9月15日に発売されたペルソナ5。もうクリアした人もたくさんいると思われる。
筆者もようやくクリアすることができた。プレイは難易度ノーマルで時間98時間58分。久々にこれだけの時間を費やして一気にクリアするぐらい、魅力に富んだゲームだった。
シリーズ最高傑作「ペルソナ5」を超ていねいに解説してみた
『ペルソナ5』(アトラス PS4/PS3)
ペルソナシリーズ久々のナンバリングタイトル最新作。今までのシリーズを遊んでいなくても、楽しめる。なお、本作はネタばらし禁止でチュートリアル以外スクリーンショットを撮ることができないため、この後の画像は全てチュートリアルのものを使っている

ペルソナ5は出荷本数が55万本を突破してシリーズ最高の出足を見せているが、少し癖がある世界観やシステムを持っているのも確かだ。

そこで、ペルソナ4や3のアニメなどを見たりして、興味はあるけれどもゲームとしてのペルソナシリーズをやったことがない人向けに、どういうゲームなのかを説明していきたい。

ピカレスク・ロマンであり、クライム・サスペンス


ペルソナ4は「推理ジュブナイル」だったが、ペルソナ5は「ジュブナイル活劇」であり、「ピカレスク・ロマン」であり、「クライム・サスペンス」だ。

主人公はある事情で東京の高校に2年生として転入する。
いつの間にかスマホにインストールされていた「イセカイナビ」により、歪んだ欲望の持ち主が持つ「パレス」とその精神世界へ入れるようになる。例えば、学校を我が物顔で取り仕切っている悪徳教師が学校を「自分の城」と思い込んでいたら、精神世界では学校が「城のパレス」として出現するというもの。

パレスの中には、主の歪んだ欲望によって「人の感情」が具現化した存在「シャドウ」がいて、主人公に襲いかかってくる。絶体絶命のピンチの際に、心の力「ペルソナ」に目覚め、撃退に成功。

シャドウを倒す力を得たことでパレスを探索できるようになり、奥で見つけた欲望の核である「オタカラ」を盗み出すことに成功すると、持ち主は「改心」して現実世界で悪事などを自白する。

主人公は仲間達と共に「心の怪盗団」を結成。
予告状を出し、悪人の「オタカラ」を盗んで改心させる義賊となる。
シリーズ最高傑作「ペルソナ5」を超ていねいに解説してみた
さまざまな「パレス」から「オタカラ」を盗む。ときには追われて逃げることも

ギミック満載のダンジョンと、特徴敵な「カバー」


本作ではペルソナ3やペルソナ4のような自動生成ダンジョンではない、固定されたマップのダンジョンになっている。ただし、さまざまな仕掛けを解かないと先に進めない。ダンジョンでも謎解き要素が含まれているのだ。

そのため、障害物をジャンプで越えたりと、アクションをする必要がある。
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「パレス」はギミックが満載で、通れそうにないところも「ジャンプ」して通ったり、仕掛けを発動させて先へ進む

一番特徴的なのは「カバー」だろう。

パレスの中のシャドウは、オタカラを守るためにパレス内を巡回している。
主人公達を視界に収めると、警報を鳴らしながら迫ってくるのだ。警報が重なり、警戒度が最大まで達すると、すぐに見つかってしまうためしばらくの間そのパレスには入れない。そこで、物陰に隠れながら移動する必要がでてくる。これが、「カバー」だ。

カバー中は敵シャドウに見つかることはない。しかも、近くに来たシャドウに対して不意打ちを仕掛けることができる。
成功すれば必ず先制攻撃となり、一方的に攻撃できる。

カバーをしているときに、次の物陰に素早く移動する(このときもシャドウには見つからない)ことができるため、全く見つからずに部屋から部屋へ移動することも可能だ。
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「カバー」で物陰に隠れ、敵を伺う。黒くて見にくいが、影に主人公が隠れている。影から影へと移動することもできる

ただ、この部分の操作は慣れるまで難しいかもしれない。というのも、今までは視点変更(右スティック。「X」ボタンで視点リセット)で周囲360度全てを見ることができたのが、カバー中は視野が狭くなり、見えない部分が出てくる。また、カバーからカバーへ移動する際も、焦っていると次に移動するところのサインを見間違えて、思っていたところではない場所へ飛び移ってしまうことがあるからだ。


カバーは円滑に戦闘を進める上でも必須なので、早いうちに慣れるようにしたい。

ちなみに、カバーで行動しなくても、シャドウ(戦闘前のシンボルでは人型)の背後から近寄れば、意外と気づかれない。時には物陰から出て、大胆に攻めよう。

テンポの良さと緊張感を併せ持つ戦闘システム


戦闘では物理、銃、火炎、氷結、電撃、疾風、念動、核熱、祝福、呪殺の10種類の属性があり、各ペルソナ/シャドウには耐性と弱点が設定されている。
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ペルソナごとに設定されているスキルには、属性がついている。敵の弱点を探り、ダウンさせよう

弱点属性に当てられるとその敵はダウン。攻撃を当てた側には1MOREの権利が与えられる、つまりもう一度行動できる。これは、違う相手に攻撃してダウンが発生する限り、ずっと続く。


シャドウを一方的に攻撃し続けられるお得なシステムかと思いきや、主人公側のペルソナにも弱点が設定されているのがポイント。もしその属性で攻撃されたら、敵側に1MOREが発生するのだ。もし先制攻撃を食らったら、何もできずに一方的にやられてしまうかもしれない。格下相手でも、常に緊張を持って戦う必要がある。

また、弱点を攻撃してダウンさせた際には、「バトンタッチ」できる。バトンタッチされた仲間は一時的に攻撃力と回復力が上がる。例えば、火炎弱点と氷結弱点の敵が同時に出た際、自分が氷結属性の攻撃しか持っていなければ、まず弱点をつき、そのあとに火炎属性の攻撃を持っている仲間にバトンタッチすれば、即座に弱点をつけるというわけだ。

敵の全てがダウンすると、全員で取り囲んで銃を突きつけ「HOLD UP」状態となる。ここでは敵と交渉して「力をもらう」「金をもらう」「物をもらう」か、全員で総攻撃できる。

交渉で「力をもらう」のは、相手のシャドウを自分のペルソナとして取り込むこと。こうして手に入れたペルソナを時には育て、時には合体させて新たなペルソナを生み出すことで主人公はパワーアップしていく。

総攻撃では敵全員に大ダメージを与えることができるため、基本的にはカバーで隠れて近づき、先制攻撃をし、弱点属性をついて敵をダウンさせ、総攻撃で全滅させることになる。これが実にテンポ良く進み、気分よく戦闘できる。

このテンポが本作では非常に重視されていて、細かい操作画面にもそれが現れている。例えば戦闘時のコマンド画面だ。
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コマンドは全てボタンが割り当てられているため、テンポ良く行動できる

コントローラーのボタンがそれぞれの攻撃に割り振られていて、いちいちカーソルを選んで選択するのではなく、ボタンですぐに攻撃ができる。主人公はペルソナを複数種類切り替えて使う能力を持っているが、相手の弱点の技を持っているペルソナをすぐに呼び出したりもできる。

全体的な操作の快適さと、音楽や画面と合わせて、洗練されたかっこいい戦闘をポンポン進めていける。なんとなく戦闘だけをひたすらやっていてもかなり楽しい。

歴代で一番賢いAI


ペルソナ5では、仲間の行動を自分で指示するだけではなく、AIに任せることもできる。基本的にはキャラの自主性に任せるタイプなので、可能なゲームでは全てAIに任せているが、本作では驚いた。他のゲームでもなかなか見ないぐらい賢かったからだ。

未知の敵と遭遇した際には威力の弱い属性攻撃で弱点を探る。仲間が状態異常に陥ったときにはすぐに治す。弱点が見つかった場合は、弱点をつける攻撃を持っている仲間にバトンタッチする。体力低い敵が散らばっていたら銃で一掃する。ボス戦で大技がくる予兆が見えたら的確に防御する。誰かが死んだら回復アイテムですぐに回復させる。

結局ラスボスまでAI任せで問題なく倒せてしまった。ペルソナシリーズは、ちょっとのミスで戦闘時に大きな被害が出るため、なかなかAI任せにする人は少ないかもしれない。だが、本作では賢く的確に行動してくれる上に、キャラの個性が見えてくるようで愛着が増すので、試してみて欲しいところだ。

怪盗団を助ける人々と絆を深めよう


怪盗団の活動は、高校生である主人公達だけではなかなか難しい。そこで、さまざまな人の協力をとりつける必要がある。利害関係が一致する相手と「取引」をすると、相手との関係が深まり、協力関係「Corporation(コープ)」を結ぶのだ。コープが上がれば、怪盗活動に役立つスキルを覚える。

ここも少しペルソナシリーズの独特なところで、アドベンチャーゲームのようにキャラクターに会い、会話をしていく日常パートがあるのだ。

異性とのコープを上げていけば、特別な関係、いわゆる恋人になれる。シリーズ伝統の、複数の異性と付き合う○股も可能だ。

1日のうち行動できるのは、学校のある日は「放課後」と「夜」の2回のみ。この中で、コープを上げたり、パレスに潜ったり、予告状を出さなくてはならない。これが、意外と時間がない。出てくる女性キャラ全員と恋人になろうとしても、かなり計画性を持って行動しなければ時間が足りなくなってしまうのだ。

じゃあ、どう行動したらいいのかわからないという人もいるだろう。そんなときには、コントローラーのタッチパッドを押すと、その日に他のプレイヤーがどういう行動をとったのか、表示される機能がある。みんなはどう動いたのかを、参考にするといいだろう。

瞬殺について


最後に、一部ネットを騒がしている、仲間の一人「竜司」が覚える「瞬殺」というスキルについて。

これは、自分達よりもレベルがかなり低い相手に先制攻撃をとると、竜司が相手を文字通り瞬殺して戦闘がすぐに終わるというもの。ただし、経験値やお金やアイテムは手に入らない。

これが、いわゆるレベル上げや金稼ぎができないので、覚えるのは罠だ、覚えてはいけないという論争がある。

結論から言うと、それほどひどいスキルとは思わなかった。基本的に瞬殺が発動するのは、かなり格下で、経験値稼ぎとしてはほとんど役に立たないぐらいの相手だ。そういう相手は、こちらのスキルが強すぎてダウンさせる前に一撃で倒してしまうことになる。すると、その相手をペルソナとして手に入れることができないのだ。

ところが「瞬殺」があると、相手を不意打ちしたあとに、バトルにいかずに「ペルソナを手に入れた」と出て、入手できる(ペルソナが一杯だと「いっぱいで無理だった」と出る)。レベルの低いペルソナをゲットするのに必要なスキルであり、レベル上げのためのスキルではないと考えるといいだろう。

この問題は、レベル上げすぎが関係するのかもしれない。ネットワークで行動を表示させる機能には、「みんなの平均レベル」があり、その日時点での平均値を見ることができるのだが、中盤からは常に自分のレベルよりも7から10は高い状態だった。

難易度ノーマルで特に稼ぎ行為をせずに進めていた場合、メインとなるパレスで瞬殺が発動することはほとんどなかった。だが、それよりも10レベル高い状態だと、本来なら普通に戦う相手も瞬殺してしまって、全く稼ぎができないという状態になってしまったのかもしれない。特に、レベル99を目指す場合には、瞬殺を持っていると一番強い雑魚も瞬殺してしまうことになるので、それ以上経験値が手に入らなくなってしまう。そういう人が不満を持っているのではないだろうか。

ただ、難易度ノーマルでクリアには支障がなかったため、どうしても延々とレベル上げをしたいという人以外は、それほど気にする必要はないと思う。

ペルソナ5は、緊張感のあるテンポ良い戦闘と、快適な操作性(ちょっとカバーアクションのところだけ惜しいところがあるが)と、よく練られたストーリーを持っている、傑作だ。少しでも興味を持っていて、遊ぶ環境を持っている人なら、買って損することは無いだろう。ただ、細かいロードがたくさん入る(うまく演出でわからないようにもしている)ので、そこが気になる人はいるかもしれない。

もし興味があるならば、今すぐ買った方がいい。なぜなら、10月5日から10日までの期間限定で、コスチュームなどのDLCが無料配信されるからだ。

ちなみに一度クリアしても、さまざまな要素を引き継いだ状態でできる「二周目」がある。ネタがわかっている分、最適な行動がとれるため、ゲーム性ががらりと変わる。まだまだ怪盗団に時間を盗まれる日々は続きそうだ。
(杉村 啓)