道路工事などに付随する交通誘導員は、夏場の熱中症や受傷事故のリスクもあり、なり手が不足しています。そこでALSOKが人間の判断手法を取り入れたシステムを開発。
道路や周辺の工事などで車線がふさがれ、その場で片側通行などの交通誘導が行われることがあります。場所によっては仮設の信号で制御されるケースもありますが、多くの場合は警備員の誘導です。
ALSOKが実験中の新しい交通誘導システム。工事区間内の安全確保をセンサーで確認して信号をコントロールする(画像:ALSOK)。
この警備員による誘導を省人化すべく、警備大手のALSOK(綜合警備保障)が新しい交通誘導システムを開発し、複数の県で試行運用を行っています。
新しいシステムは、工事用信号機に車両検知センサーを掛け合わせているとのこと。従来の交通誘導とどう違うのか、ALSOKに聞きました。
――従来から片側通行などの誘導を仮設信号による無人運用で行う場合がありますが、それとどう違うのでしょうか?
今回のシステムは実際の交通誘導員が行う判断手法を取り入れており、システムが工事区間内を安全と判断しなければ進行指示(青信号)を表示せず、また、誘導無視(信号無視)が発生した場合は、即座に警報を出力し、後続車の進入を抑止する機能を搭載しています。交通の流れに応じて、赤信号を長くしたり短くしたりすることが特徴です。
――従来、有人による誘導と信号による無人誘導とはどう使い分けられ、それがどう変わるのでしょうか?
原則としては有人による誘導が必要です。
――今回のシステムによる交通誘導に係る人員の削減目標などはありますでしょうか?
現地の状況によって変化しますが、一例としてこれまで5名の配置を行っていたところを、3名で運用可能としたいと考えています。
深刻な交通誘導員不足、新システムで省人化なるか交通誘導の仕事に従事するには、警備業法で30時間以上の法定教育制度が定められているほか、交通量の多い路線などは国家資格の検定に合格した警備員の配置が求められるところもあります。
一方、交通誘導員の人手不足は深刻さを増しており、その確保が困難なことから公共工事にも支障を来たしている状況。
ALSOKによると、新しい交通誘導システムで誘導の品質を確保するとともに、さらなる省人化も期待できるとのこと。交通誘導の将来について、ALSOKは次のように話します。
「道案内など、誘導業務に付随して発生する多種多様な業務をすべてシステムで対応することは困難ですが、将来的にクルマの無人運転などの技術が確立されれば、複雑な対応が求められる業務だけを人間が行うことになるでしょう。そのような未来に向けて、新システムが適用できる規制形態を順次拡大し、進化を続けていきます」(ALSOK)
交通誘導システムの操作端末画面。
もうひとつ、警備業界ではいま、大きな課題となっていることがあります。それは2020年東京オリンピック・パラリンピックにおける警備員確保の問題です。大会期間中は1万4000人もの民間警備員が従事するとされており、通常請け負っている継続的な警備業が並行するなかで、その人員確保が懸念されています。このため、2018年4月にはALSOKおよびセコムをはじめとする14社が参画し、協力して「東京2020大会」の警備を担うJV(共同事業体)も発足しました。
ALSOKによると、施設警備などを担うロボットの開発など、交通誘導以外にも警備を省人化する取り組みを行っているとのこと。
2017年6月の国交省通達に添付された都道府県への交通誘導員に関するアンケート調査結果。33の都道府県が交通誘導員の不足を回答している(画像:国土交通省)。