ミネラルや食物繊維をたっぷり含み、低カロリーで、しかも、解熱、便秘、糖尿、高血圧、貧血、アトピーなど、様々な症状に対する効果が期待されている「まこもだけ」。
近年、健康食品として、じわじわと注目されてきているそうで、「名前だけなら聞いたことがある」という人もけっこういるのではないだろうか。


とはいえ、どんなものか知っている人、食べたことがある人は少ないかもしれない。
自分なども名前の響きから、キノコの一種だと思い込んでいたクチだが、実際には田んぼに栽培され、2メートル近くにもなるイネ科の大型の多年草である。

このほど、三重県の菰野(こもの)町でたまたま出合ったのが、「まこもだけの天ぷら」だったのだが、食感的には、タケノコにもちょっと似て、また、エリンギのようでもあり、余計に「キノコ?」と思ってしまった。

地元のとある業者によると、このまこもだけ、もともと古くから各地に自生していたもので、今は健康食品としての期待から、近年、栽培している地も増えているらしい。
菰野町でも、かつてはあたり一面に自生していたそうで、実は菰野町の地名もそこからきているという話だった。

でも、だったら「まこも町」になるのでは? と聞くと、こんな興味深い話があった。

「実は、最初は、コレを菰野の名産として『こものだけ』という名前で売っていたんです。ところが、もともと菰野町には、『こものだけ』という同じ名前のキノコがあり、どちらが本当の『こものだけ』かということで、トラブルに発展してしまった。そこで、キノコじゃないほうを普及しようとした際に『まこもだけ』という名前に変えたんですよ」
「菰野」でなく「まこも」の「ま」は、もしかして「真(真実の)」+「こものだけ」という意味だったりして……と気になるが、こうした事情はあまり自治体などでも公表されておらず、地元でも知られていないという。

さて、名前の由来などはさておき、実際に、道の駅で購入して、アレコレ調理して食べてみた。
薄切りにして、きんぴらにすると、ウドのきんぴらに似た食感ながら、ウドよりもクセがなく、シャキシャキと美味しい。
また、薄切りをサッとあぶって、生醤油とゆず果汁をかけると、さっぱり飽きのこない味わいだった。

ごま油と醤油、酢、砂糖の漬け汁に漬けて、中華風に。
また、キノコやトマト、ナス、ひき肉と一緒にカレーにしたら、なぜかハヤシライスのようなコクがあり、シャッキリ歯ごたえが良いアクセントになっていた。
炊き込みご飯にしても、肉を巻いて焼いてみても美味そうだ。

ありがたいことに、私が買った「まこもだけ」は30センチ前後で1本100円。安くてたっぷり食べられて、クセがないだけに、いろんな料理に使えるし……。早く全国に普及してほしいものです。

(田幸和歌子)