観光地におけるレンタカーと路線バスは互いに競合することもありますが、那覇空港ではレンタカー利用者が年々増えた結果、レンタカー事業者がバス路線を新たに開設しました。

夏のピーク時に大混雑、利用者から不満の声

 沖縄県の那覇空港では2018年4月現在、レンタカー事業者の送迎車による混雑が深刻化しています。

これを解消しようと、ついにはレンタカー事業者自らが、空港と自社営業所を結ぶ路線バスを開設するにいたりました。沖縄の大手旅行会社である、「OTSレンタカー」を運営する沖縄ツーリストによるもので、レンタカー事業者としては日本初の試みといいます。

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那覇空港とOTSレンタカー営業所を結ぶ路線バス。荷物を多く載せられるリムジンタイプの車両で運行する(画像:沖縄ツーリスト)。

 同路線バスは、2018年4月1日に運行を開始しました。空港に到着する旅客が多い午前8時から14時までの時間、那覇空港の各ターミナルと同社の臨空豊崎営業所を1日12往復します。

一方、従来の送迎バスも朝から夜まで運行するとのことで、沖縄ツーリストの担当者は「那覇空港に到着されたお客様が送迎バス乗り場と路線バス乗り場に分散するようにし、混雑を緩和するのが狙いです」と話します。

 那覇空港には航空自衛隊那覇基地が併設されていることや、周辺を住宅街に囲まれた立地のため、レンタカー事業者のほとんどは空港から離れた場所に営業所があります。こうした背景から、冒頭のように、空港とそれら営業所との間の送迎サービスが盛んに行われているというわけです。とはいえ、空港のバスを駐停車できるスペースにも当然限りがあり、観光シーズンのピーク時間帯には、バス乗り場だけでなく周辺道路でも渋滞を引き起こしています。沖縄県の担当者によると「2016年夏のピーク時間帯には送迎バス乗り場で最大470人もの行列ができ、長時間混雑してお客様から不満の声がたくさん寄せられました」とのことです。

 対策に乗り出した沖縄県は、2017年夏に路線バスを使ったレンタカー送迎の実証実験を行い、那覇空港とOTSレンタカーなど各営業所との間で路線バスのピストン輸送を実施しました。

OTSレンタカーの路線バスは、その結果を受けて開設されたものです。

「運行業務は地元のバス会社に委託する形になりました。レンタカーを利用されるお客様の待ち時間を減らして利便性向上をはかり、レンタカー事業者とバス事業者双方の利益につなげていきたいと考えています」と、沖縄県の担当者は話します。

一般客も利用可能、商業施設へのアクセスも

 OTSレンタカーが開設した路線バスは、同社のレンタカー利用者は無料、利用しない人でも大人250円、子ども130円で乗車できるといいます。これは2017年の実証実験で、レンタカー利用者以外の観光客や空港勤務者なども利用していたことを受けたもの。近隣の住民は路線バスで那覇空港に行き、そこからモノレールで那覇市中心部に行くことも可能になります。

「弊社営業所周辺のホテルやアウトレットモールなどの商業施設のほか、運転免許センターなどへの移動手段としてもご利用いただけます。まだ運行を開始したばかりで、レンタカー以外の目的で乗車される方は多くありませんが、問い合わせなども来ていますので路線が浸透すれば利用される方も増えていくと思われます」(沖縄ツーリスト 担当者)

レンタカー会社、利用者多すぎて路線バス開設 背景に那覇空港の立地 県民の足にも

OTSレンタカーなど複数のレンタカー業者の空港営業所がある豊崎地区。那覇空港からは車で15分程度かかる(2017年4月、佐藤勝撮影)。

 沖縄ツーリストが路線バスを走らせている区間は、もともとバスの路線がありませんでした。観光客へのサービス向上を目的として運行が始まった路線バスですが、結果的に県民にとっての新たな交通手段にもなっています。

「沖縄ではレンタカーの需要が高く、沖縄を訪れる国内旅行者は6割、外国人は3割の方がレンタカーを利用されています。

レンタカー営業所へのバス路線がさらに増えれば、送迎にともなう混雑もより緩和されますし、地域住民の方にとっても便利になると考えています」(沖縄県観光振興課 担当者)

 レンタカー送迎のさらなる分散化のため、沖縄県の担当者は今後もほかのレンタカー業者に路線バスの運行を提案していく考えです。

【地図】那覇空港とOTSレンタカー営業所の位置関係

レンタカー会社、利用者多すぎて路線バス開設 背景に那覇空港の立地 県民の足にも

OTSレンタカーの臨空豊崎営業所は那覇空港から離れた場所にあるが、高速道路のICには近い立地でもある(国土地理院の地図を加工)。