コンプティーク10月号が、瞬殺……というか、発売日前に枯渇、というとんでもない状態になりました。
理由は9割方、別冊付録に「艦隊これくしょん」(以下艦これ)本が付くから。

あまりのことに、緊急重版が決定しました。これはコストを考えると異例の事態です。
デジタルコンテンツ情報誌『コンプティーク』10月号 一部書店完売につき、緊急重版決定。
9月下旬に再発売されるそうなので、くれぐれも焦りませぬよう。
 
さて、ぼくは「艦これ別冊付録」と聞いて、一も二もなく予約した盲目の提督なんですが、みんながみんなそうなわけではない。ただの紹介別冊付録なら、こんな事にはならなかったんだよ。

この別冊付録、すごいから売れてるんだよ。
84ページ。口コミで「この内容はやばい」と提督中に広がりまくりました。
ぶっちゃけ、これだけの内容ならムック単体で出せますよ。
せっかく重版も決まったことですし、何がすごいのか、ピックアップします。
 
1・関連用語集に、実在の提督が多数載っている。

いきなりですが、編集部の作った関連用語集が、すごい。
基本的な「深海棲艦」とか「旗艦」のようなゲーム内用語はもちろん、「アイドル(那珂ちゃんのことだよー!)」や「猫(エラー画面のこと)」のようなネットスラングも載っている。ここまででも十分面白い。
しかし、この用語集には「艦これ」のゲームと直接関係ない、旧日本海軍の軍人の名前が多数載っている。どういうことだ……?
有名な山本五十六はもちろん、近藤信竹、南雲忠一、西村祥治、平賀譲、美濃部正、山口多聞などなど。
正直「なぜ載せた!?」という細かさで掲載されています。
無論、旧日本海軍本ではないので限度をわきまえた量で抑えられていますが、にしてもおかしい。
また、解説がいいんだ。キスカ島から一人の死者も出さずに撤退作戦を成功させた木村昌福の解説はこう。
「「帰ろう。帰ればまた来られるから」の名言は、艦娘を大事にする提督の間でも至言とされている」
そうなんです、これほんとに一部の提督(プレイヤーのこと)の間で言われている軍事ネタ。まあよく調べて拾ってきたものです。

正直、軍人の知識自体は、ゲームと全くと言ってもいいほど、関係はありません。
でもこの本は調べて、載せるのです。
編集者の軍事愛を強く感じてしまいますが、目的はそれだけではないようです。詳しくは後ほど。

2・ゲームに関する内容を実体験から解説している
この「艦これ」というゲーム、本当にいい意味で不親切です。
ゲーム本体は簡単だけど、なにがどうなっているのか実にわかりづらい。

それをネット上で交流しながら、提督達が「こうじゃないかああじゃないか」と検証していくのが楽しいコミュニケーションになっています。まあ、何も知らずに轟沈(ロスト)するのもいい経験ではあります。二度と経験したくないけどな。
中でも一番わからないのはステータス。
それらについて、公式の発表があるものは解説し、そうじゃないものは編集部提督が実体験から調べたデータを元に書かれています。
例えば「速力」。
本では「戦闘時は高速艦で固めたほうが回避しやすくなるようだが、現時点では気にするほどの影響はない」と書いています。
はい、わかんないんです。でもできる限り、解に迫っています。「運」とか、ライターさん頑張ってます。わかんないなりに伝えようとしているのが、なんともネットの会話っぽい。

艦これは戦闘そのものよりも、下準備・兵站の部分に力を注いでいるゲーム。
どんな艦を作るか、どう育てるか、何を開発するか。入渠・補給・改装等々。
このへんをきっちり理解した上で初心者向けに解説しているので、非常にバランスがいい入門書になっています。
とはいえ、このゲームは答えがない。こうやったらこの艦ができるとか、こうすればクリアできるとかは、ありません。
なので、この本も「先輩提督が新人提督にアドバイス」という形式を取っています。最低限これはやってはいけない・こうやると楽しいよ、という書き方。
だから攻略と関係ない、「ダメージ状態の図鑑を埋めよう、ただし演習では画像が載らない」みたいな、ある意味大事な知識も伝授されます。
五十鈴改ちゃんからの電探ゲット方法みたいな実践的なのも載っていますが、基本的にはアドバイス集。あとは自分でやってみて、慣れてきたらネットの交流に参加しよう……という方向に引っ張っている書き方が実にGOOD。

3・全艦イラスト載ってます。
今回の目玉です。全艦娘の画像が、全身で載っています。深海棲艦(敵艦)まで載っています。これはとても貴重。
加えて、改装後に別ナンバーになる艦娘は、そちらの絵も載っているので、ほぼ網羅されています。
これだけで、ゲーム始められなくても(例・抽選漏れなど)、お気に入りの子を楽しめる。パラパラ見ているだけで楽しいです。同人誌作成の資料にももってこい。ダメージ絵はありませんので、そこはプレイしましょう。
そこに、艦娘ごとの名台詞を一つ、艦娘の解説が一文。ステータスも載っています。
そしてここ。多くの艦娘の史実が載っている。
ほんっとにこの付録作った人すごいね! 艦隊愛溢れすぎだよ! 那智ちゃんの史実も載っていたらさらによかった。
しかも、ミニコラムで「艦娘の原点・旧日本海軍の軍備計画を追う」という囲み記事も掲載されており、どの時期にどの艦ができたのかの史実を知ることが出来ます。
ガチです。
で、ガチとなると、予想がつくと思いますが……だいたいの艦って沈没して悲しい末路辿っているんですよね。
ここが、ポイントです。この本は、そこを書かなきゃいけなかったんです。

4・新作キャライラストも大放出中
ゲストイラストギャラリーも大充実です。有名イラストレーター5人が描いています。ファンには嬉しいところですね。
元々艦これは、オフィシャルイラストだけでなく二次創作にも寛容な部分があります。
早速アンソロジーも刊行されます。
プロデューサー自身「私自身も「艦これ」の二次創作を見るのが好きですし、出来れば自分でもいくつかしたいくらい」と述べています。
今後おそらく同人誌・アンソロジーがゴリゴリ出てくると思います。ある意味、この本が「各々が考え描く『艦これ』」の口火を切る役割を果たしているんです。
この本を読むと、明確な物語や関係性の描写を、ゲーム本体があえて避けているのがわかります。
あくまでも、提督のみんながイメージしていく艦これ。すべてのイメージがひとつの艦これ。
自由度の高い、初音ミクに似た広がり方をしそうです。

5・想像は自由に、悲しみは共有しつつ、楽しみは大きく
艦これ企画・開発プロデューサーの田中謙介のインタビューが載っているのですが、これが今まで各所で掲載されたインタビューの集大成的なものになっています。
艦これを作ったきっかけやなぜ女の子にしたのか、など掲載されているのですが、重要なのはここでしょう。
「軍艦、艦艇……とくに旧日本海軍の艦艇は、かなり悲しい結末を辿っているわけです。勇壮なだけではなくて、むしろ、悲惨で哀しい。(中略)志半ばで、誰も見ていない黒い海の闇のなかで、沈んでしまっていた艦がたくさんあるわけです。そんな彼女たちの奮戦と最期を、一瞬だけでも艦や史実とともに共有したくって「艦これ」を組み立てていた部分もありました」
田中謙介は熱く、「艦これ」から哀しい歴史を、一瞬だけでもいいから共有したいと語ります。
深海棲艦のネガティブな要素など、「艦これ」が薄暗い史実をあえて避けずに交えていることは、田中プロデューサーの艦艇愛でした。
だからこそ、この本には執拗なまでに史実が載っている。徹底してます。
ヒラコーショック、提督からの意見が反映されたこと、課金に対する柔軟な姿勢、現在本気で悲鳴状態だということなど、赤裸々に語られています。
メディアミックスに関しては「角川グループによる壮大な総力艦隊戦をもしかするとお見せできるのではないでしょうか」とも語られています。
今回の小冊子は、いわばオフィシャル初の公式ガイド。
それがこのクオリティなら……どおりで売り切れるわけです。みんなの「これからの艦これ」の期待を背負った、一冊なんです。

ここまで大放出すると「出すものないんじゃないの!?」って思うんですが、11月号に付くのが人気艦娘赤城の甲板柄のストラップ。うまいなそれ!
元祖とも言えるアオシマのウォーターラインシリーズ(ホントの艦艇)のコラボや、各種フィギュアメーカーもすでに動き出しており、「艦これ」に関するグッズやメディアミックスは爆発的な展開を見せる、今はその点火寸前の状態です。
ある意味、この別冊付録が、フライング爆発した状態。あとは火薬庫が誘爆するのは目に見えてます。
だからこそ、その瞬間であるこの本、気合が入りまくっているんでしょうし、異例の増版も決まったんだと思います。

手に入れた人は是非じっくり読んでみてください。まだの人は、是非重版分を手に入れて読んでみてください。
艦これ好きでも、ちょっと興味あるけどまだやってない人でも、絶対楽しめますから。
にしてもコンプティーク連載のニンジャスレイヤーのマンガめちゃくちゃ面白いね。

(たまごまご)