最終回を迎えた『gdgd妖精s』の2期。
多彩なパロディや、随所に伏線を張るなど緻密な作りの、想像を超えた展開が最後まで続くCGアニメになりました。

菅原そうた監督に、冒険心あふれる15分アニメの裏側について、お話を伺いました。


●ネットだからこそできる、時代を飛び越えたネタ

───OP前の古いCMネタはすごかったですね、「ケ○ちゃんラーメン」とか「百人乗っても〜」とか……(笑)

菅原:「しょっぱなにインパクト欲しいね!」ということで、アバンでふざけた感を出しました(笑)

───かなり30代向けなネタが増えていますが、このあたりはどのようなチョイスで入れられているのでしょうか。

菅原:「ユーザーとの共通項ってなんだろう」とみんなで話し合ったんです。今は情報時代で、テレビでオススメされているものの話ばかりじゃ、なんだか全く選択してない気もします。テレビ離れしてインターネットの情報から、流行ばかり追い求めることも、情報に振り回されているような感じもします。流行に遅れたくないがために、全く「自分で選択してない」ような、どれだけ流行を言えるか知ってるか合戦みたいな……。
変な呪縛の風潮に病んでる人が多い気がしていて。

───昨日流行ったものが明日廃れる時代ですものね。

菅原:その点、動画配信サイトでは、今も過去も関係なく、時代や世代の時間軸自体並列に見て楽しめるので、昔の知っている番組やCMに普遍性がありそう!というところに行き着いて。視聴できる数々の動画をみながら、記憶に残っているテレビ番組やCMを、みんなで言い合ってみたところ「なつかしー」「知ってるー」みたいなワクワク感や、家族でテレビを観ていた、家庭の温かい感があったのがキッカケですかね。

───動画でも「これ○○だ!」という掛け合いで、知らない人が新しく知ったりして面白かったです。

菅原:20〜40代のスタッフが知ってれば何万人も知ってる人がいるのでは? 数年前でも数十年前でも、古いとか遅れてるとかのブレーキも外れて、いらない物差しとっぱらって純粋に『何でもアリ』が普遍的でパンチがあるという結果になる気がしたんです。


───「これ何年前だよ!」「子供の時見た」とかの会話はニヤニヤしますね。

菅原:キャストも、制作スタッフも、視聴して下さった方々も、同じ場所に居なかったとしても皆同じ人間ですので、友達同士や職場内でのうちわのノリだったとしても、実は普遍的な世界のノリと一緒なんじゃないかなと。誰かの趣味の話ネタでも、その現場で楽しいと思った事の後ろには、実は同じ趣味や感覚の人が何万人もいると思います。


●gdgdびっくり展開の、ホントのところ
───「コロちゃんを探せ」(CGの中にキャラがこっそり隠れているミニコーナー)は唐突で笑いましたが、なぜ入れたんですか?

菅原:アニメはテレビ画面で見るだけではなくなっていて、一時停止機能のあるDVDやBD、ネットの動画サイトでの視聴が増えているので、そういったところを意識したコンテンツもあったほうがイイなーと考えて、入れました。

───ニコニコではすごい盛り上がっていましたね。

菅原:最初に見つけられなくても、あとで見返して「わかんねーよ!」「いた!」「どこ?」みたいな。
みんなでワイワイやるのって動画を超えた楽しみ方のひとつだと思います。

───ファンのやり取りといえば、ニコニコで配信中、ネット上で盛り上がっていたネタがすぐに反映されていて驚きました。

菅原:年末あたりには、脚本は終えていたのですが制作に時間がかかってしまい、2月あたりからはリアルタイム制作となってしまいました。でもそれはそれで利点で、ハンドリングが効き、ニコニコ動画での反応を見て、次の回に、#0のシーツや、WADAなど、どんどんネタを拾って入れていく感じです。

───1期のネタも多く拾われてましたね。「ごますんだ」とか。


菅原:1期のネタとのバランスは、ぼくの意思でいれているわけではなくて、「ごますんだ」はイラストの為壮さんのアドリブで背景にいれこんだり、井上さんから出た歌詞だったり。音効の徳永くんも、効果音でいきなり「でんがなまんがな音」(『僕の妹は「大阪おかん」』の音)でつっこんだり、一緒にボケあってみんなわきあいあいボケあいの結果な感じです。

───制作側も全員アドリブのライブなんですね。

菅原:本当は脚本も声優さんの声収録もリアルタイムで毎回できれば、もっと反応できるのですが……。実は、#10(3月14日公開)のメンタイは2月末から追加で作り始めたもので、BD1巻特典(CD)収録の際に本編も演じていただいた、というイレギュラー収録もありました。


●謎の世界観と新妖精
───キャラが増えた上に、特に説明がなく謎の並行世界になっているのには驚きました。


菅原:制作スタッフで飲んでたときに、「群像劇」のような「こっちではこうなってて」「一方こっちでは違う話が」みたいなのって話が立体的で面白いよね。と意見が一致したことがきっかけですかね。

───こっちではこうなって、とは言っても、3人しかいませんね。

菅原:キャラが3人なので、1人ずつでストーリー進めるのは1人しゃべりでつまらないものになりそうでしたので、「タイムマシンのネタで1話2話3話とかに戻るのってどう?」ってお話したら、「じゃあその線で行こう」ということで、そこからどんどん肉がついて。

───伏線が仕込んであるという。

菅原:当初は、3話目にタイムマシンで、1,2話を回収する脚本で話を進めていましたが、よく見たら『最初の3話だけ濃すぎる!もっと撒こう!』という流れになって。
2話で予定していた回を4話に移動させて、普通の回(#2)アドリブ回(#3)を追加して、「霧女」や「アフレ湖中に扉を開けて出てくるシルシル」を加えて、タイムマシンの回と整合性をつけつつ、1話から5話の形になりました。

───タイムマシンのネタは1話製作前からあった企画なのでしょうか。

菅原:はい。みんなで相談して一番最初に決まったものです。ちょっとづつ繋がってストーリーを成していく連作というのを意識して取り組みたいと思っていました。初見の方々には、普通に楽しんでいただけるスタンスは絶対崩さず、隠し味として裏でネタを仕込んでおいて、後々に「ちょっとだけストーリーっぽくなってる」と気づくような、「ああ、キャラメルコーン食ってたらいつの間にかピーナッツも食ってたな」みたいなところを意識してつくっていきました。

───アレいつの間に?とついさかのぼって見てしまいます。

菅原:最終回へ向けて、温泉へ行ってる間に森のお家で新妖精をチョロっと登場させたり。その他にもイロイロと、放送中に映像を詰め込んでいます。

───新妖精はどのような発想からうまれたんですか?

菅原:2期になって「キャラを増やす手」も当然考えるわけで。でもその反面「3人そろってのハーモニー」「3人だからこその空気」は独特でめちゃくちゃ価値のある神聖なものだと制作陣も感じていて。「新キャラ投入」「キャラ総入れ替え」など、いろいろな案がありましたが、「3人のあんな超いい空気を変えてどうする!?」ということもあり。

───なるほど、単純にプラスしちゃうことに危惧があったんですね。

菅原:スタッフで連日相談した結果、やっと落ち着いた答えが「今の3人に別キャラ(新妖精)を演じてもらってプラスする」という線で、話がまとまりました。ただ「がっつり新3妖精が絡んで6人」ではなく、あくまでも「今までの3妖精は、柿の種のおかき」「新妖精は、柿の種のピーナッツ」。新妖精の登場回数は少なめに。キャラデザは、1期目の3キャラに被らない事を最優先に考え、それでいて、お互いまた個性が掛け合いで生きそうなキャラを心がけました。


●『gdgd』は「なぞなぞアニメ」
───2期は特に変則回が多いですよね。構成はどのように決められたのでしょうか。

菅原:1期は初めての事もあって、「毎回何がくるかわからないワクワク感」があったんですが、新鮮なものが大好きなぼくとしては、遊び心がない制作は、生き地獄で我慢ならないですし。

───生き地獄! ルーチンワーク的な回は確かにほとんどないですね。

菅原:1期の「毎回何がくるかわからないワクワク感」を、2期でも同じように感じてもらえるような構成はどんなものか、散々皆で相談しまくりました。1期の企画段階からあった背骨である3部構成は残して、「遊び心」もちゃんとある二期にしたいという方向性は、皆同じ気持ちだったので、「やりたい」と思ったことを挙げていって。本当のラジオの回(#0)、森のおうち以外の場所回(#6、#10)、全部のコーナーがアドリブ(#3)、キャラが入れ変わる回(#7)、ゲームっぽい回(#8)、ED映像を参加型にしたいなど。最終的にぼくと福原プロデューサーとの相談で、出来上がった脚本を並べていきました。例えば「全部アドリブ」の回を、OPが変わる#3のタイミングで入れたら「こっから毎回全部アドリブ回になっちゃうんじゃ??」みたいな想像もできますし。

───ものすごい計算されていますね。

菅原:でも、受け手が自由に解釈できる余地を残した、なぞなぞアニメです。何も言わずに見て「なんじゃこりゃ!」とつっこんで考えて解釈してほしいので、内緒にしたいのが本音です。説明するほど作品が野暮ったくなって、つまんなくなっちゃうところもありますしね。


●声優さん大活躍の巻

───新コーナー「素ピーカー」は完全にプレスコなんでしょうか。

菅原:完全にプレスコで声優さん任せのアドリブです。脚本一切なしの声優脳だけの萌えアニメパートを取り入れたかったので、収録現場には映像も用意してなくて、パソコンから効果音を出して、声優さんに何の音か想像していただきました。

───あの素の感じが楽しいです。一緒にいるみたいで。

菅原:声優さん同士で、お互いに想像をアドリブで膨らませ合って遊んでいるので、一緒に絵を想像しながら、音声だけ聴いてもらうのが一番楽しめる楽しみ方です。具体的な絵を出すことで、視聴下さっている方々の個人個人の無限の想像の膨らみが欠けてしまうので、「こういう絵ですよ」という明確な想像図自体、本当は出したくなかったのですが、「アニメ」という理由で、無理やり絵を用意しなくてはならなくて。

───アニメではなくなりますね(笑)落語みたいで面白いですが。

菅原:そういう意味で、BD特典の「素ピーカーロングバージョン」は、本当に楽しめるものとなるのではないかと思います。

───OPも毎回変わっていましたね。

菅原:OPについては、「毎回変化のあるOPだったらワクワクするなー」と思って、新OP曲の収録現場で、井上さんと水原さんに「一箇所だけ別の歌詞で録るのってどう?」って提案したところ「いいね!やろうやろう!」と共感していただけて、「Let’s Party」の部分を水原さんの思いつきパターンで演じていただきました。

───歌だけじゃないですよね。

菅原:映像に関しては、水原さんのアドリブセリフに合わせたグラフィックを、OP制作担当の中角くんの素晴らしい色センスにお任せして毎回制作していただいて、OPラスト「ワオ!」の部分で、その週の内容に合った予告っぽいキャラのキメ絵を、OPMMD制作担当のポンポコさんのアドリブセンスにお任せして毎回制作いただいて、毎週変化のあるOPになりました。

───ピク父(声優・三森すずこの父親)が出てきたのには驚きましたが、あれは……一体どうしてあんなことになったのでしょう。

菅原:アフレ湖は、他のアニメではみられないような「現場で起こったことがそのままアニメ化する」声優さん自身もどうなるかわからない、「予定調和ではない事件アニメ」です。その面白みを より掘り下げて、もっと加速させるには、もっと素の生の反応といいますか、普段脚本で演じている声優さんが本当に思いもよらない事件に遭遇して、全く演じずにびっくりドッキリした素の反応はライブ感があって面白みが増すという事で皆で相談し、実際に「ドッキリ」を仕掛けてみようということになりました。

───アニメで「ドッキリ」って、まずほとんどないですよね。

菅原:事務所の方々に協力いただいて、本当のドッキリを仕掛けたので、アニメ以外のバラエティー的な要素が多く、下準備が本当に大変でした。お父さんに演技していただいた実写映像を準備して、音声収録当日の現場でも、ギリギリまで声優さん3名には絶対に知られないよう、他のアフレ湖CG用の映像と交ぜて、いきなり三森さんのお父さん登場アフレ湖を声優さん見せて、反応を録るという。実際やってみて、スタッフ一同「やってよかった」と手応えを感じています。

───素でみなさん笑ってましたものね。

菅原:放送用に、三森さんのお父さんに演技していただいた実際の動きを、CGキャラでトレースする形でCG映像を作りましたが、たぶん本当の実写のままのアフレ湖ほうが、どシュールでオモロイと思います。

後編に続きます。

(たまごまご)