員を、いわゆる「出勤停止」にする義務があるということになります。
そして、インフルエンザが強い伝染性を有することは周知の事実ですので、インフルエンザに罹患した従業員に対して出社を強制することは、労働安全衛生法68条に違反することになります。
事業者がこの義務に反した場合には、6月以下の懲役又は50万円以下の罰金が科される可能性があります(労働安全衛生法119条1号)。
それだけでなく、インフルエンザに罹患している従業員が出勤させられたことによって症状がより悪化した場合など、事業者に義務違反があったことが原因で損害が発生したといえる場合には、安全配慮義務違反や法令違反が原因の損害があるとして、事業者はその従業員に対して民事上の損害賠償責任を負う可能性もあります(民法415条、709条など)」(大達弁護士)

■企業は従業員の健康管理を
「身近な病気に感じるインフルエンザですが、死亡する可能性もある重大な病気。
近ごろは、似たような語感でインフルエンサーなんて言葉も良く聞くようになり、古い人間の著者なんかはドキっとしてしまうものですが、インフルエンサーもインフルエンザも与える影響は大きいもの。

インフルエンザに罹患した従業員を出勤させることによって社内でインフルエンザが流行させて、業績により大きなダメージを与えられる危険性が高いと言えます。
事業というものは健康な人員が揃って初めて成り立ちうるものですので、健やかな職場環境を維持するためにも、従業員の健康には十分に配慮しなければなりませんね」(大達弁護士)

社員がインフルエンザに感染したにもかかわらず、それを無視する形で出勤を強要することは、やはり法律違反になる可能性が高いよう。
自分がそのような境遇に置かれている場合は、弁護士に相談のうえ、然るべき措置を取りましょう。

*取材対応弁護士: 大達 一賢(エジソン法律事務所。第一東京弁護士会所属。「強い、やさしさ。」、「守る≒攻める」、「戦略&リーガル」の3つの思いを胸に、依頼者のために全力を尽くします)
*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。
期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)
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