神楽坂、逆転式一方通行の角栄関与説を追った
(上)午前中は東へ向かう神楽坂の車(下)スキゾフレニックな標識
タクシーで飯田橋付近を走っていたときのこと。神楽坂に入ってもらおうと思ったら、「ああ、今の時間はダメなんだ。
ここは変則的な一方通行だからね」。

運転手さんの話によれば、神楽坂では午前0時から正午までは坂を下る東方向に、正午から午前0時までは坂を上がる西方向にしか走れない、変則的一方通行になるのだそうだ。「へ?」と目を丸くしていたら、彼はうれしそうにさらに続ける。

「この先に田中角栄邸があってね。田中角栄が自宅から国会議事堂への行き来が楽なように、こういう一方通行にしたっていうウワサなんだ」
ええーっ? なんだかありそうでなさそうな話である。

この一方通行とそれにまつわるウワサ話、その筋ではけっこう有名らしく、人によっては「国会議事堂」が「愛人宅」になってたりとバリエーションも豊富。はたして、真偽やいかに!? 近くの牛込警察署の交通規制係りの方に聞いてみた。
そもそもなんでこんな一方通行ができたんですか?

「神楽坂の歩道を広げた際、車道が狭くなり相互通行がむずかしくなってしまった。それで地元の方たちとも協議して、こういう形になったと聞いています。まあ、いろいろウワサはあるみたいですけどね(笑)」

なるほどー。しかし「豪快政治家エピソード」って感じの角栄説も捨てがたい。というか、1年後には聞いた話を忘れて、「ねえねえ知ってる? 神楽坂って田中角栄がさぁ」って言ってる気がする。
「ウワサ」って、事実より魅力のあるエピソードが記憶に残って広まっていくものだしねえ……とそんな結論でごめんなさい、お巡りさん。

ちなみにこの神楽坂、こんなイレギュラーな一方通行だけど、大きな事故などはまったくないらしい。お巡りさんいわく、「ウワサのおかげで、みなさんよくご存知のようです」とのことでした。(矢部智子/アンテナ)
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