「朝型勤務」のリアル。残業削減につながらない会社の悪習慣

残業をせず早めに切り上げ、普通より早く出勤して朝の業務時間を増やす「朝型勤務」。一見、効率が良いように見えるが、順調に実現できているのか。

そこで朝型勤務の導入を支援している会社の代表者に、朝方勤務のリアルなところを聞いてみた。

「朝型勤務」導入は実際、残業削減につながっているのか


今回話を聞いたのは働き方改革コンサルティングを行う、習慣化コンサルティング株式会社の代表取締役 古川武士さんだ。朝型勤務の導入を支援しているというが、実際のところ、その効果はどうなのだろうか。

「夜遅くまで長時間残業するような、だらだらとした仕事リズム、そして生産性の悪さは、働き方の『習慣』の結果です。ですから、社員の働き方の『習慣』を変える必要があります。朝型勤務スタイルがうまく定着すれば、間違いなく生産性は高まります。
しかし朝型勤務を実施している会社でも、形骸化している会社と、有効に残業削減につながっている会社があります。


形骸化している会社は、社員が深夜残業のリズムを変えられないパターンです。朝型勤務は、夜は断ち切って、朝、その分、早く会社に来て仕事を済ませることが原則ですが、上手くいかない会社は夜断ち切らせる制度が甘かったりします。退社時間の徹底、早帰りの徹底が不十分です。

一方、残業削減につながっている会社は、朝の仕事リズムを習慣付ける社員が増えていっています。特徴は、退社時間を死守させていること、そして何より半年から1年がかりで人事部が自らも実践し、全社運動として粘り強く実施しているケースが多いです」

朝型勤務を定着させるためには、社員総出でその悪習慣を改善する努力が必要であるようだ。確かに夜型になってしまったサイクルを朝型に戻す際には非常に苦労する。
それを会社全体でやるというのだから大変だ。やはりねばり強さが必要か。

朝型勤務のメリットとデメリット


朝型勤務は残業削減の他、どんなメリットがあるのか。また、デメリットも気になるところ。古川さんに挙げてもらった。

●メリット
1.朝、頭が冴えた中でクリエイティブな思考力、分析力、構成力などを要する“頭脳集約”的な仕事をすると、生産性は飛躍的に高まる

2.朝型にシフトすると、朝は絶対的に時間の制限があるので、限られた時間でどうやって終わらせるかという密度を高める発想が生まれる

3.夜ダラダラ残るムードが解消される。結果、全社員が帰りやすい

●デメリット
1.残業代をつけない制度にすると、ただサービス残業が増えるだけになることもある

2.朝早く来て、さらに夜も深夜残業になると、労働時間が増えるだけに終わることもある

3.夜、肝心な人がいないと他のメンバーの問い合わせが保留になり、仕事が進まないこともある

朝型勤務を成功させるために社員が意識するポイント


「朝型勤務」のリアル。残業削減につながらない会社の悪習慣

今後、朝型勤務が社内に導入された際、もしくはすでに導入されている場合、社員の立場としてはどのようなことを意識すればいいのか。


「まずは、退社時間を死守する、寝る時間を早くすることが一番はじめの改革です。
いつもの仕事をいつも通りやっていると、永久に朝型仕事にシフトすることはできません。
出社時間を朝型にしたら、夜は容赦なく決めた退社時間で切り上げましょう。この英断をしつつ、朝集中して頑張る“高密度化”の習慣リズムをつくってみてください」

そして忘れてはいけないのが、家族への影響。早朝出勤に付き合う家族がいる場合、配慮が必要だという。

「家族が朝型勤務に付き合う場合、早起きが必要になるのはもちろん、生活リズムを変えて朝型にするには、夜寝る時間を早める必要もあります。
そのためには、食事や風呂など、夜の習慣も連動しますので、家族の理解は必要です」

(石原亜香利)

取材協力
古川 武士さん
習慣化コンサルティング株式会社 代表取締役社長
関西大学卒業後、日立製作所などを経て2006年に独立。日本で唯一の「習慣化」をテーマにしたコンサルティング会社を設立。オリジナルの習慣化理論・技術を開発し、働き方改革コンサルティングを実施している。
http://www.syuukanka-btb.com