IKKOさん「相手も興奮していたら性犯罪ではない」発言に批判殺到
フジテレビ系「バイキング」公式サイトより。

タレントのIKKOさんが、米俳優であるケヴィン・スペイシーさんの性的暴行事件のニュースを受けて、「相手も興奮していたら性犯罪ではない」と発言した。ネット上では、加害者擁護の意見だとしてIKKOさんを批判する声が続出している。


「男は反応するじゃないですか」


11月6日放送のフジテレビ系「バイキング」では、米俳優のアンソニー・ラップさんが、子役時代にケヴィン・スペイシーさんから性的な関係を持ちかけられたことを告発したニュースが取り上げた。

番組レギュラーを務めるIKKOさんは、「30年経って今言うことじゃないと思います」「気持ちは傷ついたかもしれないけど、なんでそのとき言えなかったんだろう。確かに言える人と言えない人がいるっていうのはあるかもしれないけど」とアンソニー・ラップさんによる告発のタイミングに違和感を覚えたと語る。また、「これは未遂で終わっている。未遂で終わっているからいいって話ではないけど、そのときの2人の関係っていうのはどうだったのかな」「そのときの状況は2人にしかわからない」と主張した。

さらに同性間でも性犯罪は成立するという話題が出ると、「内容によりますよ。未成年は置いておいて、成人した男性同士でレイプって言っても、どこからどこまでレイプかわからない。
男は反応するじゃないですか。刺激されて興奮して出ちゃったら、その人は興奮したんだから犯罪にはならないですよ。どっちかと言うとその人も悪いんですよ」と持論を展開した。

レイプ被害者を苦しめる「興奮したなら~」言説


IKKOさんは、「自分が『これは恋愛だ』と思っていたのに違ったっていうことも私たちの場合はある」とゲイの恋愛の難しさを説明しており、ケヴィン・スペイシーさん側にもそういった誤解があったのかもしれないと考えたのだろうか(それにしたって成人男性が未成年に、という問題はあるが……)。しかし、当事者以外が安易に判断すべきではないと指摘するにしても、「興奮したんだから犯罪にはならない」という発言は問題視されるべきものだろう。レイプ被害にあった女性に対して「興奮したならレイプではない」と言うことは完全なるセカンドレイプだが、レイプ被害にあった男性に対して同じ言葉をぶつけるのは問題ないということはない。性的快感とは単なる身体的な反応に過ぎないにも関わらず、「多少なりとも快感を得てしまった自分は、性的暴行を心底嫌がっていなかったのかもしれない」と心ない言葉によって苦しめられるレイプ被害者は多い。


また、性犯罪に限らずショッキングな体験は、心の中で整理するのに長い時間がかかってしまうことは珍しくない。そのことを踏まえると、「30年経って今言うことじゃない」という発言は、告発者の勇気を踏みにじるものと言える。こういったIKKOさんの発言に対して、ネット上では「セカンドレイプ」といった批判が続出している。


攻めているのか、無責任なだけなのか


番組内で弁護士が「長年経ったからこそ被害について語れるようになることもある」と説明したり、「犯罪にはならない」発言に対して「合意じゃない」という声が上がるなど、番組側はけっしてIKKOさんの主張を全肯定していたわけではない。しかし、明らかにセカンドレイプに当たる発言は、ひとつの意見の形として扱うのではなく、番組内でしっかり訂正されるべきものだったのではないだろうか。

「バイキング」は10月20日放送回でも、教育評論家による「小さいときに子供を怒鳴りつけると脳が委縮して発達障害につながる」という発言に批判が殺到した。
こちらもあくまで番組としては“こういった意見もある”というスタンスだったのかもしれないが、発達障害の原因は解明されていない部分も多く、専門家の間でも意見が分かれる。そんな中で上記の発言をメディア取り上げることは、ただでさえ理解が得られていない発達障害というものに対する偏見を助長したと言わざるをえない。

「バイキング」は、話題のニュースについて出演者たちが生討論するスタイルにリニューアルしてから視聴率を伸ばした。出演者たちが歯に衣着せぬ意見を交わし合うことで「お昼から攻めている」とも評される同番組だが、その発言による影響を考えないまま意見を垂れ流しにすることは、攻めているのではなく、単なる無責任と呼ばれても仕方ないのではないだろうか。

(HEW)