『かまいたちの夜』の思い出 第1作リメイク「輪廻彩声」はネットで賛否
『かまいたちの夜』(画像はPS版 出典:Amazon.co.jp

1994年11月にチュンソフト(現スパイク・チュンソフト)から発売されたスーパーファミコン用ソフト『かまいたちの夜』。名前くらいは聞いたことがあるという人も多いのではないだろうか。
1992年に発売された『弟切草』に続く、同社のサウンドノベルゲーム第2弾で、サウンドノベルを人気ジャンルへと成長させたのは同作がヒットした影響が大きい。
そんな同作を振り返りつつ、その後のシリーズ展開や第1作のリメイク版「輪廻彩声」についても解説する。


いくつものシナリオに分岐するシステム


『かまいたちの夜』は、ストーリーを読み進めていく途中に選択肢が表示され、選んだ選択肢によって展開が変化していくというシステムを採用。背景は実写で、登場人物はシルエットで表示される。
ミステリー作家の我孫子武丸氏が脚本を担当しており、謎解き要素もかなり歯ごたえがある。
真犯人が分からないままストーリーを進めると、最後には主人公が殺されてしまうなど後味の悪いエンディングを迎えてしまう。なかにはギャグシナリオへの分岐まであり、ただミステリー要素があるだけの作品ではないのも良かったのかもしれない。
真犯人がわからずにもどかしい思いをしたが、やっと突き止めた時に感動を覚えたのは筆者だけではないはずだ。

一定の条件をクリアすることで、新たなシナリオを遊ぶことができるピンクや金のしおりが出現するのも同シリーズの特徴だ。しかし、出現条件が分からずに何度プレイしても出すことができず、諦めてしまう人もいた。筆者もその1人なのだが、その悔しかった気持ちも含めて良い思い出となっている。


4作目まで続いた『かまいたちの夜』シリーズ


そんな本作は、その後何度もリメイクされ、続編も4作目まで出ている。

とは言え、1作目から直接のつながりを感じられるのは3まで。PlayStation 2で発売された『かまいたちの夜2 監獄島のわらべ唄』と『かまいたちの夜×3 三日月島事件の真相』は、1作目と同じキャラクターが多く登場するため1作目からのファンとしては懐かしく感じ、当時のことをいろいろと思い出しながらプレイしていた。
1作目と同様、どちらも一定の条件をクリアすることでピンク、金、黒のしおりが出現する。3では、黒のしおりを出現させると犯人視点で進むシナリオを遊ぶこともできる。

『かまいたちの夜』のファンとしては、この新たに出現するしおりという要素は必要不可欠にも感じられるくらい、重要なものだ。もちろん、なかなか出現させることができずにもどかしい思いをするところまでセットである。これがまた、ファンとしてはたまらない。1作目の頃と違い、インターネット上で攻略情報を公開している人も多く、しおりを出現させる方法がどうしても分からなければ、簡単に調べることが可能になった。


2は1、3と違って複数人でシナリオを担当し、我孫子氏はメインストーリーの担当ではなかった。そのためか、ミステリーというより伝奇ものといった雰囲気も強く、ファンからはさまざまな意見があったがストーリー自体はよくできていた。
3では1、2のメインストーリーを知っている方がより楽しめるようになっている。そういった理由もあるからか、3では1、2のメインストーリーも収録されている。

ちなみに、PS3とPS Vitaで発表された4作目『真かまいたちの夜 11人目の訪問者』では、オンライン対戦推理カードゲーム(現在はサービス終了)があったり、一部のサイドシナリオが課金を必要とするダウンロードコンテンツとして提供されていたりした。時代の流れだろうか。



第1作を大幅にリメイクしてネットで賛否


4作目が発売されたのは2011年12月。その後、続編は出ていないが、第1作を大幅にリメイクした『かまいたちの夜 輪廻彩声』が2017年2月にPS Vitaで発売されている(2018年2月にはWindows PC版も発売)。ところが、このリメイク版、かつてのファンからかなり厳しい意見も出ていたのだ。
『かまいたちの夜』の思い出 第1作リメイク「輪廻彩声」はネットで賛否
2017年に発売されたリメイク作『かまいたちの夜 輪廻彩声』 画像出典:Amazon.co.jp

旧作から最も大きく変更された点は2つ。グラフィックの変更とフルボイス化だ。
グラフィックは最近のライトノベルのファン層を意識したのか、登場人物をシルエットからイラストに変更。
キャラクターデザインに美少女ゲームの原画家を起用している。そのせいか、美少女ゲームをプレイしているかのような印象を感じるものに変わってしまった。フルボイス化したことも、この印象をより強くしているかもしれない。

さらに、追加シナリオを『ひぐらしのなく頃に』の竜騎士07氏が担当していることも、賛否両論の理由となっているようだ。竜騎士07氏は王道のミステリー作品というよりも、ファンタジーを前提した作風で、要素としてミステリーを取り入れているといった趣の作家だからだ。そのため、「作品のテイストと合わないと感じる人」と「これはこれで面白いと感じる人」のどちらも出てきたのだろう。


発売前からこのグラフィックについて、ネット上では旧作のファンから批判も交じった戸惑いの意見が多く見られた。これをうけて、イラストレーターがTwitterで謝罪するまでの騒ぎになってしまったのだ。しかし、イラストレーターに罪はなく、大幅なグラフィック変更を行うと決断した制作会社の責任だという声も多い。

いずれにしても、『かまいたちの夜』が名作であることには変わりはない。実際、Amazonのレビューでもグラフィックやフルボイス化にはさまざまな意見があるが、シナリオに関しては高評価をつけている人が多く見られた。発売から20年以上が経過しても、名作の良さは変わらなかったのである。
(文月)