フジテレビの亀山千広社長いわく「FOD(フジテレビオンデマンド、動画配信)では圧倒的に、ある層には支持を得ている」らしい今期月9『突然ですが、明日結婚します』は第6話。視聴率はもう、あちこちでさんざんいわれている通り5.0%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)と、ドン底を見ました。



 ちなみに亀山社長、月9史上最低視聴率を記録した前期の『カインとアベル』では「タイムシフト視聴率(録画視聴率)が高い」ことを強調していましたが、今期はそのタイムシフト視聴率も、ドラマ部門で『東京タラレバ娘』(日本テレビ系)、『A LIFE~愛しき人~』(TBS系)、『カルテット』(同)、『下剋上受験』(同)、『嘘の戦争』(フジテレビ系)に次いで6位あたりをウロウロ。フジテレビ系列の番組しかない「FOD」で「圧倒的に、ある層に」支持されていることくらいしか、言うことがなくなっちゃったんでしょう。それって「わが局はコレもひどいけど、他はもっとひどい」と言っているだけじゃないの。どうすんのこれ。

 さて、「結婚したい女」である高梨あすか西内まりや)と「結婚したくない男」の“ナナリュー”こと名波竜(flumpool・山村隆太)は、同棲を始めることにしました。といっても、あすかは実家暮らしですし、ナナリューは学生時代の親友であすかの先輩でもある小野さん(森田甘路)のマンションに居候しているので、新しく部屋を借りなければいけません。
ということは、制作側はもうひとつ撮影用の物件を用意しなければならないということです。

 そんなのは予算がもったいないので、すでに小野さんの部屋として押さえている物件に、2人を住まわすことにしました。小野さんは、ドラマの公式HPで「恋愛も結婚もしたくない女」と紹介されている莉央さん(中村アン)と強引にくっつけられて、部屋から追い出されることに。

 かくして、主人公カップルが家賃150万円の最上階高級メゾネットで同棲生活を始めるという、いかにも画面重視のシチュエーションができあがりました。

 結局、このドラマの目指してるところが、そこなんです。というより、序盤でお互いの「好き」が「どこがどう好き」なのか説明を怠ってしまったので、せめて部屋くらい豪華にしないと「憧れの男女関係」や「甘い同棲生活」を描けなくなってしまっている。
前回のレビューでも書きましたが、もう登場人物が“死に体”になってしまっているんです。

「甘い同棲生活」を描くためには、2人をケンカさせたり仲直りさせたりしなくてはなりません。しかし2人とも死に体なので、2人きりではケンカさえできないんです。「どこがどう好き」を説明しなかったのと同様に、あすかの「結婚したい」にもナナリューの「結婚したくない」にも「なぜなのか」が説明されていないので、価値観を衝突させることはできない。しょうがないから、あすかに「家族には女3人で住むと言っている」という無意味なウソをつかせて、ナナリューがそのウソに一旦乗っかって、あとで覆して「なんで覆したの!」と怒るしかない。仲直りさせるために、無理やりケンカをさせなければならない。
苦しい、苦しいシナリオです。

 それと同じことが、ドラマ作りそのものにも起こっているようにも見えます。

 この2人の関係が、いかにも記号的で、表層的であることは作り手も自覚しているはずです。当然、プロですから「こんなのウソっぱちじゃねーか」「まるで説得力がねーじゃねーか」と思いながら作っているはずです。だけど、もうそのウソっぱちに乗っかるしかなくなってる。自分たちで作ったハリボテの「甘い同棲生活」を「成立しているもの」として飲み込んで、それから「ナナリューと桜木夕子(高岡早紀)のドロ沼二股不倫疑惑」を建て増しして話数を埋めるしかない。


 もう3話くらい前から、有機的なエピソードは何ひとつ語られていません。誰も彼もがシチュエーションありきで配置されるため、信じるに足るキャラクターが誰もいないんです。決定的な矛盾を避けるために、みんなが少しずつ、ウソつきであることを自白しているようなものです。

 作り手にとっても視聴者にとっても、不幸なことだと思いますよ。もうできるだけ早く打ち切って、みんなで熱海あたりにゆっくり旅行にでも行ったらいいと思う。この作品で、心を病んでしまうスタッフ・キャストがいないことを祈るばかりです。

(文=どらまっ子AKIちゃん)