今回記事でご紹介するのは1992年に福武書店より出版された湯本香樹実の小説、『夏の庭 The Friends』のあらすじです。
タイトルの由来はセルジオ・アサドの組曲『夏の庭』。
日本児童文学者協会新人賞と児童文芸新人賞を受賞し、世界十数各国で翻訳されている、児童文学の名作です。
偏屈な老人と好奇心旺盛な小学生たちの、ひと夏の交流の結末を見届けてください。
※本稿は作品のネタバレを含みます。あらかじめご了承ください。
『夏の庭 The Friends』のあらすじ
主人公は好奇心旺盛な小学6年生の「僕」こと木山(ぼく)。
6月某日、同級生・山下から聞かされた祖母の葬式の話がきっかけで死に興味を持ち、人が死ぬところを見たいと思うようになります。
僕の相談に乗った友人の河辺は、町内で孤立している偏屈な独居老人を観察し、死ぬ瞬間に立ち会ってみないかと提案しました。
僕と山下は河辺に賛同し、老人が住んでいる家に通い、学校や塾や習い事の合間を縫って張り込みを行いました。
しかし老人はなかなか死なず、敷地内をうろちょろする悪ガキども見かけるたびカミナリを落としてくる為、大いに調子を狂わされます。
夏休み突入後もむきになって観察を続けた結果、すっかり顔を覚えられ、気安く庭に出入りし、言葉を交わす関係に変化していました。
体の自由が利かない老人のゴミ出しや家事を手伝い、荒れた庭を耕してコスモスを植え、開花を心待ちにする三人。
8月某日、三人が住む街を大型台風が襲いました。
庭のコスモスがなぎ倒されないか案じ、今にも吹き飛びそうな家に集った三人に、老人は数十年間胸に秘め続けた罪を告白します。
南方戦線に出征した老人は、ジャングル進軍中に遭遇した現地の妊婦を、断腸の思いで手にかけていたのです。
復員後も自らの過ちを忘れられず、妻と連絡を絶って生きてきた老人の孤独な年月を想い、三人は打ちのめされます。
前妻のフルネーム「古香弥生(ここう やよい)」と電話帳の住所目録を照らし合わせた三人は、彼女が余生を過ごす老人ホームへ向かいました。
しかしようやく会えた弥生に「夫は死んだ」と言われてしまい、苦肉の策として顔が似ている種屋の老婆を代役に立てることに。
当日、弥生になりすました種屋の老婆は即座に別人と看破されます。
替え玉作戦は失敗してしまったものの、老人と老婆は同郷の北海道の話で盛り上がり、楽しげな笑顔を見せていました。
夏休み終盤にさしかかる頃、サッカー合宿から戻った足で老人宅に向かった三人は、そこで衝撃的な光景を目にし……。