映画虹色デイズが、7月6日(金)から公開される。なっちゃん(佐野玲於)、まっつん(中川大志)、つよぽん(高杉真宙)、恵ちゃん(横浜流星)という高校生男子4人の恋愛と友情を描いた群像青春映画だ。

「また少女漫画原作か~、興味ないな」と思う人にも、ぜひ見てほしい。なぜなら、監督を務めた飯塚健こそが、「うーん、少女漫画か……」派だったから。それでも、この作品は自分が撮る意味があると感じたという飯塚監督に、今作を撮ることになった経緯や見どころを聞いた。
「また少女漫画か」と思う人こそ観て。男子4人の青春恋愛映画「虹色デイズ」飯塚監督に聞く
映画『虹色デイズ』飯塚健監督

「壁ドン」は撮らない。男性監督が描く男子のキラキラ青春映画


───少女漫画原作の『虹色デイズ』を映画として撮るにあたって、飯塚監督が「自分が頼まれた意味を理解した」瞬間があったそうですね。

飯塚健監督(以下、飯塚) 石田聡子プロデューサーにお会いして「こんな作品を一緒にやりたいんだよね」と言われたとき、僕は「うーん、少女漫画か……」と難色を示したらしいです。それもかなりの。そこまで嫌そうだったか、自分では覚えてないんですけど。ひとまず読んでほしいということだったので原作を読ませていただいたら、男子たちが何かわちゃわちゃしている。これは僕が想像していた少女漫画とはまったく違うと思いました。

───「壁ドン」みたいなイメージで見てしまいがちですよね。

飯塚 壁ドンなんて「現実社会にそんな人間いるかよ!」と思っちゃうタイプなんで……。
でも、『虹色デイズ』は全然違った。これなら、僕が撮っても楽しめそうだし、面白いものが作れるなと思って、ありがたく引き受けさせていただきました。

───私からもイメージの話なのですが、男性が男子の青春ストーリーを描くと、童貞卒業とか女子を過度に性的に見るとか、性の話を入れたくなってしまう傾向があると思っていました。すべてがキラキラのまま男子の青春を描くって、実写作品ではなかなか見られないような。

飯塚 原作がある以上は、そこから逸脱したことはできないというのはありつつも……。コスプレカップルのつよぽんとゆきりん(堀田真由)は付き合いが長い。2人は、東京の大学に行く行かないという進路や、将来の深い話もできる関係。ということは、きっと肉体関係もないはずがない。と、真宙、堀田とも話していました。そういう関係性の認識はちゃんと持って演じてほしいと。
「また少女漫画か」と思う人こそ観て。男子4人の青春恋愛映画「虹色デイズ」飯塚監督に聞く
(c)2018「虹色デイズ」製作委員会 (c)水野美波/集英社

───映画の中では描かない部分について、俳優たちとは他にどんなお話をしましたか。

飯塚 さっきの話でいうと、なっちゃん、まっつん、つよぽん、恵ちゃんの4人組のなかで、なっちゃんだけは童貞だという話もしました。
だとしたら、4人の中では絶対にしている話題です。でも、カメラが回っている場面ではたまたま出てこないだけ。カメラが回っていないときにも、彼らの生活があり人生がある。そういう話を演者たちとしていたからこそ、キラキラした中にも「生っぽい部分」を残せていると思っています。。

ポスターだけを見たら、こんなイケメン揃いの高校ないだろって、僕だって思います。でも、描かない部分について演者たちと共有していることで「どこにでもいる高校生の話」という土台はしっかり作っています。だから、全然構えることなく「俺らの青春と変わらないじゃん」と思ってもらえたら嬉しい。

青春映画の撮り方「部屋に1人でいる描写はただの説明にしかならない」


「また少女漫画か」と思う人こそ観て。男子4人の青春恋愛映画「虹色デイズ」飯塚監督に聞く
原作『虹色デイズ』1巻(水野美波/集英社)

───15巻もある原作コミックスを2時間にまとめるというのは、撮るシーンの選択も重要だったと思います。

飯塚 そうですね。まず、彼らが部屋に1人でいるシーン、それから親が登場するシーンは削りました。

───部屋で1人で悩んで悶えたり誰かと電話したりするシーン、青春映画では割と見かけますよね。


飯塚 単純に、4人の部屋を四通り飾るお金があるなら、もっと映画を豊かにするシーンにお金を使いたかったんです。プールに飛び込むシーンとか、この映画の象徴的な場面に。部屋に1人でいる描写というものは、そこでする行動も限られるので、多くはただの説明にしかなり得ません。

親との関わりについては、描かなくても描いていると同じだけの印象を与えることができると思いました。たとえば、4人が進路と向き合うことなどで。高校三年生にもなると、「これからの人生、どうするんだい?」という進路や将来を考えることにウエイトが置かれるようになってくる。真剣に考えていれば、きっと親にせっつかれたり相談したりしているはずです。そんな彼らの姿を見せるだけで十分。余分なシーンは描かないようにしました。
「また少女漫画か」と思う人こそ観て。男子4人の青春恋愛映画「虹色デイズ」飯塚監督に聞く
(c)2018「虹色デイズ」製作委員会 (c)水野美波/集英社

───全体のストーリーも、男子4人にとって特に重要なシーンだけをピンポイントで切り取っていると感じました。

飯塚 そう思ってもらえるのは嬉しい。脚本を書いているときは、まだ7~8巻くらいしか出版されていなかったんです。
彼らが卒業するのかしないのかもわからない。僕らが勝手に結末を作ってしまうのは良くない。だから、彼らの人生が続くことに向かっていくことを、映画のゴールとして設定しました。夏祭りのシーンはやらなくてもいいかな、と話していたこともありました。

───そうなんですか? テレビCMにもシーンが使われているくらい、とても素敵なエピソードでしたけど……。

飯塚 やらなくてもいいかなという気持ちもあったんですけど、あれって誰しもの思い出の中に1個ある「思い」が出せるなあとも思って。夏のお祭りに好きな子を誘うって、その経験のあるなしに関わらず一大イベントだと思うんです。特に、地方の子たちにとっては。実際に誘ったとしても誘わなかったとしても、そのときの「思い」を呼び起こすことができるんじゃないかって。そう考えると、とても残したくなってきて採用しました。

後編につづく

(構成・文/むらたえりか)
「また少女漫画か」と思う人こそ観て。男子4人の青春恋愛映画「虹色デイズ」飯塚監督に聞く
(c)2018「虹色デイズ」製作委員会 (c)水野美波/集英社

飯塚健
1979年生まれ。群馬県出身。
映画監督、脚本家。
2003年、映画『Summer Nude』で監督デビュー。代表作は、『荒川アンダー ザ ブリッジ』シリーズ(ドラマ:11/MBS、映画:12)、「放課後グルーヴ」(13/TBS)、『風俗行ったら人生変わったwww』(13)、『大人ドロップ』、(14)、「REPLAY&DESTROY」(15/MBS)、「神奈川県厚木市 ランドリー茅ヶ崎」(16/MBS)、『ブルーハーツが聴こる』(17)、『笑う招き猫』シリーズ(ドラマ:17/MBS、映画:17)など。
また、ザ50回転ズ、真野恵里菜、OKAMOTO'S、ASIAN KUNG-FU GENERATIONなどのMV作品も多く手掛けている。
現在、映画『榎田貿易堂』が全国順次公開中。


▽公開情報▽
映画『虹色デイズ』
7月6日(金)全国ロードショー
監督・脚本:飯塚健
出演:佐野玲於(GENERATIONS from EXILE TRIBE)、中川大志、高杉真宙、横浜流星、吉川愛、恒松祐里、堀田真由、坂東希(E-girls/Flower)、山田裕貴、滝藤賢一、ほか
原作:水野美波『虹色デイズ』(集英社マーガレットコミックス刊)
脚本:根津理香、飯塚健
音楽:海田庄吾
エンディング・テーマ:「ワンダーラスト」降谷建志(ビクターエンタテインメント/MOB SQUAD)
挿入曲:フジファブリック、阿部真央、Leola、SUPER BEAVER
企画・配給:松竹
(c)2018「虹色デイズ」製作委員会 (c)水野美波/集英社
公式サイト:nijiiro-days.jp
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