新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大が続くイタリアでは今月21日、死者数が一日で793人増加し4825人を記録した。これは一日の死者数としては最悪で、1時間で約33人、2分に1人が死亡したことになる。
22日には新たに651人が死亡、累計死者数は5476人と報告されており、感染者数は6万人に迫る勢いだ。

新型コロナウイルスの感染者数が5万人超となったイタリアでは、医療関連施設やスーパーなど生活に必要な施設以外の活動や通勤を禁止し、市民の外出を制限するロックダウン(封鎖)の徹底を図っているが、依然として感染が収束する兆しは見えていない。

北部ロンバルディア州での感染者数は21日で2万5千人超、死者数は3千人以上を記録しており、政府は感染拡大を防ぐため、外出制限措置を守らない市民を監視するための兵士114人の配置を決定した。

異常な事態が続いているロンバルディア州では、まず棺が足りない。さらに地元施設だけでは全ての火葬ができないため、遺体は棺や白い布に包まれた状態のまま遺体安置所や教会に並べて置かれている。また急増する遺体を置く場所も限られているため、現在は軍のトラックが遺体を別の地域に運び出しているそうだ。



病院のスタッフも不足しており、一度退職した医師や看護師が呼び戻されている。ロンバルディア州クレモナの病院の最前線で働くロマーノ・パオルッチ医師もその一人で、現状について次のように語っている。

「病院の収容能力を超える患者が運ばれてきており、スタッフの感染も増えている。私が最も心を痛めているのは、高齢者が家族に別れを告げることなく、たった一人で亡くなっていくことだ。彼らは携帯電話を使いこなせない。ただなるべく患者が家族と話ができるように、我々も努力はしている。」

またロンバルディア州ミラノで働く看護師ダニエラ・コンファロニエリさんは、「スタッフの2割が感染して自宅で隔離されている。
精神的ストレスが酷く、州内の感染を抑えることができない状態に陥っている。感染率は非常に高く、私たちは死者の数を数えることさえ止めてしまった」と明かしている。

こういった状況を受けて政府は今後、北部に300人のボランティア医師を送り込むとしており、今年医学部を卒業予定の学生は期末試験を受けないまま補助要員として北部の病院へと駆り出されることになるようだ。またエボラ出血熱の治療で知られるキューバからは21日、医師や看護師50名以上が現地に向けて出発、スタッフの人員不足の解消に向けて様々な対策が進められている。

感染し入院を強いられているというダニエラ・デ・ロサさん(43)は、イタリアでの感染拡大が止まらないことについて「ここに来る前は健康だった。でも今は人工呼吸器で命を繋いでいる。
多くの人が外出制限を無視し、他の人を危険に晒している」と語っている。封鎖の指示が出てもジョギングや自転車での外出、友人とのパーティなどを行う人が後を絶たず、本人が気づかないところで感染力の高いウイルスが拡散した可能性が高い。

イタリア国立衛生研究所は、イタリア国内の死者の86%が70歳以上で、10%が60~69歳であることを明かしており、高血圧、心臓疾患、糖尿病などの持病を抱えていた人が大半であるという。専門家はイタリアが長寿国の1つであること、家族間のつながりが非常に強く、高齢になっても親類らと同居していることが多いことも感染拡大の原因であると指摘している。またおしゃべり好きで、気軽にキスやハグで迎えてくれるイタリアの国民性も関係しているのでは―といった声もあがっている。

新型コロナウイルスの感染拡大はイタリアだけの問題ではない。
一人一人が危機感を共有し、一刻も早く事態が収束されることを願うばかりだ。

画像は『Sky News 2020年3月22日付「Coronavirus: Lockdown tightens in parts of Italy hardest hit by COVID-19」「Coronavirus: Italy’s hardest-hit city wants you to see how COVID-19 is affecting its hospitals」、2020年3月21日付「Coronavirus: ‘Everyone dies alone’: Heartbreak at Italian hospital on brink of collapse」』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 A.C.)