【その他の画像】ウルフルズ
これは八代が昨年10月にリリースした寺岡呼人プロデュースによる初のブルースアルバム『哀歌-aiuta-』を引っさげたツアーで、「aiuta」から「AIUTA」へと成長した同アルバムの世界をより深く表現するもの。
駆けつけた800人の観客で埋め尽くされた会場に、まずはバンドメンバーが拍手で迎え入れられると、梅津がサックスの音色を響かせブルージーな夜が幕を開ける。ブルーのドレス姿で登場した八代は、プレイヤーの鳴らすそれぞれの楽器に肩を揺らしながら、スタンダード・ナンバー「St.Louis Blues」を歌い上げる。「皆さん、こんばんは。『哀歌-aiuta-』ツアーです。」と挨拶すると、ブルースの王様として知られるB. B. Kingのお墓を訪ねたことを報告。そして「八代も80、90歳になって天国へ行ったら、そういう歌手になっていたいなと思います。」と語り、「The Thrill Is Gone」を届けた。
次いで「昭和のスタンダードを2曲続けていきます。」とまずは「フランチェスカの鐘」で会場にクラップを沸き起こすと、「別れのブルース」ではほの暗いステージで切なく表現し、昭和のナンバーに“ブルース"を溶け込ませていく。そして“友達のうた"と称して藤圭子「夢は夜ひらく」を軽快なリズムアレンジでカバーすると、自身がキャバレーで十八番としていた曲として「あなたのブルース」をしっとりと披露。続く最新アルバムより横山剣提供のオリジナル曲「ネオンテトラ」では、その世界観について「昭和の匂いがする」と語り、旦那を亡くして働く女性の悲しみを代弁するような熱唱で魅了した。
あっという間に“ブルース"の世界観に飲み込まれた会場で、唐突に「ねぇねぇ、関東って水不足なの?」と切り出した彼女。勘の良い観客による笑い声が聞こえる中、「大変じゃない?…だからこれも歌おうか?」と“あの"代表曲を匂わせ、ここで会場に大きな拍手が沸き起こる。そして「水は命の源だから、水瓶に溜まりますようにという想いで歌おうかな。」と述べると「雨の慕情」のブルースアレンジが響き渡る。
前半を終えて八代の衣装替えの間は、ツアーのために結成されたバンドメンバーがつないでいく。
ライブも終盤に差し掛かると『哀歌-aiuta-』からオリジナル曲で畳み掛ける。
本編の最後を飾ったのは、ロバート・ジョンソン「Sweet Home Chicago」のカバーで、八代の発案により故郷・熊本への愛情を歌った「Sweet Home Kumamoto」。八代は熊本地震について、同郷の伊東ミキオを「伊東さん、熊本でしょ?お家どうですか?」と案ずると、伊東は「ヒビ入りましたけど、でも元気にやっていますので、大丈夫です。」と答える。そして昨年10月に発表した『哀歌-aiuta-』にいみじくも収録された同曲が、熊本県の応援ソングになったことを報告し、6月18日、19日と熊本地震後に初めて被災地を慰問した様子について「(同曲を聴いた)みんなが『カモン!カモン!』と言ってくれました。正直すごくね、歌どころではないとか、そういうのあるのかなと心配して行ったんです。だけどもみんな『亜紀ちゃん、おかえり。』って泣いて喜んでくれました。
迎えたアンコールでは「アンコールありがとう!」と何度も感謝を伝え、会場の隅々までお礼の言葉を添えると、「おーい!」とバンドメンバーを呼び込みメンバー紹介へ。さらに自身の近況について、7月16日より公開されるディズニー映画『ファインディング・ドリー』のエンドソングとして、ナット・キング・コール「アンフォゲッタブル」の日本版歌唱者に決定したことを報告し拍手を浴びた。その後アンコール1曲目は「日本のスタンダード・ナンバーを。聞けばわかるわよ。」と演奏をスタート。耳馴染みのあるメロディに聞き入る観客たちも、英詞から最後に日本語で歌った「積水ハウス」には笑顔を見せた。「積水ハウスの歌」CMソングについて「素敵よね。この歌がテレビで流れてくると歌手仲間の間でも『お、八代亜紀だ』ってすぐ分かるんだって。」と嬉しさをにじませると、「だからドリーも“誰が聞いても分かる歌手の人"ということで八代亜紀さんって決まったんだって。」と明かした。
「さて。」と切り出した八代は延期となった熊本公演について「必ず行きます。必ず行きますから。」と繰り返し、改めて故郷への想いを伝えると「私は今日はね、義援金を募りたいの。被災した人たちに“忘れてないよ"って届けたいの。心ばかり、よろしくお願いします。」と延べ、大ヒット曲「もう一度逢いたい」を披露。笑顔を振りまきながらステージ上を左右に歩くと、1コーラスごとに観客からは拍手が贈られ、とびきり明るいステージを展開した。そして「もう一曲やる?」とチャーミングに問いかけた後、この日を締めくくったのは「舟唄」。ブルージーなアレンジで彩られた新しい「舟唄」のサウンドに身を任せながら、八代は客席に何度も深く頭を下げ、最後の“アンコ"の息をのむパフォーマンスで会場は鳴り止まない拍手で包まれた。
終演後、会場出口にそのまま歩みを進めた八代が熊本地震の義援金を募ると、会場にはぐるりと長蛇の列ができる。ファンひとりひとりと丁寧に握手を交わす八代は、「ありがとう。ありがとう。」と感謝の言葉を繰り返していた。
Photo by 三浦憲治
■【セットリスト】
(Introduction)
M1. St.Louis Blues
M2. The Thrill Is Gone
M3. フランチェスカの鐘
M4. 別れのブルース
M5. 夢は夜ひらく
M6. あなたのブルース
M7. ネオンテトラ
M8. 雨の慕情
M9. MU-JO
(Instrumental)
M10. Bensonhurst Blues
M11. The House of the Rising sun
M12. 命のブルース
M13. Give You What You Want
M14. Sweet Home Kumamoto
(Encore)
M15. 積水ハウスの歌
M16. もう一度逢いたい
M17. 舟唄