京都大学出身の宇治原史規(ロザン)は、受験勉強を1日11時間していたという。

理由は「京大に受かった先輩は10時間勉強していた。
だから10時間以上は勉強すべき」で、「しんどいと感じずに継続して勉強できる最長時間が11時間」だったから。京大を目指す学生にこれを言うとドン引きされてしまうが、ロザンの相方・菅広文は、新刊『身の丈にあった勉強法』(幻冬舎)で「宇治原は変」とハッキリ言う。

ね?変でしょ?
宇治原変でしょ?
出来ます?
1日だけではないですよ?
365日ですよ?
つまり「1日11時間勉強すること」が凄いのではなく、「365日なら1日11時間勉強ができると思えること」が凄いのです。
(P.18)

その上で『身の丈にあった勉強法』では、「自分が継続して勉強できる時間を把握することは誰でも出来る」「何分勉強するかよりも、何分休憩するかをちゃんと決める」と、誰でも取り組める方法に落とし込んでくれるのだ。

「高性能勉強ロボ・宇治原」の手法をわかりやすく伝える『身の丈にあった勉強法』は、一体どのようにして生まれたのか、ロザンのお二人に話を聞きました!
勉強も漫才も「エアー」で覚える。高学歴コンビ・ロザンに聞く『身の丈にあった勉強法』
ロザン(左:菅広文、右:宇治原史規)

アウトプットして覚える「エアー授業」


───菅さんはこれまで『京大芸人』や『京大少年』『京大少年式日本史』と、宇治原さんの勉強法を元にした本をいくつも出されていますが、今回の『身の丈にあった勉強法』はまた違った内容になっていますね。

 僕ら、講演会を良くやらせてもらっていて、学生さんだけじゃなくて、ありがたいことに社会人の方や主婦の方も来てくれるんです。そこで最後に質疑応答があったりするんですけど、結構同じような悩みを抱えている人が多いんですよね。
「どうやったら宿題しますかね?」とか「どういう習い事させたらいいんですかね」とか。それなら、ちょっと一冊にまとめて解決できるんじゃないかなと。

───親御さんも結構いらっしゃるんですね。

 そうなんですよ。すごい熱心な方もいて……。でも、勉強法って、賢い人が書いたものってたくさんあると思うんですけど、やっぱり普通の人からしたらちょっと読みにくいとか、わかりにくいところが多いんじゃないかなと。
僕はまあ「中」学歴なので、勉強がそんなに得意じゃない子の気持ちも分かるし、宇治原さんみたいな勉強が得意な人の気持ちもわかるんで、いわば、全員ができそうなことは何かないかって思って書いたのがこの本なんです。

───この本には宇治原さんの勉強法もたくさん出てきますけど、それを宇治原さん自身が書くという選択肢は……

宇治原 そうですね……書くってなったら、菅さんが書いたほうが面白いんで。僕は取材してもらえれば(笑)

───印象的な勉強法がたくさんありますが、例えば「エアー授業」であるとか、机にかじりついて勉強するというよりは、アウトプットする、人に話すっていうところが、大切なのかなと思いました。

(※エアー授業とは:自分が覚えたことを誰かに説明すると、記憶が曖昧な部分が説明できず、勉強不足なところを自覚できる。これを踏まえ、宇治原さんは高校時代、自分の部屋で架空の生徒を相手に一人で授業をしていたという。これが「エアー授業」である)

 大切だと思いますね。
ネタやってても、舞台に立った時をアウトプットと表現するなら、結局舞台立ったあとが一番ネタ覚えてるんです。ここウケたなとか、ここあんまりやったなっていう、いわば違う力が加わるんで。もちろんネタ合わせはしますけど、アウトプットしたほうが覚えやすいのかなっていうのは、実体験としてありますね。

───ネタを作るのは菅さんですよね。となると宇治原さんは「エアー漫才」で覚えることに……?

宇治原 それはもちろん、覚えるときはそうなりますね。それこそ家で、無意識に「なんでやねん」とか声に出してしまうんで、奥さんが「え、何が?」って言ったりとか(笑) そんなんは全然ありますけどね。


『アタック25』「ゼロ原さん」事件を振り返る


───宇治原さんはクイズ番組でもご活躍されていますが、『身の丈〜』では「クイズの勉強をしない」「新聞を読んだりするくらい」とあります。これは本当ですか……?

宇治原 そうですね。菅さんはえらい怒ってはるみたいですけどね。

───もっと勉強してクイズで優勝しろと(笑)

(※注:ロザンは「折半制度」のため、宇治原さんがクイズで優勝すると賞金の半分が菅さんに入ることになっている。本ではこれを「馬」と「馬主」に例えていた)

 僕はもう……金を稼いできてくれたら何でも。こっちは東京のコンビニでバイトしてきてくれても、何の問題もないんで!

宇治原 折半になるんであれば。

 たまたまクイズが向いてるから行ってるだけであって。


───クイズ番組と言えば、宇治原さんが『アタック25』に出場されたのも記憶に新しいですね。予選から挑戦されたものの、本戦ではパネルが1枚も取れず、客席で応援する菅さんから「ゼロ原さん」と呼ばれてしまうという……。

宇治原 珍しく馬主が観戦に来ていたというね。

 お金獲ってきてくれんと困るんですけどねー。

───菅さんは、「宇治原さんがクイズの答えをわかっている顔か、わかっていない顔かが見分けられる」と書いていたじゃないですか。アタック25のときは……

 確かにあのー、肌つや悪かったです。


宇治原 毛並みが(笑)

 毛並みが。

宇治原 調教不足だった(笑)
勉強も漫才も「エアー」で覚える。高学歴コンビ・ロザンに聞く『身の丈にあった勉強法』
菅広文『身の丈にあった勉強法』(幻冬舎)

宇治原さん、センター試験で失神する


───本で取り上げられている勉強法では、一般的に言われているものと違う、逆説的なものもあります。「予習と復習、どちらかを捨てるべき」とか「偏差値30アップの勉強法は、ほとんどの人には意味が無い」とか。常識を疑う、みたいな考え方は昔からあったのでしょうか?

 あー、そうなんですかねー。もともと斜めから見てたんかな、ずっと。

宇治原 それはあるかもしれへん。この業界、特にボケ側の人は結構多いかもしれへんね。もともとそういう性格、プラス、この仕事してまた積み重ねられていった、ってことだとは思うんですけど。

 そうですね、なんか「不思議感」で生きてるとこがあるかもしません。「なんで?え?まじで?どういうこと?」みたいな。「ほんまにみんなそれで納得してるのかな」とか。……この前、「マクドナルド総選挙」っていうのがあって。

───ありましたね。

 人気投票みたいなのやってて。たとえば照り焼きマックバーガーが一位になったら、照り焼きマックバーガーのお肉を二つにします!みたいな。でも、「一位のもの変えてどうすんの?」ってめっちゃ思うんですよ。「それがベストや」ってみんな言ってんのに、なんで肉やレタスを増やすのかと。いらんいらんいらん!俺それがええっていうてん!って

───むしろ肉やレタスを増やすべきなのは……

 順位が低いほうなんですよ。でも、みんなは別に「足したら得なんや」みたいな。びっくりしちゃって。どのバーガーだったかが「一位になったらビックマックになる」みたいになって、でもビックマックの順位めっちゃ低いんですよ(笑) どういうことやねんて。

───確かに……。宇治原さんもそういう視点はありますか?

宇治原 僕はそういうのとはちょっと違うんですけど、どっちかというと「ムダをなくしたい」という性格ではあります。最短距離でかつ、真っ当な道を歩みたいんですよね。勉強法でも、テクニック論で時間を短縮してテストを乗り切るということじゃなくて、正攻法でしかもムダをなくしたい。根拠なく、根性で頑張るのは好きじゃないですね。

───京大の受験勉強で「1日11時間勉強していた」というのは、頑張っているように見えますが……。

宇治原 いや、11時間勉強するというのにも理由がちゃんとあるんです。1日11時間で、1年間勉強できるなと思ったんでやりだしたんですよ。できる自信があったというか、それまでの人生経験でいけるなと思ったからやりだしたと。京大受験も、これやっていったら受かるなと思ったからやりだした。

───受かると思って始めたんですね……。

宇治原 3年の春の時点で、絶対無理やってなったら、菅さんに一回言ったと思うんですよね、多分これ無理やと思うって。それが、ならなかったというか。一応ちゃんと見えた。勘に頼って、当てずっぽうにやるのもあんまり好きじゃないので。

───勘に頼りたくない、というのは、本書にも出てきましたね。わからないところを勘で書きたくなくて、センター試験の数学で失神してしまうという……。

(※センター試験の数学の最中で、30点分の問題を残した段階でパニックになり、机の上で失神して運ばれてしまった宇治原さん。しかし、最後まで解いていた菅さんよりも点数が上だった)

宇治原 あー、失神直前の記憶はありますよ。人生でその一回だけですし……。目の前がふわーっと真っ白になる感じで、気がついたらベッドの上でしたね。

───菅さんが慰めてくれたそうですが、実際に点数は上だったと……。

宇治原 そうですね、でもそのときには「こいつ慰めてくれてるけど、絶対俺の方が上やのに」とは思わなかったです(笑)

 思ったらひどすぎるわ!(笑)

宇治原 そんときは普通に友達として「ありがとう。菅さんも受験やのに、申し訳ない、ありがたい」という気持ちでした。

 ま、でも僕はもう落ちる気満々でやってたから。落ちる自信があったんですよ!これは落ちるなと。

───宇治原さんが4月の段階で受かる自信があった一方で。

 僕はもう「これは落ちるわ!もう一年では絶対無理!」って、二年計画みたいなのが自分の中でありましたね。

後編に続きます

(井上マサキ)

ロザン(菅広文、宇治原史規)
1996年8月結成。よしもとクリエイティブ・エージェンシー所属。宇治原史規は京都大学、菅広文は大阪府立大学という高学歴コンビ。高校時代からの友人だった二人が、大学在学中に心斎橋筋二丁目劇場のオーディションに合格しデビュー。コンビ名は『聖闘士星矢』に出てくる必殺技「廬山昇龍覇」から。菅は『京大芸人』『京大少年』『京大芸人式日本史』『菅ちゃん英語で道案内しよッ!』と多くの著書を持つ。