世界でも屈指の美容整形大国といわれる韓国。国際美容整形外科学会(ISAPS)が2011年に行った調査によれば、1,000人あたりの美容整形率は約5.2人となっている。

日本が約2.9人であることと比べると、韓国の美容整形率の高さがわかるだろう。

 また、美容整形を目的に韓国を訪れる外国人も増えている。韓国保健福祉部(日本の厚生労働省に相当)が「外国人患者誘致事業」を始めた2009年には2,851人だったが、16年には9万5,221人に増加。大幅に膨れ上がっている。

 特に、日本の旧盆に当たる秋夕(チュソク)には、連休中に回復が見込めるため、美容整形が急増する傾向にある。韓国では“秋夕整形族”なる言葉まで誕生しており、9月30日から10月9日まで、最大10日間の大型連休となった今年の秋夕には、美容整形外科の関係者が「どの病院も同じだと思うが、秋夕連休は手術で埋まっている状態」などとうれしい悲鳴を上げていた。


 ただし当地では、美容整形に関するトラブルも多発している。

 代表的なのは、整形の失敗だ。韓国では「連休後には、遅れて美容整形外科を訪ねる客が増える時期が来る。整形に失敗した人々だ」とも報じられているほどで、軽い気持ちで整形をしたところ満足いく結果を得られなかったという人々が多いそうだ。

 しかし、ただの失敗くらいなら、まだよい方かもしれない。韓国では整形に伴う医療事故も少なくないのである。


 例えば16年には韓国のネット掲示板で、美容整形の副作用で体重が27kgになったという女性の書き込みが話題を呼んだ。彼女はヤブ医者が運営する整形外科で頬骨の整形手術を受けた直後から顔面の激痛に見舞われ、痛みを和らげるために麻薬性鎮痛剤を服用したところ、その副作用で、何を食べてもすぐに吐いてしまうようになったのだという。

 13年7月には、最悪の事態も発生している。韓国で名の知れた「グランド整形外科」で手術を受けた女性患者が、手術中に死亡したのだ。全身麻酔をかけられていた患者に酸素が供給されなかったことが原因とされており、医師は患者がチアノーゼを呈し、心停止に陥っていることにも気づかず手術を続行していたらしい。

 外国人患者の被害も少なくない。
15年11月には、ソウル市江南(カンナム)区で鼻と顔の輪郭の整形手術を受けた日本人女性が、手術から4日後に遺体で発見された。警察によれば、死因は塞栓症か薬物中毒と推定されている。また、16年3月には、鼻の整形手術と脂肪移植手術を受けたタイ人女性が術中に呼吸停止に陥り、そのまま死亡する事故も起こった。

 こうしたトラブルが絶えないことには、非専門医による手術が横行していることが関係している。

 非専門医は専門医の数倍は存在すると推定されており、しかもその事実は韓国であまり知られていない。韓国整形外科医師会が先日発表したデータによれば、今年7月15~31日に整形外科を訪れた649人の中で、非専門医の数が専門医を上回ることを知っていたのは238人(約37%)にすぎなかった。


 同医師会は、ポータルサイト「整形コリア」を通じて、担当医師が専門医かどうかを判断できるシステムを提供しているが、そもそも非専門医の存在が知られていない状況では、その効果も期待できないだろう。

 さらには、“代理手術”の危険性もある。前出の「グランド整形外科」では、カウンセリングまでは専門医が行い、実際の執刀は安く雇える非専門医に任せていたとして物議を醸していた。

 安養整形外科・クァクアンドジー整形外科のアン・ソンジュン院長は、「ネット上には、不明瞭な料金や、信頼のおけない謳い文句が数多く見受けられるが、こうした情報に惑わされずに、病院の経歴や医師の経験を詳しくチェックしなければならない」と警鐘を鳴らしている。

 韓国で整形手術を受ける場合は、医師選びに細心の注意を払う必要がありそうだ。
(文=S-KOREA)