人間関係において、「距離感」を正確に把握することはとても重要。この目測を誤って不用意な発言をすると、怒りを買ってしまう場合もあります。

8年前のエレファントカシマシ・宮本浩次とラジオDJ・鈴木万由香のやり取りは、まさに「距離感」を見誤ったコミュニケーションの典型と言えるでしょう。

「食べにくい」発言が発端だった


2009年4月18日。鈴木がパーソナリティをつとめるTOKYO FMの生放送番組『TOYOTA SOUND IN MY LIFE』に、宮本がゲスト出演した時のことです。当時リリースされたばかりだったエレカシのアルバム『昇れる太陽』について、鈴木がこんなコメントをしました。

「今回のアルバムはメインディッシュばかりのフルコースで、食べにくいと感じた」

一応最後は「でも、実際飲み込んでみると『こんなに美味しいもんないや』っていう…」と結んでいたものの、「食べにくい」という一言が宮本の癇に障ったようで、「人の前で『食べにくい』っていましたよ、この人。失礼なやつだ、こいつは」と、笑いながらもムッとしていました。

鈴木の失言にブチ切れたエレカシ宮本


この時点で、鈴木が「誤解を生むような表現をして、すいませんでした」とすぐに謝っていれば、挽回することも十分可能だったはず。
しかし鈴木は、続けざまに「食うな」と言い放った宮本に対して、「食いましたもう」と切り替えし、さらに「ゲロで吐け」の一言には、「それはちょっともったいないので」と反応したのです。


この発言であからさまに不機嫌になった宮本は、無表情で静止。それを見かねた鈴木が「宮本さん? 今遠くに行ってました?」と呼びかけると、宮本は「遠くっていうか。まあ、悪気がねぇのはわかってるよ……」と、ギリギリのところで感情をセーブします。

しかし、この直後に放たれた鈴木の不用意な一言により、状況は一変します。

「ケンカ売られてます?今?」

ここでついに、宮本の怒りが爆発。「ケンカじゃねぇだろ。
おめぇが売ってんだこのバカ。気をつけろドアホ」とすごんで見せたのです。これにはさすがの鈴木も「いえいえ…売ってないです…」と一転弱気に。
そこから辛うじて、彼女が番組を進行していくも、スタジオには重苦しいムードが漂い続けました。

後にそれぞれが謝罪した


この「公開生喧嘩騒動」は、当然のことながら大きな反響を呼びましたが、20日には宮本が、21日には鈴木がそれぞれ謝罪文をWEB上に掲載。騒動は一応の終焉を迎えました。


ラジオという公衆の面前で、怒りをぶちまけた宮本にも非はありますが、ベテランDJである鈴木に繊細さが欠けていたのも事実です。

特に、本人を目の前にしてアルバムを論評するのであれば、細心の注意を払うべきだったといえるでしょう。
(こじへい)

※文中の画像はamazonよりロッキング・オン・ジャパン 2016年 01 月号 [雑誌]